レイヤー2ブロックチェーンでのトランザクション(取引)をより安価にするために大きな変更を行ったデンクン(Dencun)アップグレードが成功したばかりだが、イーサリアム開発者らは次のアップグレード計画を進めている。
次のアップグレードと並行して準備
次のアップグレード「ペクトラ(Pectra)」の内容はまだ確定にはほど遠いが、開発者らは以前、このアップグレードの目的はブロックチェーンの次のアップグレードに取り組むのと並行してリリースすることだと述べていた。
イーサリアム財団(Ethereum Foundation)のプロトコルサポート責任者ティム・ベイコ(Tim Beiko)氏は、プロトコルポッドキャストのインタビューでCoinDeskに対し、「ペクトラのアイデアは、より大きなもののプロトタイプを作成している間に、比較的早く獲得できる小さな勝利をたくさん見つけようとすることだ」と語った。
ステーキングとウォレットのUX
11日に開催されたイーサリアム全コア開発者電話会議(主要開発者による隔週会議)の出席者らは、ペクトラにイーサリアム改善提案(EIP)3074、つまりイーサリアムウォレットのユーザーエクスペリエンス(UX)を改善するための一連のコード変更提案が含まれる可能性が高いことを示唆した。具体的には、この提案により、ユーザーはトランザクション(取引)をバッチ処理し、一度にすべて署名できるようになる。
ペクトラで行われる可能性のあるもう1つの主な変更は、バリデーターのステーキング制限が32ETHから64倍となる2048ETHに引き上げられることだ。EIP7251として知られるこの提案により、暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)やリド(Lido)のような大規模なステーキングプロバイダーは、イーサリアムブロックチェーンを運用する自身のバリデーターを統合できるようになる。さらに、32ETHをステーキングするたびに新しいバリデーターを作成し続けることを回避できるようになる。
Dune Analyticsによると、現在100万を超えるバリデーターがイーサリアムネットワークを運用しているため、過度の遅延に対する懸念が生じている。開発者らは、新しいバリデーターがシステムに参入するスピードを遅くする方法を模索してきた。システムが行き詰まってしまう可能性があるためだ。EIP2751は、大規模なステーカーの運用負荷を軽減し、ブロックチェーン上のバリデーターの数を統合し、ステーキングプロバイダーがステーキングとバリデート(検証)に費やすリソースを削減できるようにする方法として提案されている。
ペクトラは2つのアップグレードを指す
「ペクトラ」という名称は、ブロックチェーンの異なるレイヤーで同時に行われる2つのアップグレードの合成語だ。プロトコルのルールが適用される実行レイヤーでは「プラハ(Prague)」アップグレードが、ブロックが検証されていることを確保するコンセンサスレイヤーでは「エレクトラ(Electra)」アップグレードが行われる。
イーサリアム開発者らは、アップグレードの名称を組み合わせることで有名だ。前回は、デネブ(Deneb)とカンクン(Cancun)の同時アップグレードが「デンクン」と呼ばれていた(その前は「シャペラ」)。命名規則は、実行レイヤーについてはイーサリアム開発者向けの最大級のカンファレンス「デブコン(Devcon)」が開催された都市名が使われる。一方コンセンサスレイヤーでは、アルファベット順で星の名前が使われている。
ペクトラは2024年末か2025年初頭
検討される他のEIPには、スマートコントラクトからのバリデーターの出金のトリガー、BLSプリコンパイルとして知られるコード変更の追加、入金ウィンドウの削除などが含まれる。これらは、開発者らが取り組む上で比較的小さな変更だ。
ペクトラに続くアップグレードには、イーサリアムブロックチェーンのノードが大量のデータを保存できるように設計された新しいタイプのデータシステムである、待望の「バークルツリー」が含まれる。
ベイコ氏は、開発者らは2024年末か、もしかすると2025年初頭にペクトラをリリースすることを目指していると表明。「比較的小さなアップグレードになる予定だ。その理由は、2つのフォークに並行して取り組むことができるからだ。我々はバークルツリーとその移行に取り組んでいる」とし、「我々はそれに取り組んでいるが、1年以上かかるだろう。そのため、それまでの間に他の小さな成果に取り組むための余力がある」と述べた。
|翻訳・編集:林理南
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|原文:Ethereum’s Next Upgrade, ‘Pectra,’ Could Include Relief for Institutional Stakers, Wallet UX Improvements