ソラナは脅威ではなく、その「黄金時代」は終わる:イーサリアム開発者ジャスティン・ドレイク氏

イーサリアム開発者ジャスティン・ドレイク(Justin Drake)氏は、2番目に大きなブロックチェーンであるイーサリアムのコンセンサスレイヤーを抜本改革するための包括的な提案は、ライバルに追いつくためではなく、長期にわたって存続するためのものだと語った。

ドレイク氏は、先月バンコクで開催された2年に1度のイーサリアム開発者カンファレンス「Devcon」で、「ビームチェーン(Beam Chain)」と呼ばれるこの提案を発表した。イーサリアムのネイティブトークンであるイーサリアム(ETH)が、他の主要レイヤー1ブロックチェーンのライバルに遅れをとっているタイミングでのことだった。

イーサリアムネットワークはここ数年、幅広く普及し、利用コストはより高く、スピードもより遅くなっている。これに対し2020年、「イーサリアムキラー」と呼ばれるさまざまなレイヤー1ネットワークが登場し、取引速度でイーサリアムに対抗するようになった。なかでもソラナ(Solana)はそのリーダーとして注目されてきた。

最近、主にミームコイン急増のおかげで、ソラナ上のアクティビティは爆発的に増加しており、ソラナが人気チェーンとしてイーサリアムを追い抜くのではないかと考えるユーザーもいる。

健全性と安全性がメイン

しかしドレイク氏は、ソラナがイーサリアムを脅かすとは考えていないと述べた。また、ビームチェーンが短期的にイーサリアムの優位性を回復する手段とも考えていない。

ビームチェーンは「コンセンサスレイヤーの長期的な健全性と安全性を向上させるためのものであり、パフォーマンスとは何の関係もない」とドレイク氏はインタビューに答えている。

さらに「ソラナは健全性をまったく考慮していない。パフォーマンスのことしか頭にない。彼らはレイテンシーを減らし、スループットを向上させることを大切にしている」と付け加えた。

イーサリアムはロールアップ中心のロードマップを推進することで、スケーラビリティの課題に対処しようとしてきた。つまりユーザーは、レイヤー2やロールアップと呼ばれる補助的なネットワークで、より速く、より安く取引ができるということだ。

イーサリアム上で人気のあるレイヤー2には、アービトラム(Arbitrum)、オプティミズム(Optimism)、ベース(Base)、ZKsyncなどがある。

イーサリアム開発者は、より高速で低い取引手数料を提供するためにレイヤー2に大きく依存している。

「レイヤー1はビットコインと競合し、レイヤー2はソラナと競合している。つまり、ソラナに対抗するのはレイヤー1の仕事ですらない。私たちはセキュリティと健全性で競争すべきであり、ソラナと競合するのであれば、アプリケーションやレイヤー2が競合する必要がある」とドレイク氏は語った。

例えば、L2のアービトラムのスロットタイム(チェーンにトランザクションのブロックが公開されるまでの時間)は250ミリ秒。「これはソラナよりも速い」とドレイク氏は言う。

ちなみにギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)の最近の調査報告書によると、「ソラナは400ミリ秒のスロットタイムを目標としているが、実際には500~600ミリ秒が一般的だ」という。

だがドレイク氏は、イーサリアムのレイヤー1には、開発者が取り組んできた、速度面でソラナに対してイーサリアムの競争力を高める機能がいくつかあると付け加えた。

主なものは、トランザクションの確認を高速化し、イーサリアムのユーザー体験をソラナと同じくらいスムーズにする「事前確認」と、イーサリアムがオフチェーンで大量のトランザクションデータを処理できるようにする機能「ブロブ」だ。しかし、これらはすべてドレイク氏が2029年までに実装したいと述べているビームチェーンとは別のものだ。

長期的な発展を目指して

そして、ソラナが多くの勢いを見せている一方で、ドレイク氏はイーサリアムの長期的な発展に集中するために雑音を遮断していると述べた。

「ソラナは今、脚光を浴びているが、ソラナの黄金時代は終わりを告げようとしている。なぜなら、ソラナが持つレイテンシーとスループットに関する競争上の優位性は、アーキテクチャーの根本的な違いによってスケーラビリティがないため、すべてなくなるからだ」とドレイク氏は語った。

ソラーナの広報担当者は、当記事執筆時点までにコメントの求めに応じていない。

ドレイク氏は、究極の目標は 「価値のインターネット 」を創造することであり、ビームチェーンはそれを達成するために必要なものだと考えていると語った。

「超安全で極めて中立的なレイヤー1が必要であり、アプリケーションをユーザーに提供する、非常に豊かで活気あるレイヤー2のエコシステムも必要なのだ」とドレイク氏は述べた。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:イーサリアムの開発者ジャスティン・ドレイク氏(Ethereum Devcon/YouTube)
|原文:Ethereum’s Justin Drake Sees No Threat From Solana, Says Its ‘Golden Era’ Will End