FRB理事、リブラの脅威とデジタルドルの議論に言及「成功し過ぎる可能性がある」

米連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード(Lael Brainard)理事は10月16日(現地時間)、フェイスブック(Facebook)の主導する仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」はローンチ前に多くの規制上のハードルを乗り越える必要があると述べ、リブラに対して厳しい批判を展開した。

ワシントンD.C.で開かれたフォーラム「The Future of Money in the Digital Age」でのスピーチの中でブレイナード理事は、最善の場合でもリブラの2020年のローンチを遅らせる可能性のある複雑な規制上の問題をグローバル・ステーブルコイン・プロジェクトがいかにして引き起こし、そして、もし問題を解決できなければ、消費者と国際的な銀行秩序を高いリスクに晒しかねないかについて述べた。

問題? ステーブルコインは成功し過ぎる可能性がある──もしかしたら中央銀行が発行する通貨通貨のライバルになるほどに。

「国内の家計と企業の多くが支払い手段としてだけではなく、価値の保管手段としてもグローバル・ステーブルコインに依存するようになれば」、中央銀行のバランスシートに影響を与える可能性があるとブレイナード理事は指摘した。

「世界人口の3分の1」にあたるフェイスブックの膨大なユーザー基盤に直接アクセスできるリブラは、そうした事態を引き起こすユニークなポジションにあるとブレイナード理事は述べた。リブラは、フェイスブックを利用していない人も利用できる計画であることを考慮すると、リブラがアクセスできる人数はおそらくさらに多くなる。

しかし、そうした潜在ユーザーすべてにとって、規制によって答えが出るかどうか、ブレイナード理事は疑問を投げかけた。

消費者はデジタルウォレットの権利を理解していないかもしれないとブレイナード理事は述べた。また、預金の保証から、詐欺に対する金融機関の責任まで、伝統的な銀行口座に関する消費者保護のためのファイアウォールを築いた規制当局も理解できていない。

「リブラでも同様の保護施策が整備されるのか、あるいは消費者がどのような償還請求権を持つのかが不透明なだけではなく、消費者はステーブルコインの原資産に対する権利を持つことにはならない可能性があるため、どれほどの価格リスクに晒されるのかさえもはっきりしない」

「法定通貨のバスケットに曖昧に連動する」というリブラの計画は、さらに問題を複雑にする。なぜなら、ユーザーやコインの保有者がこれらの原資産にどのような権利を持っているかは不透明だから。

ブレイナード理事は次のように締めくくった。

「フェイスブックのリブラが政治家と当局からハイレベルの監視の目を向けられていることは驚くべきことではない」

デジタルドルの議論

ブレイナード理事は、FRB内部で「活発に」議論されていることにも触れた。アメリカが「中央銀行デジタル通貨」、つまりデジタルドルを発行するメリットについてだ。

過去にアメリカ政府が裏付ける仮想通貨の必要性を軽視する発言を行ったブレイナード理事は、その立場をとり続けた。金融政策への影響、運営上のセキュリティリスク、金融安定への脅威などの多くの問題について、さらにはユーザーのプライベシーへの影響についても、同様の立場を取り続けた。

「(デジタルドルが)財務上の透明性を持ち、違法行為に対する予防手段をもたらすものであれば、消費者が利用する中央銀行デジタル通貨はもしかしたら、デジタル通貨を使用したすべての支払いデータの運用記録を保持することを中央銀行に求める可能性がある── 例えば、それが現金とはまったく異なる点だ」

しかしブレイナード氏は、FRBはデジタルドルのメリットとデメリットについて検討を続けると述べた。ワシントンD.C.の南西1500マイルでも別の連邦準備銀行首脳、ダラス連邦準備銀行のロブ・カプラン(Rob Kaplan)総裁が同日、同じことを語った。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Federal Reserve image via Shutterstock
原文:Fed Governor Brainard Identifies Libra Threat, Says Regulatory Hurdles Abound