ETFとは「Everything That Fits(合うものなら何でも)」という意味

今年の暗号資産(仮想通貨)の主なストーリーのひとつは、米国での現物ETF(上場投資信託)の承認と取引開始だ。ETFは大成功を収めた。ビットコインETFは半年で160億ドル(約2兆5120億円、1ドル157円換算)の資金が流入しただけでなく、ビットコイン価格(したがってビットコインETFの価格)は46%上昇した。

ETFの成功は明らかで、ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOが、今ではビットコインが好きだと宣言しているほどだ(自分の会社が儲かるからというだけではない!)。

CNBCとの最近のインタビューで、フィンク氏は「5年前の私の意見は間違っていた。ビットコインは合法的な金融商品だと考えている」と語った。

確かに、ブラックロックのビットコイン現物ETF「IBIT」の運用資産残高(AUM)は、ブラックロックの総運用資産残高から見れば微々たるものだ(10兆6000億ドルのブラックロックの総資産からIBITのAUMである180億ドルを引いても、四捨五入すればまだ10兆6000億ドルが残っている)。

それでも、ブラックロックやフィデリティ(バンガードについてはまだ待ちの状況)のような会社がビットコインをポートフォリオに含まれる正当な資産と認めたことで、フィンク氏のコメントは、ファイナンシャルアドバイザーにとっては、ビットコインがさらに正当化されたことになる。

ということでビットコインは、少なくともこのような形で生き残っていくということだ。

次はどうなるだろうか? もちろん、イーサリアム現物ETFだ。明日(23日)にも取引が始まるかもしれず、(ビットコインETFより規模は小さいものの)成功が期待されている。

その後は? 当然、ソラナETFだ。

きわめて多くの、多様なETF

私自身は、ビットコインは他の暗号資産とは異なるものであり、当初の理想を具体的に実現している唯一のものと今でも考えているが、ビットコインが大手金融機関やウォール街、ひいてはETF発行者の目から見ても特別なものと仮定するのは大きな間違いだと考えている。

米国のETF市場は巨大だ。2023年のInvestment Company Instituteの統計を確認すると、資産8兆ドル、ETFを提供する企業218社、ETF総数3108本!

ここにはもっともな理由がある。ETFを使えば、どのような投資テーマに沿ってでも、ポートフォリオを構成することが簡単になる。

例えば、ヘルスケアや消費者向け商品に投資したいと思えば、そのためのETFがある。あなたが若く、ポートフォリオの大半をテック株に偏重したナスダック100に投資したいとする。それに連動するイベスコ(Invesco)のETF「QQQ」を大量に買えばいい。どんなアイデアであれ、そのためのETFが存在する。

さらに面白い、茶番になりかねないアイデアのためのETFもある。

例えば、あなたがまだ若く、ポートフォリオの大半をナスダック100に投資したいが、3倍のスピードでリッチになりたいとする。その場合は「TQQQ」を買えばいい。TQQQはQQQと同じだが、3倍の速さで上昇(下落)する(これは負債、つまりレバレッジによって達成されるため、「トリプルレバレッジETF」と呼ばれる)。

イエス・キリストも気に入るようなETFを買いたいと思ったら? 倫理的な投資基準を持つWWJDを試してみよう。悪徳の中に美徳を見て、世俗の罪に投資したいと思う? ならば倫理的には問題かもしれないが高い収益を目指すVICEを試してみよう。

CNBCのジム・クレイマー(Jim Cramer)氏の投資アドバイスが大嫌いなら? Inverse Cramer ETF(SJIM)を試してみよう。このETFは、クレイマー氏のアドバイスと正反対のこと(逆張り)をする(ただし、このETFは今はもう存在していない)。

ビットコインETFだけでは終わらない

こうしたことを念頭に置けば、「ビットコインが他のものよりも優れており、SEC(米証券委員会)もそれを知っているため、ビットコインETFしか暗号資産ETFは存在しないだろう」という考え方には決してならなかっただろう。

2年前、私は次のように主張した。

もし明日、SECがビットコインを証券と決定したとしても、ビットコインの基本的な部分は何も変わらない。また、ビットコインの市場操作が悪いことについても何も変わらないだろう。ただ、今この瞬間、誰がビットコインを規制できると考えるかが変わるだけだ。

哲学的には、暗号資産が証券であるかどうかは当時も今も問題ではない。ビットコインの現物ETFが米国に登場し、次はイーサリアムのETFが登場し、そしてまた次のETF、そしてまた次のETFが登場し、それは最終的に立ち止まって、次のように自問するまで続く。ミームコインETFの発行を阻むものは一体何なのか?

「ミームコインは証券」と答える前に、多くのETFには証券が含まれることを思い出してほしい(QQQ、TQQQ、WWJD、VICEなど)。

規制当局が新しい暗号資産ETFを認めている限り、ETFを提供する企業は市場にETFを提供し続けるだろう。それがETFプロバイダーの生業だから。彼らはETFを作り、投資家はETFを買い、ETFプロバイダーはETFの管理料を得る。

今のところ、見た目がアヒルのようで、鳴き声がアヒルのようであれば、「アヒルETF」として商品化されそうに思えるが、投資家や規制当局は最終的には冷静な判断を行うと信じている。たとえそのために「アヒルETF」の登場が必要だったとしても。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:ETF Stands for ‘Everything That Fits’