予測市場Kalshi、米選挙をこれ以上扱えないと「壊滅的」──敗訴したCFTCの待機要請に反論

規制当局との訴訟で勝訴して間もない、米国の予測市場プラットフォームであるカルシ(Kalshi)は、米国時間11月5日の米国民による投票までにまだ時間がある内に、選挙にベットする案件を提供できるかどうかが自社の将来を左右すると述べた。

ニューヨーク拠点で、米国内でのみ事業を行う同社は、米国時間9月8日の裁判所への提出書類で、類似案件の提供をさらに14日間禁止するという米国商品先物取引委員会(CFTC)による緊急要請に反対した。この要請は「根拠がない」と同社は述べ、もしそれが認められれば同社に「取り返しのつかない損害」をもたらすだろうと主張している。

「この遅れは、当局が確実に次の遅れ、さらに次の遅れへとつなげ、手遅れになるまで続けようとするだろう。この訴訟と市場に将来を賭けているカルシにとって壊滅的だ」と同社はコロンビア特別区連邦地方裁判所に対して述べた。

昨年、CFTCは同社に対し、選挙後にどの政党が議会の各院の過半数を獲得するかに関する案件の提供を禁止した。当局は、そのような案件の契約は違法な賭博に相当し、「公共の利益に反する」と述べた。同社はその後、当局の決定を「恣意的かつ気まぐれ」だとして起訴に至る。

カルシの勝訴

米国時間9月6日に下された判決で、ジア・M・コブ(Jia M. Cobb)判事は同社側に与したが、その理由は示さなかった。同判事は、その後の判決で詳しく説明すると述べたが、それがいつ公表されるかについては言及されなかった。

同社はウェブサイトで「朗報! 米国の選挙市場がカルシに登場する」と、勝ち誇ったように謳った。

数時間後、CFTCは判事に対し、意見発表後の14日間、命令を延期するよう求める緊急動議を提出した。同局は、判事の根拠が分からないため、この決定に控訴すべきかどうか判断できないと述べた。

延期が認められれば、カルシは早くても9月下旬まで選挙市場を提供できないことになる。米ドルで取引を決済する同社は、今年の選挙ベッティング・ブームから締め出されている。

「CFTCは、法律に基づいて正々堂々とした議論の結果、負けたのである」とカルシは米国時間9月8日の提出書類で述べている。「時間稼ぎすることで、CFTCが敗北の危機から手続き面で勝利を奪い取ることは許されない。」

その他の予測市場プラットフォーム

カルシは米国で唯一 CFTC の規制を受ける予測市場である。米国の学生のテストの点数が上がるか下がるかといったことから、今年のビットコインがどれだけ高騰するかまで、さまざまなイベントに関する案件を掲載している(取引はドルで決済される)。

同じく法定通貨で賭け金を決済し、米国でより歴史の長いサイトであるプレディクティット(PredictIt) は、狭い規制免除の下で選挙を対象とした案件を掲載している。予測市場と暗号資産(仮想通貨)の両方で今年大成功を収めたポリマーケット(Polymarket)は、CFTC との和解の結果、米国居住者との取引を禁じられている。

それでも、カルシは、プレディクティットおよびポリマーケットが「法を遵守するカルシの犠牲のもと、市場シェアを蓄えてきた」と米国時間9月8日に裁判所に対して主張している。

「カルシが訴訟手続きが完了するのを待っている間に、ポリマーケットのような規制されていない事業体​​がその時間を活かして市場を支配してきた」とカルシは述べた。 「これ以上の遅れをとることは、カルシがこの分野で意味のある競争をすることを不可能にする可能性がある。」

CFTCの反論

米国時間9月9日の提出書類で、CFTCは「カルシが同社取引所に何百もの他の非政治的イベント案件を旺盛的に提供していることを考えると、この主張は疑わしい」と述べた。

問題となった選挙に関する案件では最大1億ドル(約142億円、1ドル=142円換算)のポジションが認められることに言及し、CFTCは「選挙賭博は選挙の公正性およびそれに対する認識に脅威的」という懸念を繰り返した。

時間稼ぎだとする物言いに関して、当局は、延期の要請は「このような事件を秩序正しく管理するための通常の手段」であると述べた。

CFTCは、カルシが「さらなる自己認証(または、CFTCの申し立てへの回答またはその他の方法で裁判所に通知すること)なしに、選挙に関する契約を間もなく提供する意図がある可能性がある」と考えていると述べた。自己認証とは、CFTCの規制対象事業体が、当局の事前承認なしに商品を提供する手順である。

「CFTCの違法な命令が発令されていた1年以上もの間、国民はすでにこうした恩恵を受けられなかった」とカルシは米国時間9月8日に述べた。「そして選挙まであと60日を切った今、こうした恩恵が実現するのにこれほど重要な時期はない。」

カルシの計画に反対するロビー団体ベター・マーケッツ(Better Markets)は、米国時間9月6日にカルシに有利な判決を下した判事の判決を「米国の選挙で賭博を認める危険な一歩であり、民主主義と市場の健全性を脅かすものだ」と呼んでいる。

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Mark Van Scyoc / Shutterstock.com
|原文:U.S. Election Betting Delay Would Be ‘Devastating’ to Kalshi, Firm Says