ブロックチェーン技術を利用して新鮮なホタテの原産地を追跡するため、IBMと連携している海産物工場がある。
マサチューセッツ州のフォール・リバー(Fall River)に工場を構えるロー・シーフーズ(Raw Seafoods)は、小売業者とサプライヤー間で食品を追跡するためのデジタルシステム、IBMフード・トラスト(IBM Food Trust)と協働している。
IBMは、ダニー・アイラーステン(Danny Eilersten)船長の所有するホタテ貝漁船の一団が、地元の漁場で捕まえた毎回の漁獲のデータをブロックチェーンプラットフォームにアップロードすると発表した。
アイラーステン船長の漁船がホタテを捕まえると、システムがその重さ、漁船の経度、緯度、船名、そしてホタテが捕まえられた時間を記録し、衛星を通じてIBMのブロックチェーンにそのデータを送る。それから船上の漁師がホタテを袋に保管し、同じ情報にリンクしたバーコードを貼り付ける。
このプロジェクトではさらに、流通業者、サプライヤー、小売業者とも、漁船が港に着いた時、ホタテの各ロットが手作業で等級付けされ、選別され、梱包され、最終目的地まで配送された時のデータをシェアする。ロー・シーフーズは11月に、顧客がホタテの原産地情報にアクセスすることを可能にするモバイルアプリを始動する計画である。
「我々は、消費者が食べている海産物をもっと信頼できるようにする青写真を掲げているのです」と、ロー・シーフーズのマーケティング担当バイスプレジデントのダニエル・マクエード(Daniel McQuade)氏はCoinDeskに語り、次のように続けた。「レストランと市場におけるシーフードへの恐怖感を取り除こうとしているのです」
国際海洋保護団体オセアナ(Ocena)は先日、原産地の信ぴょう性を確かめるために、アメリカの250の原産地からの400の海産物のサンプルを試験した。その結果は20%が虚偽の表示であるというものだった。アメリカで消費される海産物の大半を占める輸入物は、虚偽の表示をして海産物を売り、より高い利益を得ることができるため、不当表示の可能性がより高いのかもしれない、とマクエード氏は指摘した。
ロー・シーフードのプロジェクトには、海産物流通業者のサンタモニカ・シーフーズ(Santa Monica Seafoods)、さらにカリフォルニア州オレンジ郡のTAPS Fish House and Breweryやサンタモニカ・シーフーズ・マーケット&カフェ(Santa Monica Seafoods Market & Cafes)などのレストランも参加している。IBMフード・トラストは2018年10月のローンチ以来、そのブロックチェーンには170社が参加し、約1700万件のトランザクションを実行してきた、とIBMフード・トラストの商品・サービスディレクターのスザンヌ・リビングストン(Suzanne Livingston)氏は語った。
漁船は法律によって、漁に出かけた時、陸揚げした漁獲量、港へ寄港した時を記録することが義務付けられており、分散型データベース技術がふさわしい。さらにIBMフード・トラストシステムによって、ロー・シーフーズは競りや倉庫からではなく、漁師から直接海産物を買うことが可能になる。ロー・シーフーズのアプリがローンチしたら、漁師は消費者に向けてデータとともに画像や動画も送ることができる。
マクエード氏は、漁場が需要と供給をマッチさせて、ホタテの在庫をより効果的に管理することにもシステムがひと役買うことを願っている。
マクエード氏は次のように述べた。
「政府は、漁船が1年に何日漁に出られるのか、どの海域で漁ができるのかを規定します。我々は、小売店が11月と12月に非常に忙しくなることを知っています。漁船のオーナーのところに行って、『6月と7月にすべての規定の漁回数を使い果たしてしまうのではなく、その一部を残しておくように』と伝えていきます」
翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真:Scallops image via Shutterstock
原文:Shellfish Plant Is Putting Scallops on IBM’s Food Tracking Blockchain