プライベートエクイティ大手がビットコインマイナーに接近中、データセンターのAI転用を目論む
  • コア・サイエンティフィック(Core Scientific)のアダム・サリバン(Adam Sullivan)CEOによると、コアウィーブ(CoreWeave)とのAIインフラ契約を発表して以来、同社は大手プライベートエクイティ(PE)企業から融資や提携の打診を複数受けているという。
  • PE企業はAI関連のコンピューティングパワーを求めてデータセンター事業を注視しており、魅力的な選択肢としてビットコインマイナーの既存インフラに注目している。
  • サリバンCEOは、同社はコアウィーブの最近の買収提案だけにフォーカスしているわけではなく、マイニングセクター全般でM&Aが加速すると予想していると述べた。

AI企業からの需要急増に対応

プライベートエクイティ企業は、人工知能(AI)関連マシンに電力を供給できるデータセンターへの需要の高まりのおかげで、ついにビットコイン(BTC)マイナーに価値を見出している。

ビットコインマイナーが莫大なエネルギーを必要としていることはよく知られている。むしろ、白熱した議論が交わされる話題である。AIセクターの急速な台頭により、AI関連企業による電力への渇望もそれに近いものがある。

AI業界はすでに小国並みのエネルギーを使用しており、さらに増加する可能性があるという報道もある。このような電力需要の急増がAI業界に問題を引き起こしている。投資家はこの分野に資金を投入しているが、企業は増え続けるコンピューティングのニーズを満たすインフラにすぐにアクセスできない。

そこで、ビットコインマイナーとそのデータセンターが投資家にとって有利な選択肢になりつつあると、最大手マイニング企業の1つであるコア・サイエンティフィックのアダム・サリバンCEOはCoinDeskの独占インタビューで語った。

「プライベートエクイティ企業は現在、明らかにデータセンター分野を追いかけている。これまで必ずしもデータセンターを手がけてこなかったプライベートエクイティ企業でさえ、この分野を評価している」とサリバン氏は述べた。

プライベートエクイティ企業は、すでに構築されたマイニングインフラにAI関連企業のマシンを収容することをサポートしたり、ゼロから構築するよりも早くデータセンターを構築できるようAI関連企業と提携できるため、ついにビットコインマイナーに価値を見出している。

「(データセンターにとって)今、最大の制約のひとつは、100メガワット以上の電力が供給され、高圧変電所の変圧器が設置されている場所を見つけること。そのような場所を見つけるのは難しいが、たまたまそれが過去4年間、ビットコインマイニングのための場所を見つける基準だった」とサリバン氏は説明した。

コア・サイエンティフィックは先日、AI関連のコンピューティングニーズのために、クラウド・コンピューティング企業のコアウィーブと12年に及ぶ200メガワットの契約を結んだ。さらに容量を拡大するオプションも付いている。

サリバン氏は、この契約のニュースが報じられて以来、コア・サイエンティフィックは、AI関連のさらなる提携のために資金提供を持ちかける大手プライベートエクイティ企業から数件のアプローチを受けたと明かした。

実際、この契約はビットコインマイニング業界への投資家の関心を引き起こし、再評価の引き金となった。JPモルガンはさらに一歩踏み込んで、この契約はマイニング業界がハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)に関与していることを証明するものであり、マイナーにとってM&Aの新時代の到来を告げるものだろうと述べた。

半減期後の苦しみ

プライベートエクイティ企業が現在マイニング業界に関心を寄せている主な理由の1つは、ビットコインの半減期で、ビットコイン報酬が半分になり、マイナーにとって競争が激しくなったことだ。多くのマイナーは採算維持に苦戦しており、会社を売却するか、データセンターをHCPやAI関連のコンピューティングマシンのホスティングに転用することで収益源を多様化しようと考えているところもある。

JPモルガンは7月2日付の文書で、「半減期はプライベートエクイティ企業の目にも留まり、プライベートエクイティ企業はこの出来事を中小企業を統合し、既存のインフラを自社に取り込む好機と捉えている」として、ハット8(Hut 8)やビットファーム(Bitfarms)など一部のマイニング企業銘柄は半減期以降「とりわけ」好調に推移していると付け加えた。

