カナダ、リテールCBDCから焦点を移す──より広範な決済にシフト
  • カナダはリテール向け中央銀行デジタル通貨から焦点を移すことを発表したが、将来的にそうした製品が必要だと国民が判断した場合には備えているとの姿勢を示唆した。
  • カナダの公共放送局CBCニュースは、中央銀行がデジタルカナダドルの構想を「棚上げしている」と報じた。

カナダは数年間の研究の末、リテール向け中央銀行デジタル通貨(CBDC)から焦点を移す。先週、中央銀行であるカナダ銀行が発表した。

「デジタルカナダドル」というあいまいなタイトルがつけられた文書では、「この作業は完了しており、他の決済に関する問題が重要性を増していることから、当行はリテール向けCBDCに関する作業を縮小し、より広範な決済システムの研究と政策開発に焦点を移す」とされている。

カナダの公共放送局CBCニュースは、「デジタルカナダドルの導入という構想から焦点を移したことをカナダ銀行が確認した」と報じた。また、この記事はカナダ銀行がカナダドルの構想を「棚上げしている」とも指摘した。

銀行の公式声明でリテール向けCBDCの作業を「縮小」し、「より広範な決済」の研究に「焦点を移す」としていることが、リテール向けCBDCの構想を完全に棚上げしたことを意味するのかは明確ではない。

その理由は特に、カナダ銀行が「世界のリテール向けCBDCの動向を引き続き監視し、関連する研究を一部公表する」「デジタルドルの可能性についてカナダ国民が意見を提供する更なる機会がある」とし、これまでに行われた全ての研究が「将来のある時点で、カナダ国民が(中略)デジタルカナダドルを望んだり必要としたりすると決めた場合に、非常に貴重なものとなる」と述べていることだ。

カナダがこのような姿勢を示す中、アメリカでは、CBDCをめぐる議論が大統領選挙の争点となっていた。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル(Jerome Powell)議長が、「CBDCをいかなる形でも推奨する、ましてや採用するところには程遠い」とし、「心配する必要はない」と述べているにもかかわらずだ。

しかし、カナダ銀行の今回の発表は、スタッフ・ディスカッション・ペーパーの発表から3ヶ月も経たないうちに行われたものだ。このペーパーでは、現金は将来的に重要性が低下する可能性が高く、その場合「適切に設計されたCBDCがそのギャップを埋めるのに役立ち」、「経済におけるリテール向け公的通貨の重要性を維持する」とされていた。

2023年末、カナダ銀行はパブリックコメント・ペーパーに対して9万件近い回答を受け取り、その大半にプライバシーに関する懸念が含まれていた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Pixabay
|原文:Canada Moves Away From Retail CBDC, Shifts Focus to Broader Payments