暗号資産(仮想通貨)市場のリターンは現在、「べき分布」を示しており、少数のトップパフォーマーがポートフォリオ全体のパフォーマンスを大幅に押し上げている可能性がある、とフェリシアン・ストラットマン(Felician Stratmann)氏は述べている。
べき分布:ベキ分布の特徴は、分布が左右対称になる正規分布とは対照的に、中央値・最頻値が分布の左端に位置します。平均や分散という概念が事実上意味をなさないという点で、正規分布とは異質なものになります(出典:OpenSquareJP 九州産業大学 芸術学部 情報デザイン研究室)
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多くの暗号資産投資家は、少なくとも心理的には自分自身のパフォーマンスをビットコインのパフォーマンスと比較する。ビットコインが適切なベンチマークかどうかはさておき、ここ数年、ビットコインを上回ることは確かに難しい。あまりにも難しいので、一部の市場参加者はアルトコインに見切りをつけようとしているほどだ。だが、ビットコインは常にこれほどまでに打ち負かすことが難しいのだろうか?
我々は、時価総額トップ150のトークン(ミームコインを除外し、主要暗号資産取引所における最低取引高要件を満たすもの)について、2019年までさかのぼってデータを検証し、ビットコインを上回るために何が必要だったのかを調査した。150のトークンは、流動性を考慮し、かつある程度の運用資産残高(AUM)を運用担当者が現実的に評価できるものだ。なお、2020年後半までは、流動性の観点から、これらの要件を満たすトークンは150を切っていた。
次に我々は、トップ150のトークンのうち、任意の日から1年間、ビットコインを上回るパフォーマンスを示したトークンの数を調査した。2019年と2020年のある時点では、ビットコインを上回ることは簡単だったようで、多くのトークンがビットコインを大幅に上回っていた(ビットコインの素晴らしいリターンを平均1000%以上上回った)。
また、ビットコインを上回るトークンを見つけるために、時価総額の小さなものまでチェックする必要はさほどなかった。2020年以前のビットコインを上回るパフォーマンスを示したトークンの時価総額ランキングは、トップ30以内だった。
2021年以降は状況が異なる。この数年、ビットコインを上回ったのは、トップ150のうち、わずか10~20%で、そのビットコインに対するパフォーマンスもプラス100%程度に落ち着いている。ビットコインを上回ったトークンの時価総額ランキングも、60~80位あたりとなっている。
分散投資は依然として過小評価
ここからわかることはなんだろうか? まず、勝者となるにはかなりのスキルが必要であることは明らかだ。おそらく5年前よりも今の方がその傾向は強い。金融緩和以降、暗号資産市場は進化しており、暗号資産プロジェクトの成長には、目に見える結果が期待されている。それでも、データを見ると、成功する確率が高そうな、少数のトークンのみを選んでも、ビットコインを上回る可能性は低い。
小規模なプロジェクトが、大きな潜在的可能性を秘めていることは依然として明らかであり、暗号資産市場が成熟したとはいえ、トップクラスの銘柄のパフォーマンスは、流動性や規模は限られているが、依然として高い(ビットコインを100%以上上回る)。
これらの点から、暗号資産市場のリターンは今、「べき分布」に従う部分が大きく、一握りのトークンがポートフォリオ全体を牽引し、プラスの結果をもたらしていることがわかる。つまり、流動性トークンに対する分散投資の重要性はまだ過小評価されているようだ。
暗号資産市場は依然としてスタートアップ段階の企業の集合体であり、投資家はVC(ベンチャーキャピタル)スタイルの分散投資アプローチを採用して、流動性の高い二次市場(流通市場)の恩恵を受けることができる。
アルトコインの未来は明るい。だが投資が簡単なわけではない。
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
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|原文:Beating Bitcoin