メッサーリCEO、経営陣から冷静にと忠告──トランプ氏銃撃事件の後、「内戦」や反移民的なツイートを投稿

暗号資産データプラットフォーム、メッサーリ(Messari)の創業者兼CEOであるライアン・セルキス(Ryan Selkis)氏は、ソーシャルメディア上では遠慮することはほとんどなく、ゲーリー・ゲンスラー委員長率いる米証券取引委員会(SEC)などをXで定期的に批判している。

「愛の鞭」

先日、暗殺者の銃弾がトランプ前米大統領をかすめた後のセルキス氏の暴言は、特に際立っていた。マイク・ノヴォグラッツ(Mike Novogratz)氏のギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)やヘッジファンドの大物ブレヴァン・ハワード(Brevan Howard)といった大手企業から資金援助を受け、かつては3億ドル(約471億円、1ドル157円換算)の評価額があったとされるメッサーリの同僚たちは、同氏に落ち着くよう求めたようだ。

「メッサーリの首脳陣から素晴らしい『愛の鞭』を受けたところだ。私のビジョンと心情を知っているからこそ誠意をもって私を抑制する手助けをしてくれる人たちには、言葉にできないほど感謝している。今週は熱くなりすぎた。すぐに完全な形で対処する」とセルキス氏は7月18日に投稿した。

どういうことだろうか? トランプ前大統領が命を狙われた後、セルキス氏がXでどれだけ感情的になったかと関係があるだろう(18日の時点で、彼は問題のツイートを非公開にしていた。約35万4000人のフォロワーには見えるままだ)。

「この時点でトランプ氏に反対票を投じた者は、火に焼かれて死ねばいい。文字通りの戦争だ」と、銃撃のあった日の午後にセルキス氏はXに投稿した(この投稿はその後削除された)。

セルキス氏は別のツイートで、さらにこう付け加えた。

「この国の内戦が今日始まった。もしあなたが反トランプなら、戦うことをいとわない男に反対することになる。幸運を祈る」

翌日には、少なくとも自衛のための暴力がセルキス氏の頭をよぎっていた。

「ボルシェビズム(急進的な左派運動)は投票では治らない。左派の転移性の癌と悪を、必要ならば力ずくで取り除かなければならない。だからこそ、憲法修正第2条は非常に重要だったし、今でも重要だ。暴力を仕掛けてはならないが、もし暴力が持ち込まれたら、暴力でとどめを刺せ」

そして戦争についてもまだ考えているようだった。

「残念ながら、団結は決定的な勝利の後にしか達成できないことがある。今はそような瞬間のひとつだ。過去3回は1776年、1860年、1942年だった。平和を祈る。戦争の準備をしている」

攻撃的なツイートの数々

セルキス氏はMAGA(Make America Great Again:アメリカを再び偉大な国に)運動の移民排斥のレトリックに同調した。彼はあるXユーザーに「市民なのか、それともただのグリーンカード保持者なのか?」と尋ねた。その人は、市民権を申請しようとしているグリーンカード保持者だと答えた。

それに対するセルキス氏の返答はこうだった。

「あなたを祖国へ送り返すことを望む。… あなたには市民権を得る権利はない。そのままであってほしい」

セルキス氏は銃撃直後の血まみれのトランプ氏の写真を投稿した。その下には、オサマ・ビンラディンがネイビーシールズ・チーム6によって殺害されたとき、当時のバラク・オバマ大統領とジョー・バイデン現大統領が会議室にいた有名な写真が添えられていた。セルキス氏は「まさにそのとおりだ」と記した。

別の投稿は、米政界でも有名な暗号資産批判者であるエリザベス・ウォーレン上院議員に宛てたもので、彼女とトランプ氏を暗殺しようとしたトーマス・マシュー・クルックスの写真を並べて掲載した。

「トランプ氏がまだ生きていて嬉しいか? それとも、『民主主義を破壊する独裁者』を始末するチャンスを逃してがっかりしているのか? 人相学は嘘をつかない…」

見た目からその人の性格を見分けるという、長らく信用されていない「人相学」という言葉を使ったのは、眼鏡をかけた2人の間に身体的な類似性があることを暗示しようとしたようだ。

セルキス氏はSECのゲンスラー委員長のツイートにこう返信している。

「あなたの避けられない実刑判決まであと少し。もうその時の喜びが感じられるほどだ」

セルキス氏はCoinDeskからの取材のリクエストに対して、この1週間の投稿について詳しい説明をすることを拒否した。

これは通常、CEO、特にベンチャーキャピタルの後ろ盾を持つCEOから連想されるようなオンライン上の行動ではない。しかし、ソーシャルメディアの暗号資産ユーザーの間では、大胆な発言は珍しくない。Xのオーナー、イーロン・マスク氏も大胆な投稿で知られている。

メッサーリは、ユーザーがデジタル資産に関するデータを監視・調査できるプラットフォームであり、暗号資産において重要な役割を果たしている。セルキス氏は、サム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)氏が米政界で大きな影響力を失った後、業界がその影響力を取り戻そうとするうえで重要な役割を担っている。

セルキス氏は今年5月、トランプ氏が自身の別荘マー・ア・ラーゴで開催したNFT関連の集会で、トランプ氏の横に立って観衆に語りかけた。

18日の最初の『愛の鞭』に関するツイートの後、セルキス氏はさらにツイートを続け、あまり静かにはならなかった。

「自己防衛と現在の政治状況をメディア以上に深刻に受け止めることについて、強気に大声で叫ぶツイートを送った。警告はした。子供たちを守り、戦争を防ぎ、アメリカの価値観を守るために、アンチたちにも同じ努力をしてほしいものだ」とセルキス氏は述べている。

さらに、「顔を殴られるまでは、誰にだって計画がある。私は予想外のパンチを受けて倒れた。よかった。ツイート数はより少なく、より長文に。より的を絞った怒りになるが、考え方は変わらない『攻撃』だ」と投稿した。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:メッサーリのライアン・セルキスCEO(Suzanne Cordiero/Shutterstock for CoinDesk’s Consensus)
|原文:After ‘Civil War’ and Anti-Immigrant Tweets, Ryan Selkis Told to Cool It by His Crypto Startup’s Leadership