エセナのステーブルコイン「USDe」需要低迷で時価総額1400億円減もドルペッグは堅守
  • エセナ(Ethena)のUSDeトークンの時価総額は、需要が低迷したため、36億ドルから27億ドルを下回った。
  • 同プロトコルは、ビットコインとイーサリアムのデリバティブを「キャリートレード」で空売りすることで投資家に利回りを生み出しているが、資金調達レートは過去数週間でマイナスに転じている。
  • それでも、同トークンの価格は、下降スパイラルの初期の懸念に反して、巻き戻し中に1ドル前後で安定していた。

今年、36億ドル(約5112億円、1ドル=142円換算)超の資産を擁するまでに急騰した、利回り付きの暗号資産(仮想通貨)プロトコルであるエセナ(Ethena)は、暗号資産市場が冷え込み、投資家が合成ドルのトークンUSDeを裏付けていた資金を引き揚げたため、最大の試練に直面した。それでも、USDeは1ドルのペッグを維持した。

DefiLlamaのデータによると、このプロトコルは7月以来、約10億ドル(約1420億円)の流出に耐えてきた。これは同トークンの供給量が27%減少したことを意味する。同プロトコルのガバナンストークンであるエセナ(ENA)は、4月の高値から85%下落している。

この下落は、USDeの利回りの主要な源泉となる暗号資産永久先物の資金調達率が過去数週間でほぼゼロに低下した動きと一致している。3月には年間40%~70%に達していた。

「資金調達率の低下は、USDeを保有してステーキングする魅力が低下する」と、クリプト・クオント(CryptoQuant)のアナリスト、フリオ・モレノ(Julio Moreno)氏はCoinDeskとのインタビューで述べた。

USDeはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を裏付け資産として用い、取引所における同等な価値の永久先物のショートポジションと組み合わせる。永久資金調達率は通常プラスであり、これはエセナのUSDeが裏付けのデリバティブ資産で収益を生み出していることを意味する。

「USDeが直面する最も重要なリスクの1つは、永久先物市場における継続的なマイナスの資金調達率という環境だ」とモレノ氏は述べた。「このシナリオでは、エセナはショートポジションをオープンに保つために資金調達について払う必要がある。」

DefiLlamaによると、USDeに提供される利回りは、3月のピーク時の50%を超えてから4.4%に急落した。これは、バニラマネーマーケットファンドやその他の債券を裏付けとするデジタルトークンオファリングなどの低リスクの投資よりも低いものとなる。

価格の安定性

懐疑的な立場からは、エセナのモデルについて懸念が示され、破綻したステーブルコインプロジェクトであるテラ(Terra)とルナ(Luna)に例えられた。テラのアルゴリズムステーブルコインは、成長が果てた後、2022年5月から悪循環に陥り、暗号資産の厳しい冬の時代を招いた。

現在の不利な市場環境と大量の流出は、同プロトコルの安定性を証明する機会ともなった。

「過去数か月間に起きた市場における複数の大きな局面を、どうエセナが乗り越えていったかについては、満足している」と同プロトコルを開発するエセナ・ラボ(Ethena Labs)の共同創業者兼CEOであるガイ・ヤング(Guy Young)氏は述べた。「ストレステストには常にさらされてきており、これまでのペースで永久に成長し続けるのは明らかに不可能だ。」

USDeの価格は、流出の間も1ドルのペッグで安定しており、その後の引き出し需要を満たすための取引ポジションの解消は「すべて秩序正しく行われ、米ドルペッグにおいて問題はまったく発生しなかった」とヤング氏は付け加えた。

エセナは、必要に応じて資金調達レートを支払うために、準備資金と呼ばれる「雨の日(rainy day)」基金を維持している。

同プロトコルのリスクを最小限に抑えるために、準備金は少なくともUSDe供給量の1%である必要があると、モレノ氏は述べた。

「現時点ではこれが当てはまり、準備金は4500万ドル(約64億円)で、現在のUSDe時価総額の約1.6%だ」とモレノ氏は語る。 「投資家は、エセナのリスクを評価するうえで、この重要指標を注視する必要がある。」

|翻訳・編集:T.Minamoto
|画像:Ryan Quintal/Unsplash, Modified by CoinDesk
|原文:Ethena’s Yield Machine Sees $1B Outflows as Crypto Market Cools – But There’s Good News