しかし、AIコンピューティングに対応するためにデータセンターの設備を構築したり、転用したりするために必要な資本は少なくはない。このような競争の激しい市場では、一部のマイナーにとっては資金がかかり過ぎるものとなりつつあり、プライベートエクイティ企業は現在、これらのマイナーに融資やその他の専門知識を提供するチャンスを見い出しているとサリバンCEOは述べた。

「ビットコインマイニング企業の多くは、現在ビットコインマイニング施設の建設に苦戦しており、プライベートエクイティ企業は、潜在的なリターンに注目し、(マイニングからHCPへの)潜在的な転換から経済的価値を引き出す方法を模索している」

多くの場合、こうしたPE企業は、新しいパートナーの紹介や潜在的な新規顧客の紹介などによって、「能力の不十分な」マイナーにも多大な支援を提供することができるとサリバンCEOは付け加えた。

PE企業がマイニング業界を数年間無視した後で、今になって注目しているもう1つの理由は、以前は「価値が変動しすぎて、リターンプロファイルに合わなかったから」だ。コア・サイエンティフィックが締結した12年契約のような長期間のHPC取引は、「プライベートエクイティ企業にとって、より発展の可能性があり、投資しやすい」とサリバンCEOは付け加えた。

存続の危機?

プライベートエクイティ企業のビジネスモデルは、事業や資産を購入し、ビジネスモデルに手を加えたり、完全に変更した後、リターンを最大化するために会社を売却するという「Own-to-Sell(売却するために所有する)」だ。これはビットコインマイナーの終焉を意味するのだろうか?

サリバンCEOによれば、答えはそれほど単純ではない。

第一に、これはマイニングビジネスの一部にとって、より広範なシフトの一部となるだろう。将来的な半減期は業界をさらに競争の厳しいものにし続け、より低コストのマイニング施設の登場を促進するだろう。そしてそのような低コスト施設は、HCPやPE企業からの関心が最も高いだろう。

第二に、現在使われているマイニング施設がすべてデータセンターに転用できるわけではない。さまざまな要素のために、一部の施設はHPCへの転換に適さない可能性があり、そのような施設は、経済的にマイニング事業を続けることが可能である限り、マイニング施設のままだろう。

しかし、マイナーが次の半減期を迎える前に、今年起こったばかりの半減期を乗り切らなければならない。過密状態にあるマイニング業界は今、利幅の縮小によるプレッシャーを受けており、その結果、マイナー間での買収や新たな取引交渉が相次いでいる。

実際、コア・サイエンティフィックは、200MWの契約に調印した同じ日に、コアウィーブからの1株当たり5.75ドルの買収提案を、同社を著しく過小評価しているとして拒否した。

取引の状況について尋ねられたサリバンCEOは、両社は現在、オーガニックな成長の機会に集中していると述べた。同時に、コア・サイエンティフィックは積極的に新規施設を開拓し、潜在的な新規顧客とも話をしている。

それでも、当然のことながら、上場マイニング会社のCEOとしてサリバン氏は、もし潜在的な買収者が株主と取締役会が会社の完全な価値と考える金額を支払う意思があれば、同社はそのオファーを検討しなければならないと述べた。オファーを全面的に拒否したにもかかわらず、サリバン氏はマイニング分野でのM&Aは始まったばかりだと考えている。

最近のM&Aの波では、ライオット・プラットフォーム(Riot Platforms)とビットファームの敵対的買収合戦、クリーンスパーク(CleanSpark)のGRIID買収、ハット8のAI関連投資などもあったが、これはまだ始まりに過ぎない。

「今後12カ月の間に起こるM&Aの、まだ初期段階にいると思う」とサリバンCEOは語った。

「多くの企業は、インフラの制約を考えると、他のより大きな企業に事業を売却するか、設備の多くをHPCに転換することに意欲を燃やしていると思う」とサリバンCEOは指摘し、中規模マイナーのほとんどは、自社を売りに出す可能性が高いと付け加えた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Private Equity Giants Are Circling Bitcoin Miners on AI Allure