イーサリアム・リステーキングのパイオニアであるEigenLayer(アイゲンレイヤー)のユーザー(その多くは、新しいEIGENトークンの大規模なエアドロップで恩恵を得る見通し)は、お金の力で意思表示を行った。
Eigen Labs(アイゲン・ラボ)の複雑過ぎるホワイトペーパーと比較的限定的な報酬に反発して、ユーザーはプラットフォームから約4億5700万ドル(約722億円、1ドル158円換算)相当の約15万イーサリアム(ETH)を引き出した。
エアドロップ計画への反発
先日、ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)から1億ドルを調達したEigen Labsは、リステーキングというコンセプト(イーサリアムにステーキングされた資金を再利用し、他のブロックチェーンのセキュリティを確保すること)の先駆けとなった。プラットフォームには160億ドル近くがロックされており、ここ数年の暗号資産(仮想通貨)における最大のイノベーションと呼ばれている。
4月29日のEigen Foundation(アイゲン財団)の発表によると、16億7000万のEIGENトークンの15%がコミュニティのために確保され、複数のシーズンにわたって分配される。
「ポイント」を集めた初期ユーザーには、1ポイント1トークン換算で、コミュニティ向けに確保されたトークンがエアドロップされる。長い間、待ち望んでいたユーザーにとっては、高額な報酬だ。
しかし、この計画に多くの人が不満を抱いている。特に懸念されるのは、トークンが当初は譲渡不可能で、実質的に報酬が無価値になることだ。さらに、トークンの30%はEigen Labsの投資家に、25%は 「早期貢献者」に割り当てられる。投資家と早期貢献者もトークンをすぐには売却できないが、権利確定スケジュールはトークンを受け取った時点からスタートするため、トークンが譲渡可能になった時点で、多くのトークンが売却されるのではないかとの懸念が高まっている。
「EigenLayerチームと投資家は55%を得るが、ステーカーは5%しか得られず、それさえも最初は譲渡できない」と暗号資産トレーダーのCoinMamba氏はXで述べた。
暗号資産に特化したメディアのThe Blockが報じたように、トークン配布計画は、2月に物議を醸したStarknet(スタークネット)のエアドロップに類似している。Starknetの計画はコミュニティからの批判を受けて変更された。
Starknetのトークンは、取引可能になる1年前に作成されたため、投資家は権利確定スケジュールを先取りでき、取引開始後わずか数週間で売却することができた。
対象外となる一部ユーザーたち
もうひとつ問題になっている点は、多くのEigenlayerユーザーがエアドロップから除外されることだ。米国、カナダ、中国、(およびロシア)の居住者はトークンを受け取れず、VPN(仮想ネットワークを経由することでプライバシーを保護する通信手段)を介したユーザーも締め出される。
これらの国のユーザーは、報酬の対象からは除外されるものの、プラットフォームとのやり取りは禁止されていないため、これが一部の人たちの怒りを買った。
「これらの国からのステーキングを受け入れたのに、報酬を与えないことは正しくない。大きなリスクを取ったのに、何も見返りを得られない」と暗号資産リサーチャーのAylo氏はXで述べた。
Eigenlayer側は、数カ月間トークンを譲渡不可にすることで、プラットフォームは分散化し、トークンの使用方法を検討することができると述べた。
「EIGENが譲渡可能かつフォーク可能になる前に、今後数カ月で一定の目標を達成する必要がある」とEigenlayerは述べた。
コミュニティからの反発には妥当な部分もあるが、米証券取引委員会(SEC)のエアドロップに関するガイダンスが不明瞭であることを考えると、米国ユーザーを締め出す計画を批判することは難しい。
Variant Fund(ヴァリアント・ファンド)のジェイク・チェルビンスキー(Jake Chervinsky)弁護士がXで指摘したように、SECは暗号資産トークン登録のための「実行可能な経路を提供することを断固として拒否」しており、Eigenlayerを潜在的な法的危機に陥れている。
「譲渡不可にすることとユーザーの地理的な区別は、トークンの配布に関する規制リスクを管理するうえで有用な選択肢だ。ただ、それは唯一の選択肢ではなく、またすべてのチームやトークンにとって必ずしも正しい選択肢でもない」とチェルビンスキー氏は付け加えた。
資産を譲渡不可能にすることで、資産が証券であるかどうかを判断する重要な要素である「合理的な利益の期待」が制限される。
保守的アプローチ
さらに、Eigenlayerは米国ユーザーをブロックしたり、トークン報酬プログラムから除外したりする最初のプロジェクトではないし、最後のプロジェクトにもならないだろう。
この方針は、そうでなければ実質的に無料のお金、あるいはいくつかのボタンをクリックするだけで得られるお金を手渡されるユーザーに不利益を与えるものだが、現状に対しては合理的な対応と言える。
「これらの選択肢はいずれも、トークン配布に関する規制リスクの分布への対応においては保守的な方だ。私がここでリスクの分布という言い方をしているのは、規制が明確でない以上、どのチームも(顧問弁護士の助言を得ながら)どの程度のリスクを取るべきかを決定しなければならないからだ」とチェルビンスキー氏は指摘した。
金融イノベーションの最先端にあると言われるプロジェクトが、保守的なアプローチを取らざるを得ないことは、興味深いことだ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Eigenlayer創設者セレーラム・カナン(Sreeram Kannan)氏(Danny Nelson/CoinDesk)
|原文:Why Eigenlayer’s Airdrop Is Controversial