元中国議会高官は中国の中央銀行が独自の国家デジタル通貨を最初に発行する可能性が高いと述べ、フェイスブック(Facebook)の仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」は失敗する運命にあると主張した。
全国人民代表大会財政経済委員会の元副主任の黄奇帆氏は上海外灘サミットで、国家デジタル通貨が国際金融市場にいかに影響を与える可能性があるかを説明した。中国メディアが伝えた。
黄氏は次のように述べた。
「技術はより成熟してきており、中国の中央銀行が国家デジタル通貨を初めて発行することになる可能性が高いと考えています」
黄氏はスピーチの中で、リブラのような民間企業発行のステーブルコインをかわす最善の方法は、政府や中央銀行に国家独自のデジタル通貨を発行させることだと述べた。
「私は個人的にリブラが成功するとは考えていません」と黄氏は述べ、次のように続けた。「一部の企業はビットコインやリブラを発行して国家通貨に挑戦しようとしています。分散型のブロックチェーン基盤の通貨は国家信用によって支えられておらず、真の財産になるのは困難です」
黄氏の発言は、習近平国家主席が中国のブロックチェーン戦略促進を表明し、中国の国家デジタル通貨ローンチに道を切り開く新しい暗号法が議会を通過した後になされた。
中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は早くも2014年には仮想通貨の研究を開始し、2017年6月に設立されたデジタル通貨研究所を通じて、国家デジタル通貨「デジタル通貨電子決済(DCEP)」の開発を目指している。
中国政府関係者はDCEPがリブラの複製ではないと述べたが、中国人民銀行は複数の公式書類において、その国家ステーブルコインをリブラと比較している。
中国人民銀行は、決済局元次官の穆長春氏を9月にデジタル通貨研究所のトップに任命し、DCEPの開発の加速を図った。この動きは、フェイスブックがリブラ構想を正式に発表した3カ月後に行われた。
黄氏は、DCEPの価値が中国の信用、正貨準備、国庫収入、国内総生産に連動されることを想定しているとも述べた。
黄氏によれば、中国は現在、国家仮想通貨を検討し、ブロックチェーン技術を支援する多くの主要経済圏の1つである。
「90を超える多国籍企業を通じて、現在24の国々が分散型台帳技術の開発に取り組んでいます」と黄氏は述べた。
欧州連合(EU)、日本、ロシアは、国境を超えた取引を促進する国際的金融機関「国際銀行間通信協会(SWIFT)」に取って代わる国際的仮想通貨決済ネットワークを開発しようとしている。
翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Libra image via Shutterstock
原文:Ex-Official Trolls Libra, Says China Likely to Issue Digital Currency First