- 分散型暗号資産ウォレットのファントムが、アップルのApp Storeランキングでコインベースを追い抜いた。これは、トレーダーがハイリスクなミームコインを受け入れる中でオンチェーンにシフトしていることを反映している。
- TikTokの動画で、コインベースのような中央集権型取引所よりも使いにくいウォレットの操作方法が紹介されている。
- ファントムのブランドン・ミルマンCEOは、「従来の中央集権型取引所は、新しいオンチェーンのパラダイム全てに十分な速さで追いつくことができない」と述べた。
コインベース(Coinbase)のApp Storeダウンロードランキングによって、個人投資家がどの程度強気相場に参加しているかが示されるというのは、長年暗号資産(仮想通貨)業界の原則だった。しかし、強気相場は到来したものの、コインベースは以前のようにランキングを上昇させていない。
代わりに、より使いにくい暗号資産ウォレットであるファントムが、知名度の高い中央集権型取引所であるコインベースを追い抜いた。本記事執筆時点で、ファントムはアップルのアメリカのApp Storeの無料アプリランキングで7位(TemuとGoogleの間)に位置しており、コインベースの27位を大きく上回っている。
この逆転は、主流のトレーダーが暗号資産デビュー時に何を許容できるかについての予想を覆している。特にビットコインコミュニティは常に「あなた自身の銀行になる」ことを強調してきたが、コインベースのような暗号資産業界の他の部分は、より利用しやすい体験に力を入れてきた。
ミームコインの熱狂がこれを吹き飛ばしている。コインベースや他の定評のある取引所は、非常に低い価格の、数時間前に生まれたばかりで極めてリスクが高いが時に非常に儲かる(ほとんどがそうなるように無価値にならなければの話だが)、新規トレーダーが投資したがるミームコインを上場させていない。これを手に入れるには、ファントムのようなものを使ってオンチェーンで取引する必要がある。
ファントムのブランドン・ミルマン(Brandon Millman)CEOはメールで、「従来の中央集権型取引所は、新しいオンチェーンのパラダイム全てに十分な速さで追いつくことができない」と述べた。
チル・ガイ、TikTok
過去1週間で、特にミームコインの一つであるチル・ガイ(Chill Guy)がTikTokで多くの注目を集め、オンチェーンではさらに多くの買いが集まった。調整されたソーシャルメディアでのマーケティングキャンペーンに後押しされ、リラックスした様子の犬がマスコットになっているCHILLGUYは、数日で時価総額がほぼゼロから最高5億ドル(約775億円、1ドル155円換算)にまで急上昇した。
CHILLGUYや他の新しいミームコインを購入するには、例えばコインベースでビットコイン(BTC)を購入するよりも少し多くの労力が必要だ。トレーダーは分散型取引所(DEX)で操作を行い、希望価格を設定するために面倒な注文設定を行う方法を学ばなければならない。中央集権型取引所と比較すると、これは学習に時間がかかる扱いにくい設定だ。
新規参入者をオンチェーンに駆り立てている主な原因がTikTokかどうかははっきりしていない。極めてニッチなTikTokの暗号資産ジャンルには、お決まりのダンス動画でよくあるような、何百万回も再生される真に際立った動画はない。より一般的なのは、億万長者になる計画を熱心な暗号資産支持者が誇らしげに語る低視聴率の動画の山だ。少数の人のみが、フォロワーにファントムのダウンロード方法を教えている。
コインベースも確かにミームコインを取り込んでいる。先週、フロキ(FLOKI)とペペコイン(PEPE)、そしてドイツのトレーダー向けにドッグウィフハット(WIF)を承認した。これらのトークンは比較的長い間存在し、数十億ドルの時価総額を蓄積しており、例えばオンチェーンで操作するトレーダーのみがアクセス可能なミームコインDIDDYOILと比べると比較的安定している(比較的という意味で)。
コインベースの広報担当者は、「当社のミッションは、世界の経済的自由を増大させることであり、それを単独でできないことは分かっている。潮が満ちればすべての船を持ち上げると信じており、ここ数週間でより多くの人々がオンチェーンで、そして暗号資産に関与しているのを見て感動している」と述べた。
コインベースの取引所自体はミームコイン分野に慎重に足を踏み入れているに過ぎないが、同社は全体として、レイヤー2ネットワークであるベース(Base)でそのような活動を育成し、取り込もうとしている。ベースのミームコイン分野はソラナブロックチェーンのレベルには達していないが、それでも毎日数百万ドル相当の取引高がある。
コインベースの広報担当者は、「私たちは、オンチェーンをより高速に(世界中どこでも数秒で取引できる)、より安く(ベースの典型的な手数料は1セント未満)、そしてより使いやすくすることに焦点を当てている。これにより、オンチェーン技術が誰でも、世界中のどこでもアクセス可能になる」と述べた。
同広報担当者は、「10億人をオンチェーンに導くことを楽しみにしている」とコメントした。
|翻訳・編集:林理南
|画像:CoinDesk
|原文:Coinbase App Gets Left Behind as Memecoin Craze Drives Traders On-Chain