中国共産党は、習近平中央委員会総書記によるブロックチェーン支持の姿勢を真剣に捉えている。
ブロックチェーン技術のもたらす「チャンスをつかむ」よう習総書記が呼びかけた驚くべき発言を受け、共産党は党員がブロックチェーン上で忠誠を示す分散型アプリ(dapp)を公開した。
2019年10月26日付の共産党の広報による記事では、直訳すると「オンチェーン初心」と呼ばれるこのdappは、党員が党への忠誠を誓い、それをブロックチェーン上に保管することを可能にし、他の人がシェア、閲覧することも可能である。
「初心」という言葉は、2017年の中国共産党第19次全国代表大会で習総書記が利用したもので、その後党員が党への忠誠を保つようにするための大規模な宣伝活動と教育活動に使われた。
記事によれば、dappを支える技術は北京に拠点を置く領主科技(Lingzhu Technology)が開発したもので、同社は技術やそのチームについての詳細は明らかにせず、ブロックチェーン開発企業であると述べている。
同社の登記データには、中国の清華大学に関連する国営の資本から投資を受け、OFと呼ばれるブロックチェーンを開発したと主張していることが示されている。
実際同社は、あまり知られていないOFコイン(OFCoin)という仮想通貨を発行しており、中国が新規コイン公開(ICO)と法定通貨から仮想通貨への取引を取り締まった数カ月後の2018年初期に、このコインはオーケーイーエックス(OKEx)やコインメックス(CoinMex)といった取引所に上場されている。
OFコインの価格は10月26日、共産党がdappをリリースし、領主科技がその開発に携わったことを公表してわずか数時間後に0.000326ドルへと90%も上昇した。当記事執筆時点での価格は、そのピークから35%下落し、1日の取引高はわずか数百万ドルとなっている。
領主科技がトークンのパブリックセールを実施したかどうかははっきりとしない。コインメックス上の上場プロフィールには、OFコインが2018年1月、イーサ(ETH)価格が約1000ドル(約10万9000円)であった頃に、30万OFコイン対1イーサ(ETH)で512億OFコインの20%のプライベートトークンセールを計画していた、と記されている。
OFコイン価格の上昇は、習総書記の発言による中国での波及効果の1つに過ぎない。
ゴールデンタイムのニュース
新華社通信が習総書記の発言を10月25日に報道した後、中国中央電視台(CCTV)による、中国で最も視聴率の高いゴールデンタイムのニュース番組「新聞聯播」は30分番組の5分間を使ってこの発言を報じた。
共産党の機関紙「人民日報」は10月26日、ブロックチェーン開発「加速」に関する習総書記の発言を1面で伝えた。
国営メディアはブロックチェーン技術に重点を置いたが、市場はその発言をビットコインへの公式の支持と受け止めた。ビットコイン価格は10月25日、12%以上上昇し、5週間ぶりの高値1万ドル(約109万円)超えを記録した後、9000ドル(約98万円)台まで反落した。
市場の反応はあまりに熱狂的であり、CCTVは10月26日、視聴者に対して落ち着きを求め、習総書記の発言はすべての仮想通貨への支持を表明するものではないと警告した。しかし、市場の高騰はそれでも継続した。
中国の仮想通貨プロジェクト
中国におけるブロックチェーンやビットコインへの関心の高まりを示す兆候は他にもある。
中国最大の検索エンジン「百度」におけるこれらの言葉の検索数は10月26日、200%増大し、10月27日には減少した。同様に、中国の主流モバイルメッセージングプラットフォーム「ウィーチャット(WeChat)」における検索数も10月25日の報道を受けて大きく上昇した。(画像参照)
当記事執筆時点では、クアンタム(Qtum)、ヴィチェーン(Vechain)、オントロジー(Ontology)、ネオ(NEO)、トロン(Tron)、バイトム(Bytom)を含む中国生まれの複数の主要仮想通貨が10月28日、25%から90%の大幅な値上がりを見せている。
株式市場への影響
波及効果は仮想通貨以外にも広がり、ブロックチェーンや仮想通貨に関連した上場株式はさらに大幅な値上がりを見せた。
アメリカでは、ナスダック(NASDAQ)上場のクラウドコンピューティング企業「迅雷」の株価が107%も値上がりした。深セン市に拠点を置く同社は、ブロックチェーン技術に基づく高スループットの独自分散型ネットワークを開発したと主張している。
10月28日に中国本土の市場で取引が開始されると、事業や提供商品・サービスに何らかの形でブロックチェーンが関わる100社を超える上場企業の株価がすべて、前日比で(最高値を含めて)10%値上がりした。
香港でも、ブロックチェーン関連企業の株価は大幅な値上がりを見せた。例えば、オーケーコイン(OKCoin)とフォビ(Huobi)が買収した2つのペーパーカンパニー、LEAPホールディングス(LEAP Holdings)とパントロニクス・ホールディングス(Pantronics Holdings)の株は、10月28日朝(中国時間)に50%以上の値上がりを記録した。
翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Chinese yuan image via Shutterstock
原文:China Wants Communist Party Members to Pledge Loyalty on Blockchain