ビットコインの10万ドルを前にした足踏み、流動性とエヌビディアの失速が原因か
  • 暗号資産市場への流動性の純流入が減速していることを主要指標が示している。
  • AIとリスク資産のすべてを先導するエヌビディア(Nvidia)の上昇トレンドは失速している。

ビットコイン(BTC)は9万ドルから10万ドルのレンジで3週目に入り、12月5日に一時的に6桁台まで上昇した以外は、大きな動きは見られない。

この優柔不断な価格変動はトレーダーたちを落胆させたかもしれないが、上昇を妨げている2つの要因がある。

まず、現物ETF(上場投資信託)のようなチャネルを通じた暗号資産市場への流動性の流入が大幅に減速し、強気の勢いを削いでいる。

10xリサーチ(10x Research)が追跡しているデータによると、いわゆる市場流動性インパルス指数(market liquidity impulse index)の週次変化率は、ステーブルコインの発行、BTC現物ETFへの流入、先物市場のパラメータの変化を追跡しているが、先月初めに150億ドル(約2兆2500億円、1ドル=150円換算)を超えていた高値から、70億ドル(約1兆500億円)へと半分以下に減少している。

「この流動性の伸びの鈍化は、ビットコインが10万ドル以上の水準を維持できずに苦戦している理由を部分的に説明しているかもしれない」と、10xリサーチの創設者であるマーカス・ティーレン(Markus Thielen)氏は12月11日に顧客宛てのメモで述べた。

Liquidity impulse (weekly) versus BTC (10x Research)
[週次の流動性インパルスとビットコイン。:10x research]

流動性指標は最近、より低い高値を記録しており、BTCの価格とは逆行する動きを見せている。

ステーブルコインは、米ドルのような資産にペッグされた暗号資産(仮想通貨)であり、暗号資産の購入資金として広く利用されている。一方、ETFは、暗号資産を所有せずに暗号資産へのエクスポージャーを得たい人々にとって、好ましい投資手段だ。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の現金決済先物についても同じことが言える。

もう一つの理由として、ほとんどの専門家が見落としているのは、世界最大の企業であるチップメーカーであるエヌビディア(Nvidia)の株価上昇トレンドの減速だ。2022年後半にChatGPTが登場して以来、エヌビディアはあらゆるAIやリスク資産全般の先行指標として浮上した。

BTCとエヌビディアは2022年後半に底を打ち、それ以来、強い正の相関関係を誇っている。ただし、供給過剰の懸念からBTCがエヌビディアの上昇に追随できなかった夏場は例外だった。記事執筆時点での両者の3カ月間の相関関係は0.6だ。

TheMarketEarのアナリストは、アメリカ大統領選挙後の急騰で7万ドルから10万ドルに上昇したBTCがエヌビディアに追いついたと考えている。

「同じ心理だ。勝者は勝者を好む。BTCはエヌビディアに『追いついた』。両者にはほとんど共通点はないが、心理的には似たような動きをしている」と、TheMarketEarのアナリストは顧客向けのメモで述べた。また、エヌビディアは今年、過去5年間でBTCを上回るパフォーマンスを示した数少ない銘柄のひとつだと付け加えた。

データソースのTradingViewによると、BTCが今年130%上昇したのに対し、エヌビディアは172%上昇している。

しかし、エヌビディアの上昇傾向は11月中旬以降勢いを失い、現在は「ヘッド・アンド・ショルダーズ(三尊)」と呼ばれる弱気な反転パターンを示している。また、Market Chameleonによると、1年間のプットコールスキューは現在、コールがプットと同等の価格で取引されており、年初の強いコール(強気)バイアスとは対照的に、中立的な見方を示している。

[エヌビディアの日足チャート。:TradingView/CoinDesk]

とはいえ、強気の行き過ぎは暗号資産市場から押し出されたと、12月10日のCrypto Daybook Americasで指摘されている。市場がより健全なレバレッジ水準に正常化したことで、BTCが再び10万ドルの節目に挑む可能性もあるが、その持続性は流動性の流入とより幅広いリスク選好に依存する可能性が高い。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin’s $100K Breakout Pause Likely Due to Liquidity Factors and Nvidia’s Stalled Rally