アメリカでの選挙結果を予測するウェブサイト「270toWin」での世論調査を見ると、11月の米大統領選はかなり拮抗している。現職のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領はほぼ横並びのようだ。トランプ氏は1.7ポイントのリードを保っているが、この数字は誤差の範囲だ。
しかし、ベッティング(賭け)プラットフォームのポリマーケット(Polymarket)のベッター(賭けをする人)は違う考えを持っており、トランプ氏がリードしている。
暗号資産(仮想通貨)ベースのプラットフォーム、ポリマーケットでは、1億ドル(150億円、1ドル150円換算)近くが大統領選に賭けられており、その市場規模はきわめて大きい。ビットワイズ・インベストメンツ(Bitwise Investments)のリサーチャーが計算したすべての暗号資産(仮想通貨)ベースの予測市場の2021年のピーク時のほぼ2倍となっている。
群衆の知恵(少なくとも、ポリマーケットの群衆)は、トランプ氏に52%、バイデン氏に37%の勝算を与えている。
この数字を足しても「100」にはならないことに注目してほしい。それは、ばかばかしいかもしれないが、勝つチャンスがあると群衆が考えている公式の候補者と想像上の候補者が存在するからだ。
ミシェル・オバマ氏(オバマ元大統領の妻)、ギャビン・ニューサム氏(カリフォルニア州知事)、カマラ・ハリス氏(副大統領)……。この3人の著名な民主党員は、いずれも大統領選への出馬を表明していない。
バイデン氏は民主党の公式候補だ。しかし、一部のトレーダーの間では、バイデン氏が直前で出馬を取りやめるかもしれないとの見方が依然として残っている。
楽しみながら利益を得る
予測市場は、一見軽薄な質問をしているにもかかわらず、金銭的なインセンティブをもとにした参加者が、専門家の意見を代替し、間違いの多い従来の世論調査よりも正確な予測を提供する可能性がある。
また、賭けをヘッジする方法にもなる。新作映画の週末の興行成績を予想するコントラクトは、映画会社株のデリバティブを作る方法となり、レディット(Reddit)のIPOの取引初日の評価額に対する賭けは、価格発見の一形態と言える。エンロンは全盛期、天候デリバティブで同様のアイデアを試みたがあまり楽しいものではなかった。
予測市場は、何年も学問の世界の話題としては片隅に追いやられていたが、2024年についに開花するようだ。ビットワイズ・インベストメンツのリサーチャーは、2024年には「暗号資産の新たな『キラーアプリ』として台頭する予測市場に、1億ドル以上が投じられる」と予測していた。今年まだ3カ月目にして、この数字はもう更新されなければならない。
予測市場は通常、一定期間内の検証可能な結果(裁判の判決からグラミー賞受賞者、有名人の不祥事まで、何でもあり)についてのイエスかノーかの質問を行う。
最近の予測市場は、ある暗号資産が史上最高値を更新するかどうか、あるいは特定の期日までにエアドロップを行うかどうかなど、暗号資産に関連する予測が注目を集めている。そのため、投資家にとっては、ここには投資のヒントが存在するかもしれない。
イーサリアム vs ソラナ
2022年冬、FTX崩壊の影響を受けて、ソラナ(SOL)は大幅な下落に見舞われた。FTX周辺で注目されていたソラナは、2021年11月の史上最高値258ドルから大きく急落した。
その前、2021年の「DeFiの夏」はソラナを史上最高値まで押し上げていた。当記事執筆時点、ソラナは200ドルを試していることから、2024年の「ミームコインの3月」がソラナを再び押し上げているようだ。
ポリマーケットのベッターに投げかけられた質問は、ソラナとイーサリアム(ETH)のどちらが先に史上最高値を更新するか? だ。
ソラナ(Solana)ブロックチェーンは当時、非常にコスト高なイーサリアムブロックチェーンに代わるものとして開発され、多くの人がこのプロジェクトに興奮した。しかし、最近のデンクン(Dencun)など、イーサリアムのこの2年半のアップグレードにより、コストの差は縮まった。
今年、アメリカでビットコインETFがデビューした後、多くの人がイーサETFを次の当然のステップと見なし、市場はこの可能性を織り込み始めた。
しかし、イーサリアムがアメリカの規制当局から見て証券にあたるかどうかについては疑問が残り、価格の重しとなっている。シンガポールのQCPキャピタル(QCP Capital)は価格調整を警告しており、イーサリアムは4000ドルを突破できていない。
しかし、ポリマーケット上では、トレーダーはイーサリアムは2024年に史上最高値を更新するとの自信を示している。ただ、ソラナより先ではない。
イーサリアムの今年の高値はどうなるのか? アメリカの規制を受けた予測プラットフォームKalshiで新たに開始された予測によると、今年4500ドル以上に上昇する確率は74%、5000ドルの確率は57%、6000ドルに達する確率は42%となっている。
エヌビディア vs アップル
10年前、エヌビディア(Nvidia)は中堅の半導体メーカーで、グラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)を製造し、ゲーマーは毎年より優れたグラフィックを楽しみ、視覚効果の専門家はより速くレンダリングし、CADのユーザーはよりスムーズな体験を楽しんでいた。
10年という歳月は何という違いを生むのだろう。
今や同社のGPUはAI(人工知能)革命の中心であり、その価値は数兆ドルに達している。多くの市場アナリストは、同社がマイクロソフトやアップルのようなテック大手を凌駕するライバル企業として位置づけられるかどうかを考えている。
ポリマーケットでは、それがいつ起こるかをベッターに問うている。
現在、予測市場はエヌビディアが4月30日までに世界で2番目に価値のある企業としてアップルを抜く可能性を33%としている。
アナリストらは、エヌビディアの目覚ましい成長と記録的な時価総額の急上昇にもかかわらず、同社がアップルの覇権に挑戦する能力は不確かなままだと述べている。なぜなら、潜在的な市場の飽和と競争に直面しても、きわめて高い株価収益率を維持し、前例のない収益成長を続ける必要があるからだ。
ポリマーケットの投資家はアナリストらの意見に同意しているようだが、変わるかもしれない。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ドナルド・トランプ元米大統領(White House)
|原文:Nearly $100M Wagered on U.S. Presidential Election on Polymarket