超富裕層の資産を管理するファミリーオフィスはトークン、AI、ゲームに注目:Family Offices Investors Summit
  • アジア太平洋地域はファミリーオフィス資産の世界的な成長をリードするだろうと、ファミリーオフィス・インベスターズ・サミットの創設者マナナ・サムセバ(Manana Samuseva)氏は語った。
  • トークン市場への参入を狙うスタートアップは、ベンチャーキャピタルから非常に高い評価を受けている。この傾向により、流動性の高いトークンへの投資がますます魅力的になっていると、デルタ・ブロックチェーン・ファンド(Delta Blockchain Fund)のカビタ・グプタ(Kavita Gupta)氏は述べた。
  • ポリマス(Polymath)のトレバー・コベルコ(Trevor Koverko)氏は「ラベルで収益を得る」ことを提案した。
  • Rhinocorn VenturesのCasey Grooms氏は、ゲームについて議論しながら、「未来はクリエイター経済の構築とユーザー生成コンテンツの活用にある」と述べた。

ファミリーオフィスは、オルタナティブ資産への大胆な投資の一環として、流動性の高いトークンへの投資、AI(人工知能)、ゲームにますます注目していることが、今週、シンガポールで開催されたファミリーオフィス・インベスターズ・サミットインベスターズ(Family Offices Investors Summit:FOIS)で明らかになった。

世界には8030のファミリーオフィスがあり、運用資産残高(AUM)は2030年までに189%増の9兆5000億ドル(約1360兆円)に達すると予測されている。

ファミリーオフィスは、超富裕層の個人や家族の流動資産を一括して管理する専用の資金運用サービスで、主な目的は一家の富と遺産を管理し、増やし、守ることにある。最近ではその意味は広がり、複数の一家の財産を管理する組織を示すこともある。

「アジア太平洋地域はファミリーオフィス資産の世界的な成長をリードすると予測されており、シンガポールでの運用資産残高は2025年までに10%増の5兆4100億ドルに達する可能性が高い。この成長の大部分はオルタナティブ投資への純流入によるもので、ファミリーオフィスの37%がデジタル技術の普及に、32%がサステナブル投資に注目している」と、FOISの創設者マナナ・サムセバ氏は語った。

サムセバ氏は、ジェネレーションZの投資家、いわゆる「キッズ・インベスター」は運用資産残高を3000万ドル超に伸ばし、社会の進歩に向けて資本を投入していると述べた。

「AIへの関心の高まりとともに、短期的な利益重視のテクノロジー投資は減速しているが、これらの市場は依然として外部要因に大きく依存しており、アクセシビリティの向上とカルチャー変化に支えられたデジタル資産クラス市場が成熟しつつあることを示している。我々の戦略は、オルタナティブ投資を通じて10倍以上のIRRリターンを実現することに重点を置いている」(サムセバ氏)

流動性の高いトークンへの投資とAI

デルタ・ブロックチェーン・ファンド(Delta Blockchain Fund)の創設者でゼネラルパートナーのカビタ・グプタ(Kavita Gupta)氏によると、流動性の高いトークンへの投資はアーリーステージ投資と比較して、ますます魅力的に見えるという。

「我々はトークノミクスの興味深い局面に立っている。実績のあるプロジェクトを含むアルトコイン市場が低迷しているにもかかわらず、トークン市場への参入を狙うスタートアップは、ベンチャーキャピタルから異例の高評価を受けている。 この傾向により、流動性の高いトークンへの投資はアーリーステージ投資と比較して、ますます魅力的になっており、暗号資産業界における大きな転換点となっている」(グプタ氏)

100社以上のスタートアップを支援し、Polymath、Polymesh、Matador、Tokens.comなどのベンチャー企業を創設し、スケールさせたことで知られる著名なエンジェル投資家のトレバー・コベルコ(Trevor Koverko)氏は、AI(人工知能)の分野で最も成長が著しい分野としてデータラベリングを指摘し、データをラベリングし、配信して稼ぐことができる「ラベル・ツー・アーン(Label to Earn)」グローバルネットワークの構築の必要性を強調した。

Electric Capitalのパートナー、アヴィチャル・ガーグ(Avichal Garg)氏は、ファミリーオフィスは、AI、ディープテック、分散型金融(DeFi)が長期的なイノベーションと成長を促進する可能性をより認識していると述べた。

「我々の焦点は、確かなリターンと変革的なインパクトをもたらすディスラプティブ(創造的破壊的)なテクノロジーときわめて優れた創業者を見つけ出し、支援することにある。2030年に近づくにつれ、テクノロジーと金融の融合は、精通した投資家にとって新たなチャンスを生み出し続けるだろう」(ガーグ氏)

ゲーム

ゲームについては、Rhinocorn VenturesとSoulboundのマネージングパートナー、ケイシー・グルームズ(Casey Grooms)氏は、クリエイターエコノミーの構築とユーザー生成コンテンツの活用に未来がかかっていると述べた。

「我々のミッションは、プレイヤーの獲得とリテンションを再定義することでゲームを変革し、世界中の32億人のゲーマーにリーチし、コミュニティ投資家のための新たな収益パラダイムを確立することだ」(グルームズ氏)

BITKRAFT Venturesのジョナサン・フアング(Jonathan Huang)氏は、ゲームは魅力的なコンテンツとエンゲージメントモデルによって長い間人気を集めてきたが、Web3はさらに一歩進んで、デジタル資産の所有、分散化、プレイヤー主導のエコノミーを促進していると付け加えた。

「Web3は、ゲームにおける価値の創造、共有、保持の方法を変え、ゲームがスケーラブルなデジタル経済となる可能性を解き放つ。つまり、我々はゲームに投資しているだけでなく、デジタル経済の未来と、そうした仮想世界における価値のフローに投資している。それが真のゲーム・チェンジャーだ」(フアング氏)

デジタルアートへの投資について、サザビーズの現代アート・キュレーターとして10年以上の経験を持つアフロデット・ズーリ(Afrodet Zuri)氏は、「投資家は、アートの可能性と文化的意義を受け入れることで、グローバルマーケットに響きわたる新たなデジタル価値と影響力を手に入れることができる」と述べた。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:シンガポールで開催されたファミリーオフィス・インベスター・サミットにて。右端がFOIS創設者のマナナ・サムセバ氏(Manana Samuseva/FOIS)
|原文:Family Offices Investors Summit: The $100M Club Bets on Liquid Token, AI, and Gaming in Pivot to Alternative Investments