国際的なコンテナ輸送へのブロックチェーン活用におけるパイオニア、300キュービッツ(300cubits)はTEUトークンのサービスを断念した。理由はビジネスの低迷だ。
「システムを介した取引高は商業レベルから程遠い」と同社は9月30日(現地時間)付けの声明に記した。
「システムを経由したコンテナはわずか200~300ほど、輸送関係のブロックチェーン・プロジェクトには十分な数かもしれないが、システムを商業的に継続していくには十分ではない」
TEU──コンテナ輸送における単位、Twenty-foot Equivalent Unitから命名──は、2018年はじめにICO(イニシャル・コイン・ オファリング)され、同社の予約デポジット・モジュール(Booking Deposit Module)の交換媒体に指定された。
TEUを渡された顧客は、TEUを使って加盟する輸送業者にコンテナのスペースを予約するものと考えられていた。TEUは価値を持ち、その結果としてコンテナ市場を悩ます予約に関する問題は解決されると期待されていた。顧客は注文のキャンセルをあまりしなくなり、輸送業者が船のオーバーブッキングをする可能性も低くなる。
2018年3月に試験運用を始め、システムは2018年7月に稼働した。だが関心は限定的で、わずかな取引しか実際には行われなかった。同社の声明によると、マースク・グループ(Maersk Group)でフロリダに拠点を置くシー・ランド(Sealand)、北京に拠点を置くコスコ(Cosco)、ジュネーブに拠点を置くMSCがTEUをテストし、300キュービッツは他にも多くの大手輸送業者と協議していた。
同社は規制に関する問題が大きな障害だったと述べた。潜在顧客の多くは、関係当局がトークンをどのように扱うかが不透明なために手を引いた。流動性とボラティリティも、潜在顧客の間で懸念が広がる一因となり、逆にブロックチェーンの主なセールスポイントである不変性や匿名性は、顧客の気持ちを捉えることは無く、市場から問題だと見なされた。
声明によると、300キュービッツはTEUトークンの少なくとも75%をバーン(焼却)する予定で、トークンが戻れば残りも焼却していく予定。同社はブロックチェーン関連の他の可能性を今後も追及していく。
コンテナを予約したが、連絡もないまま現れない客に対する解決策は、輸送業者自身と、強制力のある貨物輸送契約を提示するニューヨーク・シッピング・エクスチェンジ(NYSHEX)が対応してきた。
ブロックチェーンはまだこの業界で使われている。だが、別の用途だ。最も顕著な例としては、IBMとマースクは、サプライチェーンでつながっている関係者間で輸送データをリアルタイムでシェアすることを可能にするブロックチェーン・ベースのシステム「トレードレンズ(TradeLens)」を開発している。
翻訳:石田麻衣子
編集:増田隆幸
写真: Titanic image via Wikimedia Commons
原文:300cubits, a Blockchain Shipping Pioneer, Gives up on Its TEU Token