主にリテールサイドの暗号資産(仮想通貨)オプション市場は、2021年7月から2022年6月までは指数関数的な勢いが続いたが、その後、実現ボラティリティが顕著になった時期にTVLと絶対リターンは減少した。
システマティックなショートボラティリティ戦略を採用してきたオプションと仕組商品から見ると、個人投資家のコンセンサスは良いとは言い難い。
オプションや仕組商品は当然ながら複雑で、少なくともアクティブに近い運用を必要とする。コンベクシティ(価格低下へのクッション)への需要が高まり、0DTE(ゼロデイ取引)オプションがリテール投資家の意識の中で再び台頭する一方、機関投資家向けプロバイダーは、リテール投資家以外の投資家層が参加するために必要なインフラ整備を静かに進めてきた。
この種の仕組商品は、投資家に暗号資産のペイオフの幅広さを与えると同時に、カスタマイズの度合いの問題も解決する。
問題点
ここでの問題点、そして他の多くの暗号資産プロダクトの開発における問題点は、常に市場のミクロ構造だった。暗号資産は草の根的なイデオロギー実験として始まり、確実性のない資産を取引したいという非常にニッチなグループから賛同を得た。
その結果、それを提供するために設計された市場のミクロ構造は利己的で、リーダーは不在、当然ながら規制されていなかった。断片化された流動性、中央集権化された価格設定メカニズムに関するコンセンサスの欠如、取引プラットフォーム間の需給格差など、現在、暗号資産に存在するインフラ問題のいくつかは、暗号資産が完全なリテール市場から移行し始めるにつれて、今まさに対処可能になりつつあるレガシーな課題と言える。
現状
オンチェーンの仕組商品に大きな注目が集まっているが、同様にエキサイティングなチャンスは、伝統的な投資家に暗号資産のペイオフを提供することにある。
暗号資産がポートフォリオアロケーションにおいてますます重要な意味を持つようになるにつれ、過去に見たよりもはるかに重要な戦略的アロケーションが登場し始めるだろう。
これを可能にするのは、ETF、ETP、その他の非上場債券など、機関投資家グレードの商品とそれを届けるルートの幅広さと質の高さだ。
バランスの取れたポートフォリオにビットコイン(BTC)を追加することで、グロスベース、シャープレシオとソルティーノレシオの両方が改善されるという見解を裏付けるデータが既に検証されている。コインシェアーズ(Coinshares)の以下の表を参照。
さらに暗号資産ベースの商品も、バランスの取れたポートフォリオにポジティブに貢献できる。我々ARPデジタル(ARP Digital)の仕組商品プロバイダーとしての役割は、適切な暗号資産においてボラティリティ商品を活用し、幅広いポートフォリオを最適化することにある。
ボラティリティ商品
暗号資産のボラティリティは、市場参加者の二極化、大きなレバレッジへのアクセス、市場のミクロ構造などの影響を受け、ダイナミックかつ急速に変化する。
過去の普及実績の欠如は、暗号資産ディーラーには十分な需要がないこと、銀行には対しては規制が明確ではなく、取り組むインセンティブがないことの結果だった。
そのため、Amberdataによる以下のグラフに示された過去のボラティリティプロファイルは、機関投資家向けのインフラと参加の欠如がもたらした結果を如実に物語っている。
従来の暗号資産仕組商品の提供ルートは、暗号資産参加者と従来の仲介業者間の統合に依存しているため、資本効率から担保管理に至るまで、重大な妥協をもたらすハードルが存在し、投資家の需要をさらに遠ざけてきた。
結論
ビットコインETFが大成功を収め、投資可能かつ心理的なレベルからこの資産クラスの価値が広く認識されるにつれ、商品開発に対する需要もそれに追随するようになるだろう。他の資産クラスの軌跡をモデル化すれば、暗号資産仕組商品セクターは指数関数的な成長を遂げるはずだ。
ARPデジタルでは、利回り商品とボラティリティ商品に対する需要は常に存在すると確信している。暗号資産では、第一世代の利回り商品は、無担保でさまざまな市場参加者に融資し、時には無意識のうちに利回りを提供していた。
2022年の不安定化をもたらした複数の出来事の後、投資家は利回りの源泉とそのために取るリスクの定量化について深く考え始めている。「うまい話」など存在しない。仕組商品は、市場の結果に基づいて決定論的かつ数学的に検証可能な利回りを提供する。それは幸いにも、より平穏な夜をもたらしてくれる。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Rise of Crypto Options and Structured Products