SWIFT、2025年にデジタル資産・通貨取引の実証実験──デファクトをめぐる動きが激化

「SWIFT」(スイフト:国際銀行間通信協会)は10月3日、デジタル資産およびデジタル通貨の取引の実証実験を2025年に行うと発表した。

SWIFTは銀行間の国際送金におけるインフラ的存在。だがG20は「クロスボーダー送金の改善にむけたロードマップ」を承認し、「より安く」「より速く」「より透明で」「よりアクセスしやすい」クロスボーダー送金の実現を求めている。

現在、国際送金/クロスボーダー送金の改善に向けて、ブロックチェーン技術をベースにさまざまな取り組みが進められている。大きく分けると、以下の3つに整理することができる。

  • 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
  • ステーブルコイン
  • トークン化預金

リリースでは、「すでにSWIFTは、トークン化された価値をパブリックおよびプライベート・ブロックチェーン間で転送すること、各国の中央銀行デジタル通貨を世界規模で相互リンクすること、複数のデジタル資産および現金ネットワークを統合することに成功している」とアピールしている。

一方、世界中でさまざまな取り組みが進む現状について「相互接続されていないプラットフォームやテクノロジーの急速な成長により、状況はますます断片化し、グローバルな導入の大きな障壁となる『デジタル・アイランド』の複雑なネットワークが形成されている」と指摘した。

2025年に行われる実証実験では、銀行間の国際送金のインフラというポジションを活用して、「これらの異なるネットワークを相互に、また既存の法定通貨とも相互に接続し、グローバルコミュニティが既存のインフラを活用して、従来の価値形態とともにデジタル資産やデジタル通貨をシームレスに取引できるようにする」としている。

さまざまな国際送金プロジェクト

SWIFTが「断片化」と述べた国際送金の取り組みについては、例えば、中央銀行の中央銀行と呼ばれる国際決済銀行(BIS)が主導するプロジェクト「Agora(アゴラ)」がある。

アゴラには、日本銀行も参加しており、日本銀行のWebサイトによると「分散型台帳技術を使ったプラットフォーム上に、商業銀行預金と中央銀行預金の両方を乗せ、それらを使って安全かつ効率的なクロスボーダー決済を行う、新しいタイプの決済インフラの可能性について検討するもの」だ。

また、「7つの中央銀行(フランス銀行<ユーロシステム代表>、日本銀行、韓国銀行、メキシコ銀行、スイス国立銀行、イングランド銀行、ニューヨーク連邦準備銀行)と、それらの法域の民間金融機関が協力して検討作業を行う」という。

BISは9月、この検討に40を超える金融機関が参加したと発表した。SWIFTもこの検討作業に参加している。

シンガポール金融管理局(MAS)が大手金融機関や各国の規制当局とともに進める「プロジェクト・ガーディアン」もよく知られている。アゴラと同様にトークン化預金をブロックチェーン上でやり取りし、クロスボーダーな金融取引をより効率化しようとしている。プロジェクト・ガーディアンには、日本の金融庁も参加している。

これらはまだプロジェクトとしての取り組みだが、米銀大手JPモルガン・チェーン(JPモルガン)はすでに、預金をトークン化した「JPM Coin」を使った国際送金を推進している。同行のブロックチェーン基盤「オニキス(Onyx)」は1日に20億ドル(約2900億円、1ドル145円換算)の取引を処理しているという(注:国際送金に限った数字ではない)。

国内を見ると、Progmat(プログマ)社とDatachain(データチェーン)は9月、SWIFTを活用したステーブルコインでの国際送金プロジェクト「Project Pax」を開始すると発表。国内3メガ銀行(みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャルグループ)をはじめ、国内外の主要金融機関の関与がすでに決定していると述べた。

こうした動きを考えると、国際送金では、世界中の金融機関や金融機関などが、ときに連携し、ときに競い合いながら次のデファクト・スタンダードを目指している状況と言えるだろう。

|文:増田隆幸
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