米アーク、イーサリアムETFから撤退──激化する手数料競争が原因か

キャシー・ウッド氏が率いる米アーク(ARK)は、長年にわたる暗号資産(仮想通貨)支持者として知られ、現在、ビットコインETFを提供している会社の1つだ。

同社は他の会社とともにイーサリアム現物ETFの提供を申請していた。だがその後、理由を説明することなく撤退した。専門家によると、暗号資産ETFの激しい手数料競争が原因という。

テキサス州オースティンで開催された米CoinDeskの「Conseusus 2024」でウッド氏は、1月にローンチされた同社のビットコインETFは、0.21%という安価な手数料を設定しているため、まったく利益を上げていないと語っていた。他のビットコインETF発行者と同レベルの手数料だが、暗号資産以外のETFが一般的に設定している手数料よりも大幅に低い。

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「これはシンプルなビジネス上の決断だろう」とETFストア(ETF Store)のネイト・ジェラチ(Nate Geraci)社長は述べた。

「Ark 21Shares Bitcoin ETF(ARKB)が5カ月未満で運用資産残高35億ドルを上回っている可能性があり、だが同社が利益を得られていないなら、明らかに問題だ」

ETF発行者は、資産管理と引き換えに手数料を設定している。だが多くの投資家にとっては、手数料は利益を圧迫するものであり、少しでも低いことが望まれる。

激化する手数料競争

1月にアメリカでスタートしたビットコインETFでは、グレイスケール(Grayscale)は手数料を競合他社よりもはるかに高い1.5%に設定した。これは、結果的に同社のETFから数十億ドルが流出し、運用資産残高でブラックロック(BlackRock)に対して持っていたリードを失うことになった主な理由と考えられている。

「まだローンチ前にもかかわらず、手数料戦争がこれほど激しくなるとはまったく誰も予想していなかったと思う」とブルームバーグ・インテリジェンス(Bloomberg Intelligence)のETFアナリスト、ジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏は語った。

セイファート氏はまた、アークの判断は手数料の低さを考慮したものと考えている。

「ビットコインETFに対する需要では、パートナーシップはきわめて理に適っていた可能性がある」とセイファート氏。

「しかし、手数料はすぐに非常に低くなったため、両社は手数料から十分な収益を得られていないのかもしれない。イーサリアムETFに関して、ビットコインETFよりも需要が少ないと予想している場合はなおさらだ」

発行候補者の中で唯一、フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)だけが、現時点でイーサリアムETFの手数料を明らかにしている。提出書類によれば、Franklin Bitcoin ETFと同じ0.19%。

ETFの手数料が低いとしても、アークの離脱は、業界における強固なポジションと、他に複数のイーサリアム関連ファンドを提供していることを考えると衝撃的だ。

「私の見解では、驚くべき動き」とジェラッチ氏。

「より長期的なブランディングの観点では、アークがイーサリアム現物ETFに関与することに価値を見出していないことに驚いている。アークは多くの競合他社よりも暗号資産に関してはるかに前向きな考えを持っているため、同社が離脱する様子を目にすることは奇妙だ」

現時点で、アークの担当者からコメントは得られていない。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Conseusus 2024に登壇したウッド氏(Suzanne Cordiero)
|原文:Cathie Wood’s Ether ETF Pullback Is Likely Due to Fee War