ソラナやイーサリアムの2025年、オンチェーン指標から予測

ノイズの海の中で、Web3の真の勝者はオンチェーンの生データを実行可能なものに変え、サステナブルな成長を実現すると、アンジェラ・ミンスター博士とエリック・ストーン氏は語る。

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Web3はさまざまな指標にあふれ、そのほとんどは不明瞭なイメージを描いている。取引高、トークン価格、派手なニュースは、しばしば本当に重要なものを覆い隠す。すなわち、ユーザーエンゲージメントの質やオーガニック、かつ指数関数的な成長の可能性などだ。業界が大げさな宣伝文句を越えて進むなか、信頼できるデータに基づく成功のサインは、もはや選択肢ではなく、必須となっている。

グッドニュースは、ノイズを排除するツールはすでに存在していることだ。複数のオンチェーン指標を統合し、ユーザーエンゲージメントの深さと質を示す単一の「健全性指数(Health Index)」にまとめることで、真に繁栄し、長期的な成長が見込めるチェーンを特定できる。こうした指標が今、主要チェーンについて何を明らかにしているのか、そして2025年に何が期待できるのかを見てみよう。

単一ではなく集約されたデータを使用してユーザーの質を評価

サステナブルなオンチェーンエコシステムを構築する際、どのようなものであっても、単一のユーザー行動に最適化することは意味がない。必要なのはコンテクスト、すなわちユーザー行動をすべてを定量化するのみならず、それがなぜ重要なのか、その理由を明らかにする方法だ。これを達成するための有望なアプローチの1つは、ユーザー行動を5つのコアカテゴリーに集約することだ。

  • 取引活動(Transaction Activity):現物取引からスマートコントラクトの取引まで。
  • トークン蓄積(Tolen Accumulation):中長期的なトークン蓄積、および他の投資行動。
  • DeFiエンゲージメント(DeFi Engagement):ステーキング、レンディング、流動性提供などの活動に対するDeFiエンゲージメント(DeFiによる関与)。
  • NFT活動(NFT Activity):発行、取引、ユーティリティ主導のやりとりなどのNFT活動。
  • ガバナンス参加:DAO(分散型自律組織)やプロトコルのガバナンスへの貢献を数値化するガバナンスへの参加。

重要なことは、これらの指標を同等に扱うべきではないことだ。より良いアプローチは、確率論に基づく「ベイズモデル(Bayesian Model)」を使用してこれらを評価し、組み合わせて、単一の重要な「スコア」を生成することだ。静的な閾値や単純な平均値に依存する従来のスコアリングシステムとは異なり、これにより、事前知識(「平均的な」ウォレットから期待されるもの)と新たな証拠(オンチェーンで観察された実際の活動)の両方を組み込むことができる。この動的で多変数のスコアは不正操作が困難で、より正確で実用的なインサイトが得られる可能性が高い。

2024年のデータが示すこと

上記の手法を使って分析すると、2024年の各チェーンのユーザーアクティビティについて新たな視点が得られた。いくつかの驚くべき発見について詳しく見てみよう。

〈出典:Flipside Crypto〉

ソラナ(上図で、2月~3月中旬にピークを迎えている水色の線)は、2月から3月中旬にかけて、高品質なユーザーの大きなシェアを獲得したが、それ以降はエンゲージメントの質が低下している。

興味深いことに、この質の低下は、2024年のソラナ(SOL)の最初の価格と取引高の急騰と一致しており、現在のミームコインブームまで続いている。ベイズモデルで評価すると、反復的な行動は収益の低下につながる。つまり、複数のトークンスワップは、さまざまな種類の活動へのエンゲージメントよりもスコア改善には貢献しないことを意味する。このことは、ほとんどのソラナユーザーは現在、ソラナの複数セクターの成長に貢献していない限定的な範囲のオンチェーン活動に従事していることを示唆している。

