デジタル資産を守る堅牢なシステムを構築するには

ブリッシュ(Bullish)のカストディ・エンジニアリング・ディレクターであるモハメド・ナウマン( Mohammad Nauman)氏が、プライベートブロックチェーン、スマートコントラクト、および特化型オラクルなど、安全で効率的なデジタル資産カストディ・インフラを構築する際に考慮すべき重要な要素について解説する。

プライベートブロックチェーン

急速に進化するデジタル金融環境において、デジタル資産のセキュリティは最重要課題である。カストディ・エンジニアリングの専門家として、デジタル資産を効果的に保護する洗練されたカストディ・アーキテクチャ構築に向けて重要な検討事項をいくつか紹介したい。

堅牢なカストディ・ソリューションには、保管された価値についてのセキュリティと整合性を確かなものとするべく、高度なテクノロジーを検討する必要がある。選択肢の1 つは、プライベートかつ許可型のブロックチェーンだ。これは、取引の整合性と監査のバックボーンとして機能し、資産の移動を追跡する上で信頼性の高いメカニズムを提供してくれる。このようなブロックチェーンの設計により、取引が監査可能かつ変更不能であることが保証される。これは、信頼とセキュリティを維持するために不可欠なものである。単純なデータベースでもこれらの機能の一部を提供できるが、プライベートブロックチェーンはすぐに使用できる状態で提供され、セキュリティ、透明性、信頼性が向上する。

プライベートブロックチェーンを使用することには、いくつか戦略的な利点が挙げられる。暗号証明によってセキュリティを強化し、取引とブロック署名の承認を要求する。これにより、すべての操作が追跡可能で改ざんから保護され、資産の保護に不可欠な安全なインフラが確立される。各取引は、安全なインフラ内で厳密に管理されている秘密鍵によって承認され、暗号的に証明可能な状態を確立する。

プライベートブロックチェーンはゼロ・トラスト・モデルで動作し、すべての取引、ブロック、署名を個別に厳密に検証する。この広範な相互検証によって包括的なセーフティ ネットが形成され、すべての操作が最高のセキュリティ標準に準拠していることが保証される。すべての取引は変更不能かつ永続的に記録されるため、開始から実行まで完全な追跡が可能になり、規制遵守と運用監査がサポートされることとなる。

スマートコントラクト

スマートコントラクトは、もう 1 つの重要なテクノロジーだ。こうしたコントラクトは、セキュリティ プロトコルを自動化して適用し、特定の条件下で自動的に実行される。この自動化により、定義済みのルールへの一貫した準拠が確立され、人為的なエラーの可能性が低減され、プロセスが合理化され、運用のスケーラビリティが向上する。

さらに、プライベートブロックチェーン上のスマートコントラクトは、決まった形で取引を実行し、一貫して予測可能で信頼性の高い結果を生みだす。この一貫性は、コアビジネスプロセスの整合性を維持するために不可欠であり、監査と規制コンプライアンスに必要である反復可能な検証プロセスをサポートするものとなる。

ハードウェア・セキュリティ・モジュール (HSM)、マルチパーティ・コンピューティング (MPC)、およびセキュア・コンピューティングを採用すると、内部の共謀と外部攻撃の両方に対する強力な防御が提供される。この方法は、単一の当事者が完全な権限を持たないようにすることで取引に関する署名のセキュリティを強化し、資産に対する制御を分散化することでより一層のセキュリティを加えてくれる。

オラクル

さらに、外部データソースとの安全なインターフェイスが可能な特殊なオラクルを組み込むことも重要となる。こうしたオラクルは、コンプライアンスと運用データをリアルタイムで検証し、現在の規制と市場状況との整合性を提供してくれる。たとえば、AML (マネーロンダリング防止) オラクルは、コンプライアンスシステムとシームレスに統合して取引を監視および検証することで、厳格なコンプライアンス標準を維持できる。

人工知能 (AI) は、カストディ・システムの効率と応答性を大幅に向上させる。機械学習による従来の異常検出を乗り越えて、生成AIはテストの自動化に活用でき、効果的なユニットテストと統合テストを作成する機能の向上が可能となる。この AI の応用により、開発プロセスの早い段階で品質保証が変わり、ワークフローにさらに深く統合され、効率性の向上と開発者にとってのエクスペリエンスの向上が期待できるのだ。

こうしたテクノロジーの継続的な開発と最適化は、堅牢なカストディ環境を維持するために不可欠である。これらの要素を理解して統合することで、企業は業界の新たなベンチマークとなる、安全で効率的なデジタル資産カストディ・ソリューションを構築することが可能となる。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Shutterstock
|原文:Building Robust Digital Asset Custody Solutions: Key Considerations