三菱UFJモルガン・スタンレー証券がセキュリティ・トークン(デジタル証券)参入に向けて動き出したと日経新聞が伝えた。これで、いわゆる国内の5大対面証券会社(野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)がすべてセキュリティ・トークンに参入することになるという。
国内のセキュリティ・トークン市場は2023年度に大きく成長した。CoinDesk JAPAN「セキュリティ・トークン最前線」の銘柄一覧のデータを集計したところ、2023年の発行総額は約962億円にのぼった。
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またセキュリティ・トークン取引・管理基盤「ibet for FIn」を手がけるブーストリー(BOOSTRY)は4月に、日本のセキュリティ・トークン市場総括レポート(2023年度)」を公表。そこにも「2023年度の発行総額は900億円を突破、前年比5.8倍」と記されている。
報道によると、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は4月にセキュリティ・トークン(デジタル証券)の専門チームを立ち上げた。社債を裏付け資産としたセキュリティ・トークンの引き受け・販売に向けて発行体と協議しているという。
日本では、不動産を裏付け資産としたいわゆる「不動産ST」が大部分を占めている。前述の「セキュリティ・トークン最前線」での集計では、2023年の発行総額約962億円のうち、不動産STが約826億円を占めた。
ブーストリーはレポートのなかで、2024年度のセキュリティ・トークン市場の規模は1700億円程度に拡大すると見ており、市場の拡大に向け、社債セキュリティ・トークンをはじめとする提供商品の多様化が求められている。
多様化が進む国内セキュリティ・トークン市場
不動産STはこれまで、宿泊施設、マンションなど単一の物件を対象とし、「わかりやすさ」や「投資の手触り感」が特徴とされてきたが、2024年第1四半期には賃貸戸建シリーズのポートフォリオ(484戸/462物件)を対象とする、これまでにない商品が登場した。
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あるいは大和証券は、国内の太陽光発電施設に投資できるセキュリティ・トークン(デジタル証券)の開発を進めており、同社デジタルアセット推進室長の斉藤貴裕氏によると、2024年度中の発行と販売を目指しているという。
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さらに7月には映画の製作委員会への出資をセキュリティ・トークン化するという、まったく新しい切り口の商品も登場している。
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日本では不動産、社債を中心に市場拡大が進むセキュリティ・トークン(デジタル証券)。グローバルでは、預金、債券、ファンドなど、金融商品のトークン化が大きく進展しており、広くRWA(現実資産)のトークン化という視点で捉えられている。
ボストン・コンサルティング・グループが2022年9月に発行したレポートによると、RWA市場は2030年までに最大16兆ドル(約2300兆円、1ドル145塩酸)規模になるという。
今年、日本での発行・流通が期待されるステーブルコインも、法定通貨というRWAをトークン化したもの。2024年、セキュリティ・トークン(デジタル証券)をはじめとするRWAのトークン化は、国内・海外ともに大きな進展を見せると期待されている。
|文:CoinDesk JAPAN編集部
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