金融サービスを革命的に変える、DeFiの3つの道筋

DeFi(分散型金融)は、金融サービスをデジタル化し、オープン、常時利用可能、ボーダレスな未来を作り出すだろうと、デジタル資産運用プラットフォーム、アブラ(Abra)のビル・バーハイド(Bill Barhydt)CEOは語る。

現在の銀行システムには、重大な欠陥があることは広く認められている。国境、時差、中央銀行への依存といったシステム的・地政学的リスクに加えて、送金、国際決済、クレジット(信用)の一貫性のない利用可能性といった課題がある。

問題の根本は、銀行のバランスシートとレバレッジのミスマッチにある。2023年3月にファースト・リパブリック銀行やシリコンバレー銀行が直面したように、銀行が流動性や債務超過の問題に直面した場合、政府が介入しない限り、預金者は破綻時に債権者となるリスクがあり、その影響は納税者がカバーすることになる。

こうした脆弱性から、個人投資家と機関投資家の双方の間で分散型ソリューションへの関心が高まっている。ヒューマンエラーや拙速な意思決定を排除することで、DeFi(分散型金融)は魅力的な代替策となっている。DeFiは、取引、銀行、借入、投資を根本から変える可能性があると我々は考えている。

DeFiが金融サービスをデジタル化し、オープン、常時利用可能、ボーダレスな未来を作り出そうとしている3つの道筋を見てみよう。

1. 現実資産(RWA)のトークン化

不動産、法定通貨、債券といった現実資産(RWA)のトークン化は、重要なトレンドになりつつある。これらのトークン化資産は、次世代のDeFiレンディング市場における担保となり得る。例えば、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)は、裁判所のような第三者を争いの裁定に必要とせず、スマートコントラクトによって自動的に使用を管理できるため、純粋な担保と捉えることができる。

不動産や国債などの物理的な資産をトークン化することで、そうした機会が生まれるが、現実世界における価格設定やキャッシュフローのデータを提供するためのオラクル(外部データ提供サービス)が必要となる。

こうしたエコシステムが進化するにつれ、個人投資家や機関投資家は、トークン化された幅広い資産を利用してレンディングサービスを利用し、流動性を解放し、グローバル市場全体で借入の選択肢を拡大していく。

2. 常時利用可能なレンディング市場

DeFiプロトコルは、貸出(レンディング)、借入、資産交換(スワップ)のための24時間365日利用可能な市場を作り出している。こうした市場は休みなく稼働しており、ユーザーはビットコイン、イーサリアム、USDコイン(USDC)などの資産を貸し出し、その見返りとして利回りを獲得できる。将来的には、国債や不動産などをトークン化した資産が追加されることも期待される。

レバレッジやリパースポゼッション(資産を複数回貸し出すというリスクの高い銀行業務)が潜んでいる伝統的な市場とは異なり、DeFiの透明性の高いスマートコントラクトは、担保が明確に管理されていることを保証し、カウンターパーティーリスクを低減する。ビットコイン保有者の間で、wBTC(ラップド・ビットコイン)のような技術を活用し、ビットコインを売却することなく、アーべ(Aave)などのレンディングプラットフォームでステーブルコインを借り、ビットコインの価格上昇への投資を続けるケースが増えている。

この仕組みでは、ローンはデジタル担保によって保証されており、担保価値が下落した場合、借り手は担保を追加するか、清算のリスクを負う。伝統的な金融に内在する不透明なリスクが存在しない、より健全なレンディング環境が実現する。

3. 自分自身の銀行になる

DeFiのおそらく最も革命的な側面は、個人が自分自身の銀行になり得ることだ。歴史を振り返ると、貯蓄貸付組合(S&L)危機から2008年の金融危機、そして最近では金利上昇による2023年の危機まで、我々は何度も銀行危機を目撃してきた。歴史的に、不安定な時期には、預金者は銀行から現金を引き出している。

今日、DeFiはモダンなソリューションを提供している。先進のマルチパーティーコンピューテーション(MPC)ウォレットにより、ユーザーは資産を安全に保管・管理でき、オンチェーンによる検証は、ユーザーがコントロールを維持していることを保証する。個人でも、ステーブルコインに価値を保存したり、デジタル資産に投資したり、分散型の貸付・借入サービスを利用できる。いずれも伝統的な銀行に頼ることはない。

SMA(Separately Managed Accounts)のようなツールを使用することで、ユーザーは銀行のバランスシート・リスクから解放され、自身のデジタル金庫に資産を保有できる。こうした自律性は、伝統的な金融戦略を反映しているが、暗号資産領域にまで拡大し、人々に金融の未来に対する、これまでにないコントロールを提供する。

Separately Managed Accounts:ラップアカウントの一種。証券会社などの金融機関が、投資家から投資判断に関する一任を受けた上で、投資家の口座において、ポートフォリオの設計から運用に関するアドバイス、実際の売買・管理、アフターフォローまでを一括して提供するサービス。手数料・報酬は、運用資産残高に応じて一定の金額が支払われる。(野村證券|証券用語解説集より

結論:分散型の未来

今後数十年で、DeFiは金融サービスの根幹になるだろう。「DeFiベースの銀行」という用語は、DeFiが金融サービスの標準インフラとなるにつれ、消えていくかもしれない。こうした世界では、トークン化された現実資産(RWA)が、借入・貸付の新たな可能性を解放し、分散型プラットフォームが常時利用可能な銀行サービスを提供し、個人は自分自身の銀行となるパワーを手に入れる。つまり、資産の完全な所有権とコントロールを維持できる。

金融サービスが透明性、安全性、民主化された未来を望むのであれば、今、DeFiで起きているイノベーションに注目しなければならない。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Matthew Henry/Unsplash
|原文:Three Ways DeFi Will Revolutionize Financial Services