なぜビットコインはナスダックに追いつけないのか──ナスダックは史上最高値更新、BTCは1週間で6%下落
  • ナスダック総合指数が史上最高値を更新する一方、ビットコインは1週間で6%下落した。
  • 保有者による利益確定やマイナーによる売却の増加といった暗号資産特有の要因が、BTC価格の上昇を抑制しているようだ。

ビットコイン(BTC)は7日間で6%以上下落し、通常見られる、ハイテク株中心のナスダック総合指数との正の相関関係から逸脱した。

ビットコインの下落は、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が今年残りの期間に利下げを1回だけ行うと発表したことが原因だと一般的に考えられているが、6月12日の決定を受けてテクノロジー銘柄は上昇しているので、暗号資産(仮想通貨)特有の要因がナスダック指数に追随できない要因となっている可能性があることを示している。

「市場が特定のレベルで売り続けられている場合、それは出来事やストーリー、ファンダメンタルズとはあまり関係がない。その代わりに、大規模な売り手がそのレベルで価格が過大評価されていると認識している可能性がある」と、10xリサーチ(10x Research)の創設者であるマーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は述べている。「2021年11月の史上最高値である約7万ドルは、長期保有者がビットコインを売却する可能性が高い水準であり、彼らは最も換金する可能性が高い保有者だ」

今週初めに、2018年以来使用されていなかったウォレットから、5億ドル(約775億円、1ドル=155円換算)以上に相当する8000BTCが暗号資産取引所バイナンス(Binance)に移動した。ウォレットから取引所への移動は、売却が迫っていることのシグナルであることが多い。このウォレットは、4000ドル未満でこのBTCを取得したと報じられている。

分析会社CryptoQuantが追跡したデータによると、少なくとも12カ月間、2年間使用されていないBTCの数は減少しており、これはビットコイン価格が過去最高値付近で推移する中、保有者が利益を確定した兆候だ。

「供給が1年以上あるいは2年以上停止しているアドレスは、価格が過去最高値を記録した頃から売却を始める。これにより、長期保有者(保有期間3年以上)による買い増しが相殺されている」とマレックス・ソリューションズ(Marex Solutions)のデジタル資産部門共同責任者であるイラン・ソロット(Ilan Solot)氏は12日のメールで述べた。

長期保有者の不活性スペクトラム。(Ilan Solot、CryptoQuant)

ティーレン氏によると、180万BTCは10年以上動いていない可能性があり、その中にはサトシ・ナカモト自身がマイニングした110万BTCも含まれる可能性がある。 「そのため、2024年10月または11月にBTCを受け取れば、マウントゴックス(Mt. Gox)で保有していた者のほとんどがBTCを法定通貨に交換すると予想される」とティーレン氏は指摘した。

2014年にハッキングにより破綻した暗号資産取引所のマウントゴックスは、CoinDeskが4月に報じたところによると、債権者に総額約95億ドル(約1兆4725億円)相当の14万2000ビットコインと7300万ドル(約113億1500万円)相当の14万3000ビットコインキャッシュ(BCH)を分配する方向で調整を進めている。もし実施されれば、デジタル資産価格にかなり大きな影響を与える可能性がある。破綻した取引所の管財人は昨年、債権者への弁済期限を2024年10月31日とした。

BTC価格下落のもう1つの理由は、マイニング事業者による売りの増加である可能性もある。マイニング事業者は、ブロックチェーン上のブロックを承認する報酬としてBTCを受け取り、ユーザーの取引手数料から追加の収入を受け取る。

上場マイニング企業のマラソン・デジタル(Marathon Digital)は今月、9800万ドル(約152億円)相当の1400ビットコインを売却した。 CryptoQuantによると、このマイナーは6月10日に店頭デスクを通じて少なくとも1200BTCを売却し、1日の取引高としてはここ2カ月以上で最高となった。

ビットコインブロックチェーン専用コンピューティングパワーであるハッシュレートは、今月、毎秒622エクサハッシュ(EH/s)から599EH/sに減少した。これはマイナーの降伏の兆しだ。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Here’s Why Bitcoin’s Not Keeping Pace With Nasdaq