ステーキングを切り口に「CoinTrade」は次世代の資産運用プラットフォームを目指す

暗号資産をチェーンに預け、報酬を得る

ステーキングとは簡単に言うと、暗号資産をブロックチェーンに預け入れることで報酬を得ること。銀行にお金を預けると利息がつくことに似ている。暗号資産投資は価格上昇が注目されるが下落リスクもある。その点、ステーキングは3〜10数%の着実なリターンを得ることができる。なぜ、暗号資産を預けることで報酬が得られるのか? ブロックチェーンには、大きく分けて2つの仕組み、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)とPoS(プルーフ・オブ・ステーク)がある。

ステーキングはPoSを採用したブロックチェーンで行われ、代表的なものはイーサリアム。一方、PoWの代表はビットコインでステーキングには対応していない。PoSでは、チェーンの維持にはバリデーター(チェーンのネイティブ暗号資産を保有し、取引の検証を行う人や組織)の協力が不可欠で、バリデーターの数が多いほど信頼性が向上し、外部からの攻撃にも強くなる。

だがステーキングはPoSチェーンを支える重要な行為だけに、専門知識と一定の保有量が必要。例えばイーサリアムでは32ETH、記事執筆時点の価格では約1800万円が必要になる。いわば利息を得るための、最低預け入れ金額のようなもので、これでは大口保有者しかステーキングできない。そこで、そうした課題を解消し、個人投資家でもステーキングに参加して、着実なリターンを手にできるサービスが登場している。

海外ではLido(リド)が有名だが、日本では複数の暗号資産取引所がイーサリアムやソラナなどを対象にステーキングサービスを提供している。保有する暗号資産をステーキングサービスに預けておくだけで、年率3%から、銘柄によっては10%を超えるリターンを得ることができ、暗号資産の「新しい投資手段」として人気が高まっている。

暗号資産販売所「CoinTrade」の強み

暗号資産販売所「CoinTrade」の大きな特徴・強みの1つが、ステーキングできる暗号資産の銘柄が豊富に用意されている点だ。なぜステーキングに力を入れているのか? どのようなユーザーをターゲットに考えているのか? CoinTrade を運営する株式会社マーキュリー 取締役 副社長の藤原崇亮氏にCoinTrade の戦略、そして暗号資産業界の未来と、その中でCoinTrade が果たすべき役割を語ってもらった。

──ステーキングサービス「CoinTrade Stake」で重視していることはなにか?

CoinTradeは暗号資産交換業のサービス開始が2021年3月と、業界では後発だった。そのため、強みの1つとしてステーキングサービスに力を入れることにした。2021年の夏頃には開発を始め、2022年7月にサービス開始となった。

CoinTrade Stake」で最も大切にしているのはユーザー体験(UX)だ。ステーキングサービスの多くはユーザーにとっては「預けたら終わり」で、あとは定期的に報酬が入るだけ。しかし、それではユーザー自身にどんなサービスを使っているのか実感がわかない。

CoinTrade Stake は、ユーザー自身がステーキングする暗号資産の数量や期間を比較し、選択しやすいように表示したり、ステーキング報酬の明細を詳しく確認できたりするように工夫している。

ユーザーは保有している暗号資産から、いくらをステーキングに回すかを決める。期間も30 日や90 日などのプランから選ぶことができ、期間が⾧いほど報酬率も高く設定されている。報酬は月に3 回入金され、その都度、申し込み時の数量に対して何%の報酬が付与されたかがわかりやすく示されている。

自分で見て、選んで、結果を確認する。こうした体験を通じて、ユーザーがステーキングのプロセスを実感し、資産が増えていく様子を確認しやすくなっている点が、当社のサービスの大きな特徴であり強みだ。実際、当社のステーキングサービスを経験したユーザーの8〜9割は「期間延長」をしたり、「もう一度申し込む」など、リピーターとなってくれている。

──ステーキング対象の暗号資産、選定基準は?

現在、ステーキング可能な銘柄は11種類(PLT、HBAR、IOST、AVAX、ADA、MATIC、ETH、DOT、NEAR、XTZ、SOL)。それぞれの暗号資産を手がけるプロジェクトをしっかりと調査したうえで選定している。単に利回りの高さだけを追求するのではなく、プロジェクトの将来性なども見極めるようにしている。

具体的な選定基準としては、プロジェクトの目的や技術、運営体制といった基本的な部分に加えて、時価総額や流通量、価格の安定性なども重視している。ユーザーの資産を預かる立場としては、プロジェクトの信頼性を見極めることに最も重点を置いている。

──利用してもらいたいユーザー層は?

現状のユーザーは暗号資産投資の経験者が中心だが、もっと初心者の人たちにも使ってもらいたいと思っている。売買には慣れが必要だが、ステーキングは買ったあと預けているだけで報酬が得られる仕組みで、初心者にも利用の判断がしやすいのではないかと考えている。

暗号資産の売買では、タイミングが重要だ。しかし、相当な知識と経験を持つ人でも、特に「いつ売るべきか」を見極めることは難しい。例えば、昨日ビットコインを購入したとして、それをいま売るべきなのか、保有しておくべきなのか。自信を持って、明確に判断することはできないだろう。しかし、ステーキングなら、持っているものを預けるだけでいい。

暗号資産そのものが価格変動の大きなリスク資産であることに変わりはない。しかし、ステーキングを含めた暗号資産の新しい活用法を広く用意していくことで、資産ポートフォリオの選択肢の1 つとして考えてもらえるようにしたい。そのためには、まずは暗号資産に気軽に触れてもらって、徐々に理解を深めてもらえるような体験を提供したいと思っている。

CoinTrade の場合、親会社の株式会社セレスが運営するポイントサイト「モッピー」などと連携し、モッピーのポイントを暗号資産に交換することもできる。結果的に「ポイ活」の延長として、暗号資産に触れてもらえる機会となっている。

──「ステーキング」の重要性も変化していく?

暗号資産市場全体を見ると、ステーキングはかなり浸透してきている。2022 年以降は、ステーキングが可能な、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)方式を採用していない暗号資産プロジェクトの方が少数派になりつつある。今後、暗号資産は、単に保有するだけでなく「どう活用するか」がより重要になってくるだろう。その文脈で、ステーキングは非常に有力な選択肢の1つとなる。

ここ数年、NFTやRWA(リアル・ワールド・アセット)、あるいはセキュリティ・トークンなど、ユーティリティに注目したトークンが増えている。ゲームトークンなども登場し、ユーティリティ性のあるトークンはますます増えていくだろう。

そうなれば暗号資産を売買することはもちろん、使用する機会がより身近になり、ユーザーも増えていくだろう。そうした世界を前提に考えると、暗号資産や関連トークンを売買するだけではなく、それを運用するプラットフォームの必要性も高まっていく。CoinTrade が目指しているのは、まさにそうしたプラットフォームだ。資産活用のためのプラットフォームを目指したいと考えている。

──今後、どのようなサービス展開を予定している?

暗号資産の積立サービスなども準備している。暗号資産の積立とステーキングを組み合わせることで、ユーザーは売買のタイミングを気にすることなく、着実に暗号資産を増やしていくことができるようになる。例えば毎月1万円分を積み立てしながら、それをステーキングに回して、さらに増やしていくようなイメージだ。

ユーザーが保有する暗号資産をCoinTrade に預ければ、売買だけでなく、さまざまな運用が可能になる。資産活用のためのプラットフォームとなるための基盤づくりをまさに今、進めているところだ。この夏から、次々と新サービスをリリースしていきたい。

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|インタビュー・文:渡辺一樹
|撮影:小此木愛里