ビットコインが14万ドルに達する可能性──3000万ドルの投資ファンドを運用するAIトリオが予測
  • インテリジェント・アルファはAIの投資選択に基づいてポートフォリオを構築している。
  • 同社はChatGPT、クロード、ジェミニという3つのAIに依拠しており、直感に反するように思えてもそれらの決定を実行している。
  • これらのモデルは現在まで素晴らしい実績を残している。

事実上全ての投資判断を人工知能(AI)に委ねている3000万ドル(約46億5000万円、1ドル155円換算)のファンドがある。

その会社名はインテリジェント・アルファ(Intelligent Alpha)。スタッフには創業者兼CEOのダグ・クリントン(Doug Clinton)氏、数人のプログラマーと請負業者、そしてオープンAI(OpenAI)のChatGPT、グーグル(Google)のジェミニ、アンスロピック(Anthropic)のクロード(Claude)という3つのAIが含まれる。

この3つのAIが同社の投資委員会を構成しており、これまでのところ素晴らしい仕事をしている。

クリントン氏はCoinDeskとのインタビューで、「AIの最も優れた判断のいくつかはショートだった」と述べ、「今年、(1月に)737MAXのドアが吹き飛ぶ前のタイミングでボーイング(Boeing)をショートしていた。AIは実際にその理由でこの株をショートしていた。その飛行機で品質問題が発生すると考えたためだ」と説明した。

インテリジェント・アルファはこれまで伝統的金融に焦点を当て、暗号資産(仮想通貨)からはおおむね距離を置いてきたが、クリントン氏は、過去5カ月間に特にビットコイン(BTC)で実験を始めたと述べた。その目的は、AIがビットコインの取引において役立つ目標を設定することだ。

クリントン氏は、「強気のケース、つまりトランプ氏の勝利とより好ましい規制環境が実現する場合、AIはビットコインが14万ドル(約2170万円)に達する可能性があると見ている。我々は現在そのシナリオに向かって進んでいるのかもしれない」と述べた。

AIによる投資判断の仕組みは?

現在、多くの企業がAIを使用して人間のプロセスを強化し、アナリストがデータを処理するのを支援し、別の視点を得ている。しかし、クリントン氏のやり方は、投資判断に関して可能な限りAIトリオに責任を与え、その邪魔をしないことだ。

プロセスは比較的シンプルだ。例えば、インテリジェント・アルファが大型の米株ポートフォリオを構築しようとする場合、ファンドは時価総額の大きい米国企業に関する過去の収益や利益予測などの膨大なデータを収集し、AIに提供する。

次のステップは、AIが使用する哲学的枠組みを与えることだ。クリントン氏は、AIに世界で最も有名な投資家の後を継ぎ、彼らの考え方を対象のポートフォリオに適用させるよう求める。こうした投資家は、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏、スタンリー・ドゥルケンミラー(Stanley Druckenmiller)氏、キャシー・ウッド(Cathie Wood)氏だ。

その後、AIトリオがポートフォリオを作成する。人間がそれをダブルチェックして、クリントン氏が言うには「ハルシネーション(幻覚)」がないことを確認するのは必須だ。例えば、AIが最近買収された株式や、時価総額の小さい企業の株式を誤って含めてしまう可能性がある。

クリントン氏はCoinDeskに対し、「それ以外は、ポートフォリオにあまり手を加えないようにしている。人間としては、時々ポートフォリオを見て『ああ、この選択はひどいアイデアのように思える』と考えることがある。また、非常に興味深いものを見て、そのロジックを理解しようとすることもある。それはある意味で楽しい」と述べた。

このプロセスには、AIトリオがクリントン氏に根拠を説明することが含まれる。これは投資がポートフォリオの目標に合致していることを同氏が確認するのに役立つだけではない。同氏の説明によると、AIトリオが特定の株を好む理由を説明することを強制されると、より良いポートフォリオが提供されるようになるという。

