消費者行動が「共感型」になりつつある現在、“価値のプラットフォーム”といえるブロックチェーンが登場したことで、今後ビジネスモデルはどのように変わるのか──。電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサーの鈴木淳一氏とブロックチェーン研究開発企業のシビラ(SIVIRA)最高経営責任者、藤井隆嗣氏が10月3日、都内で開かれたブロックチェーン・カンファレンス「b.tokyo」に共同で登壇。「ブロックチェーンで起きるビジネスモデルの変化」と題してディスカッションした。
鈴木氏「若者は自分と同じ価値観のインフルエンサーに従う傾向」
鈴木氏は、近年の若者の消費行動の変化を分析。「自分と同じ価値観を持つインフルエンサーに従う」傾向があると指摘し、「今後は企業も信頼される必要がある」と指摘した。企業にとっては、「信頼されるためにどうすればいいか」という観点でブロックチェーンを用いることで、消費者と長期的な関係性を築き、それを可視化できるなどと述べた。
藤井氏によるDAOの3分類とは
一方、藤井氏は自律的なコミュニティとしてのDAO(Distributed Autonomous Organization、自律分散型組織)を3つ──「エンタープライズDAO」「コンシューマーDAO」「ガバメントDAO」──に分類した。
藤井氏によれば、「エンタープライズDAO」の例として観光地が挙げられるという。個別の旅館それぞれの価値は決して大きいとは限らないが、地域一体となることで大きな価値を提供することができるというのだ。
また「コンシューマーDAO」は、ファンがファンを呼ぶ行為が見られるファンコミュニティを例に説明。最後の「ガバメントDAO」とは、エストニアのような電子(仮想)国民を指すといい、過疎化する地域に対して使える可能性を示唆した。
電通グループも実装段階へ
鈴木氏はまた電通グループのブロックチェーンへの取り組みを紹介、4年前から実証実験を続けていると述べた。実績として、エシカルな(倫理的な)消費を明確化することで、購買行動の変化を計測できたという。そこでは、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献によりトークンが支払われる仕組みも試したことにも触れた。
今後は実証実験にとどまらず、ファンコミュニティの形成にブロックチェーンを用いたり、ゲーム実況をN次流通させた時の収益分配を例にして、新たなマネタイズモデルの構築したりといった、実装段階に移ると報告した。
暗号資産・ブロックチェーンをテーマにしたカンファレンス「b.tokyo」(N.Avenue主催)で、電通グループはゴールドスポンサー。同領域をリードする大手企業やスタートアップ、規制当局が集まり、10月2・3日にかけて業界を網羅した議論やネットワーキングが行われた。
文・写真:小西雄志
編集:濱田 優