起業家の間で、数え切れないほどの記事やインタビュー、講演が行われているにもかかわらず、決して古びることのない話題がある。資金調達だ。
過去数年間にわたって、さまざまなプロジェクトで合わせて4000万ドル(約62億円、1ドル155円換算)から5000万ドルを調達してきた者として、またベンチャーキャピタルでの長年の経験を持つ者として、この記事に何らかの価値を見出していただければ幸いだ。
最近、ハイブリッドなオプティミスティック/ゼロ知識(zk)ロールアップと分散型シーケンサーを使用したイーサリアムレイヤー2「Morph」の2000万ドルのシードラウンドを発表した後、私は数え切れないほどの起業家から「どうやって調達したのか?」と聞かれた。
そこで、よりスケーラブルな方法で資金調達そのものについて私が理解している、いくつかの重要な点をまとめることに意味があると考えた。以下は、あなたがどのような市場で活動しているかに関わらず、資金調達を行う際に理解しておくと役立つであろう共通のテーマだ。
まず学ぶべきは、ベンチャーキャピタリストが何をするのかということだ。それは実は、とてもシンプルなことだ。ベンチャーキャピタル(VC)は、リミテッド・パートナー(LP)から得た資金を投資し、大きなリターンを得ようとする。LPとは、投資という形でVCに資本を提供する個人または法人を指す。
言い換えれば、VCの仕事は、与えられた資金をLPのために、より多くの資金に変えることだ。VCとはつまり、より高いリターンを求めてポートフォリオのリスクの高い部分に資金を割り当てようとする、極めて裕福な個人や組織の仲介人に過ぎない。
ストーリーの重要性
VCは、裕福な人々や組織のためのマネーブローカーだということが分かったところで、同じような結果を得るためには、ストーリーを作り始める必要がある。ストーリーを共有することで、あなたはVCとテーブルの反対側で向き合うところから、VCと協力してともに成果を生み出そうとすることに向かうことができる。
あなたが作ろうとしているものの何がそれほど有望なのか? 確かに、VCはあなたが提案しているものが技術的に確かなアイデアである理由を聞きたがるだろうが、ほとんどの場合、VCは技術者ではない。多くの人は、伝統的な金融業界、銀行、コンサルティング関連の仕事の出身者だ。
言い換えれば、VCは、同じようなことができると言っている他の企業がひしめく中で、なぜあなたの会社が成功できるのか、説得力のあるストーリーを聞きたがっている。
あなたのGTM(市場進出)に関するアイデアは、本当に具体的なものでなければならない。なぜなら、VCはそこについて厳しく質問してくるからだ。
ストーリーテリングが重要だ。スティーブ・ジョブズ氏はかつて、世界で最もパワフルな人はストーリーテラーだと言った。彼は正しかった。だからストーリーを語ろう。もし、先ほどの点についてうまく語れないのなら、資金調達の準備ができていない可能性が高いので、スタート地点に戻る必要がある。
もしあなたが明確に説明できる立場にあるのなら、簡単なピッチデック(プレゼン資料)をまとめる時だ。実際のところ、大半のVCはピッチデックを読むことにせいぜい数分しかかけない。ほとんどの場合、まったく目を通さないほどだ。というのも、彼らは売り込みの際に、あなたが説明することを期待しているからだ。だから、簡潔にまとめる必要がある。
ピッチデック全体で10~15枚以内にすること。その数ページで、あなたのアイデア、なぜ作るのか、市場規模、誰がお金を払うのか、なぜあなたの会社がそれをすべきチームなのかを紹介する必要がある。繰り返しになるが、これを簡潔にまとめられなければ、資金調達の準備はまだできていない。
資金調達ができる状態になったら、どのVCファンドがあなたのようなアイデアに投資するファンドなのかを理解する必要がある。ファンドによって専門分野が異なる。よく調べよう。消費者向けプロダクトに投資しているファンドに行って、AIのスタートアップを売り込もうとするような人にはならないでほしい。
誰かの紹介(warm introduction)
次は、具体的にどうやってVCの前でピッチする機会を得るかだ。言うは易く、行うは難しだが、それでも何とかなるだろう。結局のところ、スタートアップと話をするのはVCの仕事だが、それでも信頼できるネットワークと人間の交流がどのように機能するかを考える必要がある。正当性は最も希少な資源なので、正当性を生み出す方法を見つけよう。
ここで考慮すべき最初の原則は、誰かの紹介(warm introduction)は、VCに真剣に捉えてもらうためのほぼ唯一の方法であることを理解することだ。あなたがすでに市場で優れた業績を上げている製品を抱えている立場でない限り、あなたが目指すべきは誰かに紹介してもらえる方法を見つけることだ。
リサーチした人たちにあなたのアイデアを伝え、紹介してもらえないか頼んでみよう。結局のところ、VCへの最良の紹介者は、他のVCか、彼らがすでに投資している会社の創業者たちだ。
このプロセスにおける最後の興味深い注意点は、上記のステップを正しくこなしていれば、ほとんどのVCに真っ向から拒絶されることはないだろうということだ。
よく言われるのは、今はパスするが、数カ月後にどんな進展があったか聞いてみたいということだ。それは、VCは常にチャンスへのアクセスを維持しようと、人間関係のゲームを行っているからだ。明日は、あなたの会社が話題になるかもしれない。
資金調達には時間がかかること、フォローアップが最も重要であることを理解しておこう。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:engin akyurt/Unsplash
|原文:How to Get Funded in Crypto