今年、イーサリアムの支持者(1を少し上回る位置から始まるオレンジ色の線)は、2024年、ETF(上場投資信託)がゲームチェンジャーになることを期待していたが、データは異なる様相を示している。2024年上半期を通して、低く、安定したユーザースコアを記録したイーサリアムは、2024年の強気な展開がDeFiやプロトコルガバナンスなどのより広範なエコシステムへの参加を促すものではなかったことを示している。

注目に値するのは、Axelar(アクサラー、2.5から始まる濃い青色の線)で、総ユーザーベースに比して、最も幅広いオンチェーン活動において最もアクティブなユーザーを抱えていた。Axelarは、ニュースの大半を占めるレガシーチェーンよりも、TVL(預かり資産)ははるかに小さいが、これはより詳細な調査を要する興味深いサインであり、時価総額や取引高だけを見ていたなら、見逃されていたことだ。

ここで言いたいことは、ソラナが下方傾向にあり、Axelarがいずれ世界最大のチェーンになるということではない。各スコアはチェーンのユーザーの質に比例するため、チェーン間のスコアを比較することには限界がある。つまり、ソラナのユーザーのスコア「4」は、アクセラーの「4」とは大きく異なる可能性がある。各チェーンの基本的な活動には違いがあるからだ。そのため、これらのスコアは、チェーン全体のユーザーアクティビティの質的変化を追跡する際に最も有用であり、チェーン間の比較には適していない。

2025年の予測

では、各チェーンのユーザーの質のデータから、2025年の動向を予測してみよう。

まず、ソラナが2025年、大きな課題とチャンスに直面することは明らかだ。ソラナの行方は、膨大な数のカジュアルユーザー層を維持し、そのオンチェーンでのやり取りの範囲を拡大できるかどうかにかかっている。失敗すれば、ミームコインブームが終わったときに大幅な低迷を招く可能性がある。ただし、2024年初頭のデータを見ると、ソラナには短期的に何が起きても耐え抜く、質の高いユーザーが大勢いることが示されている。

Axelarは2024年、投機的な高騰よりも、多様でサステナブルなオンチェーン活動に従事するユーザー層を集中させたことを示した。2025年、Axelarの課題は、ユーザーの質を薄めることなく、エコシステムを拡大することだ。例えば、エコシステム全体で初心者向けのサービスをより多く作成しながら、新しいオーディエンスを獲得するための注目度の高いパートナーシップを優先することなどだろう。

イーサリアムでは、多くのアクティブユーザーが高速で安価なレイヤー2(L2)エコシステムに移行しており、メインネットは、コア機能であるステーキングやガバナンスにますます集約されていくかもしれない。より広範なエコシステムにとって不可欠だが、こうした展開は、多様なオンチェーンエンゲージメントを評価するスコアリングシステムには評価されないに可能性がある。

これは、スコアリングシステムの課題を浮き彫りにしている。広範なユーザー活動を優先すると、タスク特化型のネットワーク(あるいは、専門特化したものへと進化する汎用チェーン)に適用した際に、不完全な結果となる可能性がある。そのため、評価対象となるチェーンにとっての成功とは何かを明確に定義し、対応するユーザーアクションを捉えるスコアリングシステムを使用することが重要だ。

オンチェーンの成長を定義し、促進する優れた方法

Web3は、誤った評価基準を追い求め、データを総合的に見ることを怠ってきた。2025年は、最も重要な要素であるユーザーの質を多角的に測定し、それに基づいて行動する者が勝者となるだろう。

新しいスコアリング方法をダッシュボードに組み込むことで、オンチェーン・インテリジェンス・プラットフォームは、投資家や業界関係者により有意義なインサイトを提供できる。同時に、Web3開発者はこれらのスコアを使用して最優先事項を明確にし、ユーザーエンゲージメントと価値創造を推進できる。究極的には、これにより業界全体が、過大広告によるストーリーではなく、データに基づく戦略へと移行し、2025年以降のWeb3の可能性を最大限に引き出すことが可能になる。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Shutterstock
|原文:What the Key Metrics for Onchain Activity Say About SOL, ETH and Other Chains in 2025