担保資産としてのビットコイン:借り手にも、貸し手にも、投資家にもメリット

金融は、古代から様々な道徳哲学に影響を受けながら形成された分野であり、借入と貸付は何世紀にもわたって発展してきた。

イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教の初期の頃には、利子の支払いよりも、相互利益と資産のスチュワードシップ(預かった資産を管理すること)など、リスクの公平な分担が重視された。

こうした文脈のなかで、ビットコイン(BTC)という特徴時なデジタル資産を取り入れ、金融関係を再構築する新たなチャンスを提供する、思慮深く先駆的なクレジットマネージャーが登場している。

ビットコインをストラクチャード・レンディング(複雑な条件で、リスク管理を行う融資)の担保に加えれば、ビットコイン固有の特性が借り手、貸し手、投資家に利益をもたらす可能性がある。ビットコインの担保化は、資産価値に対する長期的な視点を軸にすべての関係者の利害を一致させることで、より持続可能で互恵的なプライベートクレジットへのアプローチを促進できる。

担保としてのビットコイン

Battery Finance Inc.のような革新的な資産運用会社は、ビットコインをハイブリッド担保モデルに活用している。このモデルでは、不動産の価値と融資の一部で購入されるビットコインをもとに融資が引き受けられ、2つの担保資産を作ることで融資を確実なものにしている。

成長資産としてもインフレ感応資産としても機能するビットコインのユニークな特性は、ローン構造を強化する。ビットコインの普及と市場需要の高まりは、その革新的なブロックチェーン技術と分散型の性質に起因するもので、インフレや地政学的混乱に対抗できる価値の保存手段として位置づけられている。

貴金属とは異なり、ビットコインの供給量は限られている。2100万ビットコインが上限であり、マイニングは2140年頃に終了すると予測されている。この希少性がビットコインの価値提案に貢献し、成長資産としての役割を強化すると同時に、インフレに対する感度を高めている。

貸し手と投資家にとってのメリット

クレジットマネジャーの最大の責任は、元本と利息の返済を確実なものにすることだ。マネジャーは、利回り目標と信用リスクのバランスを取る必要があり、金利の変動やインフレによって追加の利回りが必要なときは、しばしば段階的にリスクを取ることが求められる。

さらに、急速かつ大規模な技術革新が進展する環境下では、多くの業界が先の見えない変化の中でビジネスモデルの適応を迫られている。インフレ率が相対的に高い状態が続けば、こうした企業にとっての課題はさらに難しくなる。

クレジットマネージャーにとって、運用戦略の大幅な変更は、信用リスクの大幅な変更を意味する。ビットコインを担保構造に追加することで、マネージャーは利回り目標を維持しつつ、信用リスクを低減できるだろう。

さらに、ビットコインの大きな成長可能性は、ポートフォリオ全体のリターンを増強する。ビットコインを担保に組み込むことで、ポートフォリオは分散化の恩恵を受ける。これは、ビットコインのパフォーマンスは金利やインフレ動向といった伝統的な信用ポートフォリオの特性とは相関していないためだ。

ビットコインを利用することで、マネージャーは質の高い借り手や強固な構造を優先させることができ、追加の利回りを得るために信用リスクを追加するという一般的なジレンマを回避できる。

借り手にとってのメリット

ビットコインを担保に組み込むことは、借り手にとっても大きなメリットがある。その価値に対する長期的な視点を共有することで、借り手と貸し手の利害が一致し、貸し手にはパートナーシップの最善の利益のために行動するインセンティブが生まれる。借り手は、クレジットマネージャーによるビットコインのプロフェッショナルな運用からメリットを得る。

この積極的な管理により、資産価値は最適化され、借り手にとっては専門知な知識と監視が強化される。さらに、ビットコインの価値が増加することで、借り手はより柔軟に対応できるようになり、繰り上げ返済や早期のローン返済がが可能になる。

さらに、担保にビットコインを組み込むことで、借り手はより有利な融資条件を利用できるようになる。担保の安全性が高まることで、低金利やより良い借入条件が適用される可能性があり、ローンのリスク・プロファイルの低減につながる。

担保としてのビットコインが台頭することは、融資のあり方を一変する可能性がある。特に、不確実性が高まるなかで信用リスクを軽減するビットコインの力は、その変革力を際立たせている。

究極的には、この戦略の成功は、クレジットマネジメントチームの能力と機敏さにかかっている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto for Advisors: Bitcoin and Lending