Telegram、ネガティブなニュースがありつつも暗号資産の普及をけん引

Telegram(テレグラム)のトンコイン(TON)による普及ストーリーは、最近のニュースで多くの人がネガティブな印象を持ったにもかかわらず、今後も続く可能性がある。元CoinDeskのジャーナリストで現在はThe Open Network(TON)エコシステムのノンカストディウォレット、Tonkeeper(トンキーパー)の最高戦略責任者ダニエル・カウリー(Daniel Cawrey)氏は語った。

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Telegramが長年貫く、開かれた姿勢と言論の自由の精神(これは、同社の紙飛行機のロゴに表されている)が原因で、同社およびCEO のパベル・デュロフ(Pavel Durov)氏は法的な問題に直面した。しかし、Telegramが実現するグローバルなデジタルの自由が今、暗号資産のリアルな普及も促進していることを忘れてはならない。

もしご存じないなら聞いてほしい。Web3──ユーザーは、暗号化、ブロックチェーン、デジタル資産によってデジタル・オーナーシップを持つことができるというアイデアダーは、Telegram上で大規模に実現している。Web3は今や誰のスマートフォンでも利用できる。Telegramを取り巻く直近のニュースはほぼネガティブなものなので無視されがちだが、これはきわめてポジティブな展開だ。

暗号資産決済を実現

Telegramが暗号資産の普及を切り開いたのは、TONブロックチェーンの台頭によるものだ。9億5000万を超えるユーザーを抱えるTelegramは、世界で最も人気のあるメッセージングアプリでありデジタルコミュニティのひとつだ。TONブロックチェーンは、2020 年、SEC(米証券取引委員会)の強制措置に直面したが、その後、コミュニティのサポートによって復活し、現在の活況に至った。

この背景には何があるだろう? 答えは、Telegram(プロトコル関連の業務を行うTON財団とは別の会社)が、アプリにTONブロックチェーンを統合しことだ。アプリ内広告やステーブルコイン向けのトンコイン(TON)決済が2024年4月に利用可能になった。

[TONブロックチェーンの取引件数:TON Stat]

こうした暗号資産フレンドリーな機能がTelegramに追加されてから、取引数を見ると、TONブロックチェーンの利用は増加している。データサイトのTON Statによると、2024年4月に決済およびステーブルコインが利用可能になって以来、TONのオンチェーン取引は1日平均350万件を超えている。

Web3を解放

Web3テクノロジーにより、銀行のような仲介者が金融アクセスを制限するようなことはなくなり、スマートフォンを持つ誰もが利用できるようになる。これがWeb3のコンセプトを力強いものにしている理由だ。Web3によって、金融サービスを利用できなかった多くの人たちに利用の道が開かれる。

Telegramの「ミニアプリ」(アプリに含まれるサードパーティソフトウェア)は、TONの取引の大きな原動力だ。ユーザーは、さまざまなミニアプリゲームに参加することで、交流し、競争し、報酬を得ている。例えば「Lost Dogs」と名付けられたプレイ・トゥ・アーン(P2E:Play to Earn)ゲームは、2024年8月末に発生した1350万を超える取引の急増(上記グラフを参照)に貢献した。

これは、いわゆる「エアドロップハンター」や投機目当ての資本が参加したものではない。多くの普通のユーザーがゲームにアクセスしたいから、楽しみたいからアクセスしている。確かにLost Dogsのようなゲームは革新的なものではないだろう。しかし、こうしたゲームが経験している数百万のエンゲージメントは、Web3が実現し、Telegramがその重要なルートとなっている証拠だ。

TONは、「ワークチェーン」を使用して大量の取引を処理する独自の設計により、ほとんどのブロックチェーンよりも高いスループットを持つ。しかし、Lost DogsのDOGSトークンのエアドロップの最中、古いハードウェアを使用しているTONのバリデーターは稼働を維持できず、2度の停止につながった。この経験は、大量の消費者をオンボードするために必要な負荷(およびバリデータールールの改訂)についてのインサイトにつながった。

マスアダプションには、暗号資産のスケーリングに伴う独自の問題がつきもので、この業界で長く働く人々は、この問題を以前から認識していた。何百万ものユーザーに対応するための技術的なスケーリングは、成長を妨げる大きな要因となっていた。だが、TelegramとTONはそれを変えた。

Telegramネイティブから暗号資産ネイティブへ

TelegramエコシステムのLost Dogs、Hamster Kombat(ハムスター・コンバット)、イーロン・マスク氏をテーマにしたX Empire(エックス・エンパイア)などのゲームは、何百万もの人々を暗号資産の世界に引き込んでいる。多くのユーザーはそれに気付いていないか、気に留めていない。ゲームで人々の注目を集めることは革新的なことではない。しかし、Telegramゲームは、最初に大げさな暗号資産のコンセプトを持ち出すことなく、マスアダプションのきっかけとなっている。世界のほとんどの人は、秘密鍵、ガス代、ステーキングといった複雑で、難しい仕組みを気にしていない。

そして、それはまったく問題ない。なぜならミニアプリのユーザーの大半は暗号資産ネイティブではなく、Telegramネイティブだからだ。ユーザーはスマートフォンを使ってTelegramで友人と話し、グループを通じて好きなトピックの最新情報を入手し、ミニアプリゲームをプレイする。その後、人気ゲームは「エアドロップ」のステージを迎え、ユーザーは獲得した報酬を受け取ることになる。

|翻訳:T.Minamoto
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:Telegram Is Driving Crypto Adoption, Despite Bad News