三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と野村ホールディングスは、ブロックチェーン上でデジタル化された証券の発行や管理などを手がける米セキュリタイズ(Securitize)に出資する。今後、日本国内における有価証券のデジタル化と、新たな流通基盤の開発に勢いが増しそうだ。
サンフランシスコを拠点に置くセキュリタイズは2019年9月24日(現地時間)、三菱UFJイノベーション・パートナーズ(MUIP)と野村HD、スペインのサンタンデール銀行が運営するベンチャーキャピタルを含む投資家グループから1400万ドル(約15億円)の資金を調達すると発表した。今回の調達は、セキュリタイズがシリーズAとして実施したラウンドの追加拡張。
MUIPの鈴木伸武社長は同日の発表文で、「デジタル証券は金融サービス業界において、分散型台帳技術を用いた代表的なユースケースになりつつある。セキュリタイズへの出資を通じて、MUIPは戦略的な関係を築きながら、連携を強化していきたい」と述べた。
投資拡大するMUFGと野村
MUFGは、米アカマイ(Akamai Technologies)と共同でブロックチェーンを基盤とする高速決済ネットワークの開発を進める一方で、MUIPを通じて仮想通貨の不正検出やマネーロンダリングの調査を行う米チェイナリシス(Chainalysis)などへの出資を行うなど、同領域における投資を拡大している。
野村HDも、ブロックチェーンに対する取り組みを強化しながら、暗号資産領域における投資を加速している。野村は2018年から暗号資産のハードウォレット業界を牽引するフランスのLedgerと共同で、デジタル資産の管理(カストディ)サービスの研究開発を進めている。また、今年6月、野村総合研究所と共同で、ブロックチェーンを使った有価証券の権利を交換できるプラットフォームの開発を始めると発表した。
セキュリタイズが開発した「DSプロトコル」は、流通市場などを管理するが、この分野において多く利用されているという。発表文によると、現在までに11のデジタル証券が発行されており、さらに複数の証券の発行を準備している。
KDDI、三井不動産も参画
今回の調達ラウンドには、KDDIのコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)、KDDI Open Innovation Fundと、三井不動産が運営する31VENTURESも参加した。
セキュリタイズは2018年11月、シリーズAラウンドで約1300万ドル(約14億円)の資金をコインベース・ベンチャーズ(Coinbase Ventures)やリップル・ベンチャーズ(Ripple Ventures)、ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)、グローバルブレイン(Global Brain)などから調達している。
セキュリタイズ創業者兼CEOのカルロス・ドミンゴ氏は、10月2日から都内で2日間にわたって開かれるイベントに出席し、証券型トークン(セキュリティトークン)を用いた新たな資金調達手段として注目を集めるSTO(セキュリティトークンオファリング)などについての議論に参加する予定だ。
文:佐藤茂
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