イーサリアムETF、7月以来最大の流出額は機関投資家需要の低さを反映
  • イーサリアムETFは23日に7900万ドル超の純流出を記録、7月以来最大の流出額となった。
  • 流出の大部分はグレイスケールのイーサリアム・トラスト(Ethereum Trust:ETHE)からで、ビットワイズのETHWはわずかだが資金流入となった。
  • FRBによる金利引下げなどのマクロ経済環境の後押しで、イーサリアムが11%上昇したにもかかわらず、ETFからの資金流出は、イーサリアムの将来について、価格と投資家心理に乖離があることを示している。
  • ビットコインの「デジタルゴールド」というストーリーほど、イーサリアムは伝統的な金融投資家には響かないのかもしれないと一部の関係者は指摘した。

イーサリアムETF23日に7900万ドル(約114億円、1ドル144円換算)超の純流出を記録、7月以来最大の流出額となった。イーサリアムに対する機関投資家の需要が低下していることを示している。

7900万ドルの流出額は、7月29日に9800万ドルの流出を記録して以来最大の流出額であり、7月23日に取引がスタートして以来、4番目の流出額となっている(SoSoValueのデータによる)。

23日の流出のほぼすべては、グレイスケール(Grayscale)のイーサリアムETFからだった。ビットワイズ(Bitwise)のETHWは、130万ドル強の流入を記録。その他のイーサリアムETFは、流入も流出も見られなかった。

(SoSoValue)

先週の米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを受けて、イーサリアム価格が先週、11%上昇するなど、暗号資産(仮想通貨)市場が広く上昇したにもかかわらず流出となった。イーサリアムの価格動向とイーサリアムETFの資金フローの乖離は、イーサリアムの長期的な成長見通しに対する投資家の見通しが、依然として不透明なことを示している。

イーサリアム・ビットコイン・レシオは、2021年4月以来の最低水準に低下しており、多くのトレーダーが、よりリスクが高く、高い利回りを生む可能性のあるイーサリアムよりも、ビットコインの安定性が好んでいることを示している。

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Presto Labsのリサーチ部門責任者、ピーター・チョン(Peter Chung)氏によると、イーサリアムブロックチェーンは「ワールド・コンピューター」であるという主張は、ビットコインの「デジタルゴールド」ほど、伝統的金融(TradFi)の投資家には響かないという。

「伝統的金融の投資家は、イーサリアムの投資テーマにビットコインのテーマほど熱狂的には反応しないかもしれない。インフレヘッジとしての金の投資テーマは周知のことであり、したがって、伝統的金融の投資家が『デジタルゴールド』という考え方を理解することはそれほど難しくはない。一方、イーサリアムの『ワールド・コンピューター』は、技術に詳しくない人々にとっては理解がはるかに難しい」

さらに、同氏は「仮に伝統的金融の投資家が考えを変えたとしても、ビットコインETFに次ぐ、2番目のETFへの投資を正当化するには、彼らの確信度がかなり高くなければならない。これは難しいだろう。なぜなら、すでにポートフォリオにビットコインETFを組み入れている人々にとって、暗号資産への投資を追加することは、最初の投資に比べると、分散効果は大幅に少ないからだ」と続けた。

ビットコインは3月、史上最高値を更新したが(その後、20%下落している)、イーサリアムは2021年に記録した史上最高値をまだ更新しておらず、半分程度のレベルにとどまっている。また年初から、ビットコインは50%以上上昇しているが、イーサリアムは15%弱の上昇にとどまっている。

SOFA.orgのインサイト部門責任者、オーガスティン・ファン(Augustine Fan)氏は、FRBのハト派転換を背景にイーサリアムが上昇している一方で、イーサリアムETFからの多額の資金流出は脆弱なセンチメントを示していると指摘した。

「価格上昇が続けば、低迷しているイーサリアムETFへの資金流入は回復するだろうか? その答えは、11月までに株式市場で再び大規模な上昇が見られるかどうかだろう」とファン氏は述べた。

「イーサリアムは、新しい進展がないなか、この1週間で11%上昇した。だがイーサリアムETFからの最近の大規模な流出は、イーサリアムの今後の成長について、投資家には不確かな感情があることを示している」

独立系マーケットアナリストのニック・ラック(Nick Ruck)氏は、最近の流出はイーサリアムの成長シナリオについての広範な悲観論と関連している可能性があると指摘した。

「イーサリアムETFからの流出の増加は、イーサリアムに対する悲観的な見通しが続いているため、投資家が資本を他に振り向けていることによるもので、現在のイーサリアム価格の上昇は市場から撤退する好機だ」とラック氏は24日、CoinDeskに述べた。

「イーサリアムは最近、多くの資金流入を促すようなストーリーを打ち出せていないと批判されている。だが、2025年2月に予定されているペクトラ(Pectra)アップグレードでは、アルトコインでガス代(取引手数料)を支払えるようにするなど、ユーザーにさまざまなメリットが提供される予定だ」

だがラック氏は「機関投資家は当面、他に良いチャンスがあると感じているかもしれない」と付け加えた。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:Ethereum ETFs Record Biggest Outflows Since July in Sign of Low Institutional Appeal