テザー・グループ、新興市場注力の一環でエルサルバドルに本社を設立
  • 1370億ドル規模のステーブルコイン・テザーの発行元であるテザー社は、規制当局の承認を受けてビットコインに友好的なエルサルバドルに本社を移転すると発表した。
  • パオロ・アルドイーノCEOは、「この決定はテザー社にとって自然な進展だ。新しい拠点を構築し、協力関係を育み、新興市場への注力を強化することができる」と述べた。
  • エルサルバドルは暗号資産に友好的な政策により、デジタル資産企業の成長するハブとなっている。こうした政策には、2021年にビットコインを法定通貨として採用したことなどがある。

1370億ドル(約21兆2350億円、1ドル155円換算)規模のステーブルコイン・テザー(USDT)を発行する暗号資産大手テザー(Tether)は13日、ビットコイン(BTC)に友好的な国家であるエルサルバドルにグループの本社を設立すると発表した。

同社は、同国でステーブルコイン発行者として必要なすべてのライセンスを取得したことを受けてこの展開が実現したと述べた。

同社の広報担当者は、この動きにより、テザーは子会社をエルサルバドルに移転し、初の物理的な建物を持つ本社を設立することになると説明した。同社の運営に詳しい情報筋がCoinDeskに語ったところによると、これまでグループの大半の事業体は英領ヴァージン諸島(BVI)で法人化され、ライセンスを取得していた。この動きは、スイスの暗号資産ハブであるルガーノ(Lugano)における同社の既存の拠点には影響しないという。

テザー社に関連する2社、つまりテザーNAエルサルバドル(Tether NA El Salvador, S.A. de C.V.)とテザー・インターナショナル・エルサルバドル(Tether International El Salvador, S.A. de C.V.)は、昨年8月に同国でのほとんどの暗号資産関連活動について規制当局の承認を得た。これは、政府の暗号資産規制機関であるエルサルバドル国家デジタル資産委員会(CNAD)の公開登録簿で確認できる。

パオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)CEOは声明で、「この決定はテザー社にとって自然な進展だ。新しい拠点を構築し、協力関係を育み、新興市場への注力を強化することができる。

パオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)CEOは声明で、「この決定はテザー社にとって自然な進展だ。新しい拠点を構築し、協力関係を育み、新興市場への注力を強化することができる」と表明。「エルサルバドルはデジタル資産分野におけるイノベーションの象徴だ」と述べた。

この移転は、エルサルバドルの暗号資産ハブとしての野心にとって大きな進展だ。テザー社は最大規模のデジタル資産企業の一つであり、2024年の第1四半期から第3四半期にかけて77億ドル(約1兆1935億円)の暗号資産関連の純利益を報告している。国際通貨基金(IMF)のデータによると、これは同国の年間GDPの約20%に相当する。

この動きは、テザー社にとって大きな利点をもたらす可能性もある。テクノロジー企業や暗号資産企業を誘致するためのエルサルバドルの税制優遇措置を享受できるからだ。投資会社ヴァンエク(VanEck)のデジタル資産リサーチ責任者を務めるマシュー・シーゲル(Matthew Sigel)氏は、「移転すれば、エルサルバドルの新しいICT(情報通信技術)イノベーション法を活用できる。この法律は、テクノロジー企業に対して所得税、固定資産税、キャピタルゲイン税を15年間免税するものだ」と指摘した。

テザー社のテザーは最大のステーブルコインであり、新興国のユーザーにとって人気の決済手段かつ送金手段だ。

人口600万人を超える中米の小国エルサルバドルは、ナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領の下で新興の暗号資産ハブとなっている。同国は2021年にビットコインを法定通貨として導入しており、包括的なデジタル資産規制を策定して幅広い暗号資産企業の進出を誘致している。また、同国は重要なビットコイン保有者でもあり、アーカム(Arkham)のデータによると、現在約5億5000万ドル(約853億円)相当の6000BTC以上を保有している。

その他のエルサルバドル関連ニュースとしては、テザー社が7億7500万ドル(約1201億円)の出資を行った動画共有プラットフォームのランブル(Rumble)が先週、エルサルバドル政府とクラウドサービス契約を締結した。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Unsplash
|原文:Tether Group to Establish Headquarters in El Salvador in Emerging Markets Push