JPモルガン、ステーブルコイン規制がテザー社の脅威になる可能性を指摘──「酸っぱいブドウ」と反論受ける
  • JPモルガンはレポートで、ステーブルコイン規制がテザーの市場支配を脅かすと指摘した。
  • MiCAに準拠することでテザー社は準備金管理戦略を変更しなければならない可能性があるという。
  • テザー社はこれに反応してCoinDeskに対し、「JPモルガンのアナリストらは我々の業界の仕組みについて根本的な誤解をしているようだ」と述べた。

JPモルガン(JPMorgan)は14日に発表した調査レポートで、近年暗号資産(仮想通貨)市場を支配してきた最大のステーブルコインであるテザー(USDT)を発行するテザー(Tether)社にとって、規制の強化が顕著な課題となる可能性があると指摘した。

ステーブルコインは通常、米ドルに価格が連動するタイプの暗号資産だが、他の通貨や金のような資産に価格が連動するものもある。テザーの時価総額は約1170億ドル(約16兆9650億円、1ドル145円換算)であり、第2位の競合であるサークル(Circle)社のUSDコイン(USDC)の3倍以上。

欧州のMiCA規制で戦略変更が必要か

JPモルガンは、欧州の暗号資産市場(MiCA)規制で、ステーブルコインの準備金の60%を欧州の銀行に保管することが義務付けられていると指摘した。

ニコラオス・パニギルツォグルー(Nikolaos Panigirtzoglou)氏率いるアナリストチームは、「テザーの準備金の構成を考慮すると、MiCAの厳しい要件に準拠するためには、準備金管理戦略に大きな変更が必要となる可能性がある」と述べた。

テザー社は、以前から準備金の構成に関する透明性が欠けているとして規制に関する調査を受けてきたとレポートは指摘。「新しい規制によって、テザー社に対し、より詳細な開示と監査を提供するよう圧力が強まるだろう」と述べた。こうした新しいルールに従わないことは、ステーブルコイン市場におけるテザーの支配を脅かす可能性があるという。

米国の法案も問題に

JPモルガンはさらに、アメリカでのステーブルコイン法案はまだ審議中だが、最終的に導入されると(最も可能性が高いのは2025年)、普及が拡大し、ステーブルコインがより主流になると予想されていると述べた。

レポートでは、「アメリカの規制に準拠したステーブルコインは利益を得る一方で、非準拠のステーブルコインにとっては課題となり、業界内での統合につながる可能性がある」とされている。

しかし、テザー社はJPモルガンの主張に反論し、MiCAが長期的に業界に与える影響についてテザー社は楽観的な姿勢を維持していると述べた。テザー社の広報担当者はCoinDeskに対し、「こうした規制の影響は、すべてのステーブルコイン発行者に影響を与えるものであり、徐々にあらわれると認識している。しかし、規制の特定の側面は課題をもたらしている。ステーブルコイン発行者の役割を複雑にし、EUライセンスを持つステーブルコインの運用リスクを増加させる可能性がある。テザー社は、ステーブルコイン規制はシステミックリスクをもたらすのではなく安全性の向上を確保するものでなければならないと固く信じている」と述べた。

ウォール街の企業の見方を批判

テザー社はまた、JPモルガンのようなウォール街の企業がデジタル資産セクターをどのように見ているかについても批判。広報担当者は、「JPモルガンのアナリストらは我々の業界の仕組みについて根本的な誤解をしているようだ。テザー社はプロセスとリスク管理手順について非常にオープンだ。最近の歴史で伝統的な金融機関がどうであったかが示されたが、それよりも安全で、透明性が高く、より安心であることを証明している」と述べた。

テザー社は、「JPモルガンがテザー社の利益率を羨ましく思い、暗号資産分野で追いつこうと必死になっていることは確かだが、テザー社は世界中の3億5000万人の顧客にサービスを提供し、未来の貨幣を形作ることに専念している」と述べている。

|翻訳・編集:林理南
|画像:テザー社CEO(Tether)
|原文:Stablecoin Regulations Could Pose Problems for Tether, JPMorgan Says; USDT Issuer Claims Sour Grapes