AIが意見を異にすることはよくある。そして、アップデートが行われるとAIの考え方も変化する。クリントン氏は、「最初にテストを始めた頃は、クロードがアウトプットの点で最も反対意見を持つモデルだった。今ではChatGPTがそうだと言えるだろう」と述べた。そして、クリントン氏はグロック(Grok)やラマAI(Lama AI)などの他のAIもテストしたが、投資委員会を3つのAIに限定することが最も効率的なセットアップであることが証明されたという。

未来を予測する

投資家は、インテリジェント・リバモアETF(Intelligent Livermore ETF)を通じてインテリジェント・アルファの戦略に対してエクスポージャーを持つことができる。このETF(上場投資信託)は9月に立ち上げられ、AIを使用してグローバル株式ポートフォリオを構築している。クリントン氏によると、こうしたファンドはさらに増える見通しだ。

リバモアETFでは、四半期ごとにモデルが世界のイベントを検討し、今後3~6カ月の予測を試みる。その後、(ドゥルケンミラー氏のような大物の投資哲学に従って)5~6つの機会領域が特定され、これらのセクターを中心にポートフォリオが構築される。

競合する哲学を持つことは、通常ポートフォリオがかなりバランスの取れたものになることを意味する。クリントン氏は、「多くの場合、彼らは特異な機会を探している。(投資哲学が)対立した場合に大きな問題は見られていないが、仮にあったとしても、それはヘッジのようなものだろう」と述べた。AIは自身で、最も自信のある分野に応じて、ポートフォリオに見られる様々な哲学の重み付けを決定する。

クリントン氏は、「AIは、少なくともこれまでのところ、先を見通すのが本当に得意だ。立ち上げ直前に、アジア株、特に中国株に大きな賭けをした。それは9月にデイビッド・テッパー(David Tepper)氏(億万長者のヘッジファンドマネージャー)がCNBCに出演し、中国が彼の最大の賭けであり、彼らは景気刺激のためのバズーカを取り出したと発言する直前だった。そして、ご存知の通り中国株は急騰した」と述べた。

もう一つの記憶に残る取引は、半導体メーカー大手のエヌビディア(Nvidia)だ。同社は2023年夏に実験が始まって以来、AIの最優先銘柄だった。クリントン氏は、「当時、私は『ああ、なんてこった』と思った。エヌビディアはその時点ですでに大きく上昇していた。しかし、AIが選んだ時点から今では400%上昇している」と指摘した。クリントン氏はそこから得られる教訓として、人間はチャートに感情的に反応するが、AIは「全く気にしない。『いや、これはもっと上がる』と言うだけだ」と述べた。

全ての賭けが大成功というわけではないが、クリントン氏によれば、これまでのところミスは些細なものにとどまっている。特にマクロイベントについて、AIは良好な実績を築いていると同氏は述べた。一例として、AIはドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が再選されると予測した。

暗号資産は?

インテリジェント・アルファが暗号資産にあまり焦点を当てていない理由の一つは、単純にデータ不足だ。取引はブロックチェーン上で行われたかもしれないが、コビー(Cobie)氏やGCR氏のような有名な暗号資産投資家が使用した取引セットアップや投資哲学を簡単に遡って見つける方法はない。ほとんどの場合、Xでの彼らの投稿を頼りにするしかなく、その投稿が現実を反映しているかどうかを知るのは難しい。

とはいえ、暗号資産コミュニティがXに依存していることは、グロックがいつか暗号資産の目的でインテリジェント・アルファのAIトリオの一員になる可能性があることを意味するとクリントン氏は考えてている。グロックはソーシャルメディアプラットフォームのデータで訓練され、微調整されているからだ。

クリントン氏は、「ここで我々が探求している問題は、AIを使って何か独自で異なる、少し目立つようなことができるかどうかだ。AIを使用して人気が出る暗号資産プロジェクトを特定する独自の方法を見つけることは、この技術を使用する本当にクールな方法になるだろう」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Going to $140K Says Trio of AIs Managing $30M Investment Fund