DMM.com(以下DMM)、DMM Crypto、Progmat, Inc.(以下Progmat社)は8月23日、ステーブルコインの発行に向けた共同検討の開始を発表した。ステーブルコインの発行・管理基盤には、Progmat社の「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を活用する。
共同検討では、DMMグループが構想しているデジタル経済圏「Seamoon Protocol」において、独自暗号資産(仮想通貨)の「Seamoon Protocol(以下SMP)」と合わせて、独自ステーブルコインを発行し、2つを一体的に活用することでトークン経済圏の拡大を目指すという。今後、2024年度内の発行を目標に、テストネット上で発行・検証を開始する。
DMMは、Web3事業子会社DM2C Studioを7月30日付でDMM Cryptoに社名変更。その後、DMM Cryptoは今、Web3で最も注目のテーマ「DePIN(分散型物理インフラ)」のトップランナーと称される米ハイプマッパー(Hivemapper)との提携を発表するなど、Web3への注力を強めている。
また、これらの動きに先立って、2023年12月には独自トークンを軸としたWeb3経済圏の構築を謳うWeb3プロジェクト「Seamoon Protocol」のホワイトペーパーを公開している。「Seamoon Protocol」は、DMMグループの特長である広範なエンタメサービス群をラインナップするプラットフォームが特長で、決済手段として独自暗号資産「SMP」を使用していく。
Web3経済圏における独自ステーブルコインの意味
だが「暗号資産は柔軟な発行や流通が可能で拡大がしやすい一方、価値の安定が難しいという特性」を持っている(リリースより)。「Seamoon Protocol」のWeb3経済圏が成長・拡大していけば、独自暗号資産「SMP」が積み上がり、いわゆる「トレジャリープール」が大きくなっていくが、暗号資産である限り、その価値の安定性は相対的に低くなる。例えば、Web3経済圏そのものは順調に回っていても、何らかの外的要因でSMPの価格が下落した場合、土台が揺らいでしまうことになる。
そこで、トレジャリープールの運用を独自ステーブルコインで行おうというのが、今回の検討のフェーズ1としてあげられている。
例えば、ステーブルコインではなく、法定通貨で運用すれば安定性は確保されるが、Web3/ブロックチェーンの特性である透明性は低くなる。もちろん第三者による監査は可能だが、四半期に一度などになってしまう。ステーブルコインであれば、誰でも外部から残高をチェックすることができ、経済圏の安定性を確認できるというわけだ。
さらにフェーズ2では、DMMグループでの企業間決済や、DMM Cryptoと取引企業の決済などへの活用。フェーズ3では、取引先企業間での決済やユーザーの決済への活用も想定されている。
Web3ビジネスを手がける企業にとって、トークノミクスの拡大は重要なポイント。さらにその安定性を見据え、独自ステーブルコインの活用を検討する今回の取り組みは、ステーブルコインのユースケースを新しい視点から切り拓くものと言える。
DMMグループで暗号資産取引サービスを運営しているDMM Bitcoinは5月31日、482億円相当のビットコインが不正に流出したことを報告している。その後、DMM.comの会長兼CEOの亀山敬司氏は7月31日にNewsPicksを通じて同メディアの有料会員のみに「『ビットコイン480億円盗難事件』について話します」としてインタビューに答えているが、同氏の報告内容は一般に公開されていない。
なお昨日、日経新聞は三菱UFJ信託銀行とProgmat社がエンターテインメント企業と連携して、ステーブルコイン発行を検討していると伝えている。
|文:増田隆幸
|画像:リリースより