米商品先物取引委員会(CFTC)のヒース・ターバート(Heath Tarbert)委員長は、仮想通貨業界でイーサリアム先物契約が2020年内に実現すると考えている。
ジョージタウン大学で開催されたDCフィンテック・ウィーク(DC Fintech Week)の初日に行われた歓談セッションでターバート委員長は、司会のクリス・ブルマー(Chris Brummer)氏に対し、イーサ先物取引がこれから6〜12カ月の間に「間違いなく」実現する可能性があると述べた。
「先物契約がこの先6カ月〜1年の間に実現する可能性が高いと思います」とターバート委員長はブルマー氏に語ったが、先物契約を単にローンチすることは、最大の目的でも最も大切なことでもないと戒めた。ターバート委員長は次のように続けた。
「取引量の規模についてはまったく分かりません。それは市場が決めることですが、少なくとも我々が(中略)(イーサの先物契約への適性について)幾ばくか明確にしたので、私の推測では、市場参加者たちはそのことを考慮するだろうと思います」
ターバート委員長は2019年10月、初めてイーサをコモディティと呼び、CFTCは時価総額ベースで世界第2位の仮想通貨イーサの先物契約を承認することは厭わないと表明した。
しかし、アメリカ市場へ、イーサ先物契約を提供することに実際に関心を持つのは誰なのかというのはいまだにはっきりしていない。ステージを降りた後にレポーターの取材に応じたターバート委員長は、少なくとも自身の知るところでは、そのような商品のローンチを申請した企業はいない、と指摘した。
誰が申請を行ったかという質問に対して、ハーバート委員長は「私の知るところでは誰もいません」と答え、次のように続けた。「すぐに申請が行われると推測しますが、それが誰によるものになるかは分かりません」
ビットコイン先物契約提供の経験を持つCboeとインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)の広報担当者は、コメントの求めに即座に回答しなかった。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の広報担当者はCoinDesk宛ての声明の中で、同社は「追加の仮想通貨先物を導入する計画はない」と述べた。
「現在我々は、CMEビットコイン先物のオプションを2020年第1四半期に市場に提供すること、そしてCME CF参考基準レート(CME CF Reference Rates)とリアルタイム指数(Real-Time Indices)を継続的に発展させることに重点をおいています」と広報担当者は述べた。
次なるステップ
CFTC側としては、イーサ先物商品の承認は申請次第だと、ターバート委員長は述べた。これらの商品を上場させることを検討する企業は、自社認証を申請するか、CFTCに商品を検討して、承認してもらうことができる。そのプロセスは、ビットコイン先物契約の承認と同様となる。
取引所は「自分たちで始めても、申請書を我々に提出して、(商品の提供を)可能にするために許可を求めることもできます」と、ターバート委員長は報道陣に語り、次のように続けた。
「これまでは、特にまったく新しい取引所やデリバティブ清算組織(DCO)を作り上げる場合には、大半の企業は自社認証を行わず、我々のところに認証を求めてきていました。そのため、取引プラットフォームで展開を望むのがどの企業なのかというところに大きく依存すると思います。長年CFTCと協力してきた既存の取引所なのか、イーサ先物に特化したいまったく新しいプラットフォームなのか」
現状では、デリバティブ商品を検討している仮想通貨専門取引所が4つ存在しており、(ターバート委員長はその名を挙げることはなかったが、おそらくシードCX(Seed CX)、エリスX(ErisX)、タサット(Tassat)(かつてのトゥルーデジタル(trueDigital)、レジャーX(LedgerX)である。)さらに、ビットコイン先物を提供している、より大きく、地位のある企業もデリバティブ商品を検討している、とターバート委員長は述べた。
討論の中でターバート委員長は、願わくは買い手も売り手も、CFTCの規制を受けた取引所を利用することで、市場操作がないと安心できると良いとも述べた。
「我々の市場が150年にわたって行い続けてきたことは、十分な価格上の透明性を確保することです」とターバート委員長は述べ、次のように続けた。「買い手と売り手がいて、価格は実際に本当の総需要を反映するということが分かっているということです」
その他の仮想通貨
CFTCは間もなく、他の仮想通貨もコモディティとして認めるかもしれないと、ターバート委員長は最初の歓談セッションで語った。
「暗号資産の他のデリバティブもお近くの市場に間もなく登場するでしょう」とターバート委員長は述べたが、評価するべき「数千」の仮想通貨が存在することを考慮すると「間もなく登場」というのは相対的な表現だ。ターバート委員長は次のように加えた。
「証券取引委員会(SEC)が独自のプロセスに取り組み、我々は我々独自のものと他の規制当局のプロセスに取り組むため、より多くが登場する可能性は高いですが、観衆の皆さんに、必ずしも間もなく登場すると断言することはできません。我々が検討したビットコインとイーサという2つでも、随分と時間がかかったのですから」
他の先物契約への需要がある可能性はある。イギリスでは、クラーケン・フューチャーズ(Kraken Futures)(かつてのクリプト・ファシリティーズ(Crypto Facilities)が住民に、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、リップルの先物契約を提供しており、それらはすべて、アメリカを拠点とするクラーケンが買収した後に人気を増した。
プロセスの一環は、SECと連携することだターバート委員長は述べ、現在の連邦法では、証券ではない商品はコモディティーである「可能性が高い」と指摘した。(例外も存在する。議会は例えば、映画のチケットはコモディティではないと規定している。)
「(SECが)その分析を行い、特定の暗号資産が、それが投資契約であるのか、そのため証券にあたるのかについての、古くからのハーウィーテストに適合しないと結論づけた場合には、たいていの場合(コモディティの分類に)当たることになる、というのが現状です」と、ターバート委員長は述べた。
ターバート委員長はまた、先例はないかもしれないが、資産は証券からコモディティへと進化したり、その逆もあり得ると述べた。
そのような変質がこれまでに起こったことがあるのかという、キャッスル・アイランド・ベンチャーズ(Castle Island Ventures)のニック・カーター(Nic Carter)氏からの質問に対して、ターバート委員長は次のように答えた。
「私の知る限りではありません」
翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真:CFTC image via Shutterstock
原文:CFTC Chair Says Ether Futures ‘Likely’ in 2020