米サークルが新機能、ブラックロックのトークン化ファンドとUSDCが交換可能に──TradFiにステーブルコインが事実上進出か

米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」の発行元である米サークル(Circle)は、ブラックロック(BlackRock)のトークン化ファンド「BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund(BUIDL)」とUSDコインを交換できる新しいスマートコントラクト機能を発表した。

この機能を使えば、24時間365日いつでも、ほぼ即時にBUIDLをUSDCに交換できるという。同社は、ステーブルコインの中核的メリットであるスピード、透明性、効率性をBUIDL保有者に提供すると声明に記している。

サークルの共同創業者兼CEO、ジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は「RWA(現実資産)のトークン化は、急速に台頭している製品カテゴリー。だが、資産のトークン化は、投資家が抱える課題を解決する重要な側面の1つに過ぎない。USDCは、投資家がトークン化された資産から迅速に移動し、コストを下げ、手間を取り除くことを可能にする。我々は、BUIDL投資家にこの機能を提供し、USDCの有用性を介してブロックチェーン取引の中核的メリットを提供できることに興奮している」と述べている。

ビットコインETFに並ぶインパクト?

ブラックロックは3月20日、今、注目が高まっている「RWA(現実資産)のトークン化」への参入を発表した。セキュリタイズ(Securitize)が提供するトークン化基盤を使い、イーサリアムブロックチェーン上で米ドル、米国債、レポ取引などのRWAをトークン化する。

ブラックロックのこの領域への参入は、同社がビットコインETFを米証券取引委員会(SEC)に申請し、アメリカでのビットコインETFを実現させたことに匹敵するかもしれない。

同社のBUILDは、ブロックチェーン技術を使ったRWAトークン化の流れをより一層加速するものであり、金融におけるブロックチェーンの可能性を改めて知らしめるものだ。同時に、TradFi(伝統的金融)と暗号資産をより近づけるものでもある。

さらにもう1点、見逃せないポイントがある。BUIDLとUSDコインの交換が実現することは、ブラックロックというTradFi(伝統的金融)が手がける金融商品やその取引にステーブルコインが使えることを意味する。

今回のサークルの新機能にブラックロックがどの程度、関与しているかはわからない。あくまでもBUIDL保有者が、BUIDLを二次市場でUSDコインに交換できるようになるという話だが、ステーブルコインの法整備に苦戦しているアメリカの状況に、一石を投じる動きになるかもしれない。

|文:増田隆幸
|画像:ジェレミー・アレールCEO(多田圭佑)