ソーシャルメディア大手であるフェイスブック(Facebook)のCEO、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏は2019年10月17日(現地時間)、ジョージタウン大学(Georgetown University)でのスピーチで、表現の自由の重要性を訴えた。
「(インターネットは)以前には共有が不可能であった物事を、可能にしています」とザッカーバーグ氏は述べた。しかし「自分が受け入れられない政治的な展開に繋がり得るために、より多くの表現を危険なものだとみなそうとする人々が、分野を問わず見受けられます」と、ザッカーバーグ氏は続けた。
表現の自由と検閲への抵抗は、仮想通貨推進派にとって神聖なものかもしれない。しかしザッカーバーグ氏は、自身の表現の自由に関する懸念と、フェイスブックの仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」を関連付けたり、完全に急進的な立場を主張することはなかった。
ザッカーバーグ氏は、表現への一定の制約は常にアメリカの政治風土の一部であったことを認めながらも、そのような制約が可能な限り少なく、決断が民間企業の手に委ねられていないような状況を求め、次のように述べた。
「結局のところ私は人間を信頼しているので、人々に発言のチャンスを与えることに賛成です」
それでもザッカーバーグ氏は、今のところ、許容できる規範を決定する上でフェイスブックが力を持ちすぎていることを認めた。「我々の行う意思決定の多くは、人々の発言する力に影響します」と同氏は認め、次のように付け加えた。
「正直に言えば、人々の表現に関して、弊社が自分たちでそんなに多くの決定を下すべきではないと考えています」
フェイスブックが始動させたリブラが、ザッカーバーグ氏の発言とどのようにかみ合うのか興味を持っていた人は、今回のスピーチにがっかりさせられた。ザッカーバーグ氏は、仮想通貨についてのフェイスブックのビジョンを語ることはなかった。同氏はまた、同社による2019年の年次F8開発者カンファレンスで触れた、暗号化やプライバシーといったテーマに触れることもなかった。
発言者の身元認証
フェイスブックの最初のバージョンはザッカーバーグ氏自らがコードを書いていたのは有名だが、そのような同氏は、同社のプラットフォームが悪用されることについての最悪なパターンについては、技術的解決策が防御策となり得るし、すでにそうなっていると示唆した。
特に、堅固な身元認証システムが、危険な表現や誤情報の爆発的な広がりの大半を抑えることができることにフェイスブックは気付いた、とザッカーバーグ氏は述べ、次のように続けた。
「ここでの解決策は、情報や発言が多く拡散されている人物の身元を認証すること、そして偽のアカウントの特定、削除をより上手く行うことなのです。フェイスブックでは現在、ユーザーが政治的広告を行いたい場合には、政府発行の身分証明書の提供と、居住地の証明を要件としています」
ザッカーバーグ氏は、機械学習やその他戦略を用いることによって、そして一部には偽ユーザーの「クラスター」を発見することによって、フェイスブックは毎年開設される何百万もの偽アカウントを無効にすることができると指摘した。
「望めば物議をかもすようなことを言うことはできますが、本当の身元によって、それらの発言に責任を持たなければなりません」とザッカーバーグ氏は述べた。
ザッカーバーグ氏は、表現の自由を守るアメリカ合衆国憲法の修正第1条を称賛し、それは他国、特に中国の考えてとはまったく対照的なものである、と述べた。
「この問題は、どの国の価値観をとるかで、これから何十年も先までどの表現が許されるかが決まるということなのです」とザッカーバーグ氏は述べ、次のように締めくくった。
「特定の問題についてどこで線引きを行うかについては、意見を異にするかも知れませんが、少なくとも反対することはできます。それが表現の自由というものです」
翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Mark Zuckerberg speaks at Georgetown University, Oct. 17, 2019, screenshot via Facebook Live
原文:What Facebook CEO Mark Zuckerberg Said in His Defense of ‘Free Expression’