通貨発行は政府の役割、民間企業ではない:アップルのティム・クックCEO

アップルのティム・クックCEOは、アップルは仮想通貨をローンチするかどうかについて発言した。答えは断固ノーだ。

フランスの新聞「レゼコー(Les Echos)」のインタビューでクック氏は、民間企業は通貨管理において国家と競合すべきではないとし、次のように述べた。

「通貨は国家の管理下に留めるべきだと思う。民間が競合する通貨を作り出すというアイデアには賛成できない。民間企業はこのような方法でパワーを得ようとしてはならない」

発言は、フェイスブックへの当てつけかもしれない。フェイスブックはステーブルコイン「リブラ(Libra)」のプロジェクトを進めている。2020年のローンチを予定しているリブラは、金融安定と国家の金融政策への潜在的脅威になるとして、世界中の規制当局から非難を浴びている。

アメリカEU(欧州連合)の議員らは、プロジェクトの中断を求めている。

クックCEOはさらに、通貨の管理は、選挙によって選ばれた政府に委ねるべきとして、次のように述べた。

「通貨は、防衛のように国家の管理下になければならない。国家の使命の根幹。我々は政府の責務を担う議員を選出する。企業は選ばれておらず、この方向に向かう必要はない」

仮想通貨の方向に進むのではなく、アップルは同社デバイスで支払いがスムーズにできるよう、アップルペイ(ApplePay)とアップルカード(Apple Card)を使った法定通貨での支払いに力を注いでいる。

クックCEOの発言は、アップルペイ担当バイスプレジデント、ジェニファー・ベイリー(Jennifer Bailey)氏とは異なる姿勢を示している。同氏は9月、アップルは「仮想通貨に注目」している述べ、次のように付け加えた。

「興味深いと思う。興味深い、長期的な可能性を秘めていると思う」

しかしアップルは、水面下で密かにブロックチェーンプロジェクトに取り組んでいる。

2月、アップルは米証券取引委員会(SEC)に対して、大手企業140社以上が参加する「Responsible Business Alliance(RBA:責任ある企業同盟)」の鉱物サプライチェーンに関するイニシアチブ「Responsible Minerals Initiative」のための「ブロックチェーン・ガイドライン」のドラフト作成に関わったことを示す書類を提出した。同グループは、鉱物サプライチェーンのデューディリジェンスにおけるブロックチェーンの利用を検討している。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Tim Cook image via Shutterstock
原文:Issuing Money Is for Governments, Not Private Firms: Apple CEO