暗号資産と伝統的金融(TradFi)の融合、進化か憂鬱か

ビットコインのソースコードがオンラインで配布されてから15年が経った。そのアイデアは、仲介者がその取引を承認する必要なく、人々が価値を交換する方法を提供することだった。

この15年の間に、他の多くの分散型データベースネットワーク(イーサリアム、ソラナなど)が作られ、多くの変化があった。それぞれが独自の機能と潜在的なユースケースをもたらしている。

デジタル資産は動きが速く、常に変化し続ける分野であると一般的に考えられているにもかかわらず、我々の調査では、長年にわたって驚くほど不変であったいくつかの興味深い点が明らかになった。

  • ビットコイン(BTC)は、過去12年のうち9年、大型株、小型株、国債、投資適格債、ハイイールド債、そして金(ゴールド)、REIT、インフラをアウトパフォーム。
  • 過去11年または過去2年のビットコインと上記すべての資産クラスとの相関は、25%未満。
  • ビットコインのボラティリティは69%だが、相関性が低いため、60/40ポートフォリオ(MSCI オール・カントリー・ワールドに60%、ブルームバーグ・マルチバースに40%)に1%追加しても、ボラティリティは0.07%、最大の下落は0.5%にしかならない。
  • この1%のポジションは、過去11年のリターンを年率0.67%向上させ、インフォメーションレシオは0.96。

中立的に分散投資

同様の統計結果は、デジタル資産全体(つまりビットコイン以外)にも当てはまる。これが投資家に示唆することは、デジタル資産に対して積極的な見方をする必要はなく、中立的な投資家としてアロケーションすればよいということだ。

マルチアセットポートフォリオにおける資産の中立的なポジショニングを評価するには、マーケットポートフォリオ、すなわち投資家がアクセス可能なすべての流動資産の全体をシミュレートしたポートフォリオを見るとよい。

流動資産の時価総額合計は約197兆ドル(約3京円、1ドル157円換算)。暗号資産は時価総額2兆4000億ドルで、1.2%を占めている。この市場規模は現在、ハイイールド債、インフレ連動債、新興市場の小型株と同程度だ。

純粋に暗号資産の特徴だけを見れば、マルチアセットポートフォリオに価値をもたらすことは明らか。成長可能性、分散投資のための資質、規制された投資手段を通じた投資のしやすさから、投資家が暗号資産を無視することはますます難しくなっている。

1~2%の投資であれば、この分野に中立的なスタンスを取り、潜在的なアップサイドから利益を得る準備を整え、ダウンサイドリスクを1%に抑えることでリスクを管理することができる。

実行は、かつてないほど容易になった。2024年には、ビットコインやその他のデジタル資産のETF(上場投資信託)が数多く登場した。

米国のビットコイン現物ETFには、全ETF史上で最大規模の資金が流入している。イーサリアム(ETH)現物ETFが次のステップになる可能性が高い。香港はビットコインとイーサリアムへのエクスポージャーを提供するETFの上場を承認した。ロンドン証券取引所も当初はプロ投資家向けだが、同じことを行っている。

暗号資産分野が伝統的金融(TradFi)と融合する様子を見て、憂鬱に思う人がいるだろう。しかし、これは新しい業界が成長し、成熟していく過程では当たり前のことだ。

確かに、皮肉な結果がもたらされることになる。この新しい資産クラスにとって、最も安全で、最もアクセスしやすく、最も透明性の高いエクスポージャー方法の1つがETF/ETPとなる。

同時に、統計的根拠が確立され、分散投資の意義を無視することが難しくなった今、暗号資産は、この斬新なテクノロジーがそれを改善しようと目指した伝統的金融システムにますます似てくることが予想される。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: The Evolution of Crypto and TradFi