「クリエーターの年」The Sandboxのコンテンツ責任者、ゲームとメタバースの融合を語る──共同創業者が6日、京都で登壇【JBW Summit at IVS Crypto】

少なくとも2021年以降は「メタバース」という言葉をたどれば、暗号資産(仮想通貨)の軌跡をたどることができる。かつては話題と盛り上がりにあふれ、「次なる大物」になる可能性に満ちていた。フェイスブックでさえその名前を「メタ」に変えたほどだ。その後、暗号資産市場は急落し、興奮が冷めるにつれて、「暗号資産の冬」の間には輝きを失った。

しかし、もっとよく見てほしい。弱気相場の間、Web3業界の多くが「開発を続けた」ことは、今では決まり文句となっている。だが、真実味のある決まり文句だ。そして、人々はメタバースでも開発を続けた。

「盛り上がっている」とブロックチェーンを基盤としたゲームプラットフォーム、ザ・サンドボックス(The Sandbox)の最高コンテンツ責任者(CCO)ニコラ・セバスティアーニ(Nicola Sebastiani)氏は言う。28万人のユーザーが活発にゲームや体験を創造しており、彼は今年を「クリエイターの年」と呼んでいる。

サンドボックスの大きな焦点はユーザー生成コンテンツであり、もうひとつは優良IPとの提携だ。サンドボックスは現在、人気テレビシリーズ「ウォーキング・デッド」、キャラクターのケアベア、ラッパーのスヌープ・ドッグ、そして音楽オーディション番組「The Voice」との派手な新契約まで、幅広い500近くのパートナーシップを結んでいる。

セバスティアーニ氏は、ユーザーがサンドボックスに期待できること、メタバースの未来についての予測、そしてハイプサイクルの浮き沈みを気にしていない理由について語った。それは彼いわく、「我々は信じて取り組んでおり、それが信念だから」だ。

「クリエーターの年」

──サンドボックスで何が起きているのか、最新情報を教えて欲しい。ユーザー数は? そこでは何をしているのか?

現在の環境は素晴らしい。サンドボックスは約580万人、ほぼ600万人のアカウントを作成した。今年は、我々にとって「クリエーターの年」だ。そしてそれが、企業としての焦点になっている。

約28万人が、クリエイターが体験のために使うエンジンであるGame Makerツールと、ユーザーがアセットを作成するためのエンジンであるVoxEditツールを実験的に使用している。

我々はクリエイターのための様々な取り組みを進め、彼らは新しい体験を作ったり、SandやLandなどの報酬を獲得するための新しい方法を見つけることができる。

多くの場合、それらの体験はアヴェンジド・セヴンフォールドやケアベア、ゴードン・ラムゼイのようなIPと結びついている。また、音楽や『スマーフ』のような特定のシリーズに基づいたさまざまなイベントも引き続き開催している。ユーザー生成コンテンツ(UGC)に大きく力を入れている。

──あなたのお気に入りの体験やゲームは?

先日、料理と料理番組「ヘルズ・キッチン(Hell’s Kitchen)」をテーマにした開発イベント「ゲームジャム」を開催した。料理シミュレーターのゲームがあれほど独創的に作られているのを見るのは驚きだった。

また、東南アジアのヴォックス・マキナ(Vox Machina)のように、ノーコーディングで作れるものの限界を押し広げている素晴らしいUGCスタジオが世界中にある。

私は、我が社独自のスタジオが、我が社最大級のシリーズで作っているものが気に入っている。スヌープ・ドッグの体験もそうだし、ペリー・セルトンやスティーブ・アオキ、その他何人かのDJと仕事をするなど、音楽の分野で多くの取り組みを行っている。

文字どおり、あらゆるテイストのものを見つけることができる。博物館に入って探検することもできる。プレイする必要もなく、ただ探検してメタバースに没頭することもできる。

──今年は「クリエイターの年」と言っていたが、サンドボックスの次なる展開は? 人々は何を楽しみにできるのだろうか?

今年はたくさんのことが起こるだろう。クリエイターだけの話ではない。実際、今年の後半には、ユーザーであるプレイヤーに捧げる非常に有意義なものがいくつかある。まだ詳細は発表できないが、人々はそれを待ち望んできたと思う。

我々のGame Makerには、継続的な進歩があり、新機能をもたらし、体験をますます力強いものにすることができる。今後2、3カ月間、我々はパートナーシップを発表し続けていく。幸運なことに、我々と一緒に仕事をしたいという多くの実績あるブランドやIPがあるからだ。

──文字通り何百ものパートナーシップを結んでいるが、特にワクワクしているのは?

今日、「The Voice」とのパートナーシップを発表した。これは我々の制作チームが懸命に取り組んできたものだ。審査員と一緒に「The Voice」の世界を体験し、スタイルを決め、勝者を決める。ぜひ試してみて欲しい。

メタバースというビジョン

──「メタバース」という言葉が過去3年間、ジェットコースターのように大きな浮き沈みを経験したことは、あなたが一番よくご存じだと思う。最初は大げさに騒がれ、「暗号資産の冬」の間に冷え込み、一部の人たちにとってはほとんどジョークのオチのようになった。あなたとサンドボックスはどのようにこの状況を乗り越えてきたのか? また、この評判の変化はあなたにどのような影響を与えたのか?

メタバースは、我が社を支えるビジョンであり、なぜ我々が今していることをしているのかの基盤であり続けていると思う。特に創業メンバーにとっては。そしてそれは、会社の全員に連鎖していく。そのため、我々は長期的な目標だと考えている。今日の、そして未来の企業グループがともに築き上げるものだと考えている。

確かに、メタバースの盛り上がりは世間一般には薄れている。しかし、ゲームという面では、例えば『フォートナイト』など、最大のゲームプラットフォームのいくつかで、ユーザー生成コンテンツの世界に本当に入っている。我々はメタバースを信じて取り組んでいる。それが我々の信念だ。そしてメタバースは、現在のインタラクティブメディアにおける最大のトレンドのひとつだろう。

──メタバースが5年後にどうなっているか予想して欲しい。

(笑い)5年後、結果を確認に来るのか?

──いえ、ご安心を! 誰も追及したりしない。

よかった。マルチプラットフォームになって、ARやVRの要素も強くなると思う。アバターの相互運用性。購入。そして、ほとんどの機能は、パートナー企業の他のメタバースとシームレスな方法で行われるだろう。

クリエイターにはさらに強い経済効果があると思う。この世界でギターを学んだり、語学を教えたりする人も出てくるだろう。あるいは、会社の仕事をする人だっているかもしれない。

強力なバーチャルツーリズムの側面を持ち、博物館や金融機関、文化的なイベントについて知りたければ、インタラクティブにその中に入ることができるようになるだろう。

そして素晴らしいのは、それが極めて分散化されることだ。その多くはザ・サンドボックスではなく、世界中のユーザーによって所有される。そのため、イノベーションの多くはそこから起こるだろう。

「JBW Summit at IVS Crypto」にザ・サンドボックス共同創業者兼COOが登壇

なお、4日から始まる「JBW Summit at IVS Crypto(IVS Crypto 2024 KYOTO with JBW Summit)」に、ザ・サンドボックス(The Sandbox)共同創業者でCOOのセバスチャン・ボルジェ(Sebastien Borget)氏が登壇。

6日15時30分〜、メインステージで行われる「Riding the wave: Web3 gaming opportunities in this cycle(Web3 ゲームの波にのる: このサイクルにおける Web3 ゲームのビジネス機会)」で、ぜひ最新のWeb3ゲーム事情に触れてほしい。

なお、CoinDesk JAPANを運営するN.Avenue株式会社は、7月5日・6日に一般社団法人JapanBlockchainWeekと「JBW Summit at IVS Crypto」を共催。また、7月31日まで続く「Japan Blockchain Week」のメイン・メディアパートナーを務める。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ザ・サンドボックスのニコラ・セバスティアーニCCO
|原文:‘We’re Doing it, We Believe in it’: The Sandbox’s Nicola Sebastiani on Bringing Gaming to the Metaverse