メッセージアプリ大手のテレグラムが1月6日、約1,800億円を調達した独自の仮想通貨Gram(グラム)について「投資商品ではない」と主張するブログ記事を発表した。この主張の背景にあるのは、2019年10月に米証券取引委員会(SEC)がグラムを「未登録有価証券」と判断し、テレグラムを提訴したことだ。これにテレグラムがSECに公的に反論した格好で、SECが今後どう動くかに注目が集まる。
米国では有価証券に該当するかをHoweyテストで判断
テレグラムは、メッセージを暗号化するためプライバシーが確保されていることが特徴のアプリで、世界中の仮想通貨・暗号資産トレーダーに広く利用されている。2020年1月現在でAndroidアプリでは1億超のダウンロード数を誇る。
仮想通貨「グラム」は、テレグラムが開発する独自ブロックチェーン「TON」上のネイティブ・トークン。2018年に行った2度のICO(イニシャル・コイン・おファリグ。トークンによる資金調達)で、約1,800億円(17億ドル)を調達、開発していた。
資金調達したトークン「グラム」が有価証券に該当するか否かについては、米国ではハウィーテスト(Howey test)と呼ばれる基準が存在する。その基準は次の4つとされている。
(1) 投資家ではなく運営者のみの努力に依拠した
(2) 複数の投資家と運営者が共通の利益を有する
(3) 利益を目的とした
(4) 金銭的な投資
テレグラム「グラムはローンチされておらず利益も得られない」などと主張
テレグラムはブログでハウィーテストには言及していないが、その主張を見ると、この基準に該当しないことをしっかりアピールしていることが分かる。
テレグラムが主張しているのは、まずTONブロックチェーンはテレグラムの管理下になく、アプリ開発をする約束もないということ。TONの管理責任や発展への同社の主導的な関与を否定しており、これはハウィーテストの(1)には当てはまらないということを示唆している。そのため共通の利益も生じないので、(2)にも当たらないということだ。なおこの点についてテレグラムは、「TONはオープンソースでありテレグラムや関連会社が管理するものではない」と指摘、他の企業(サードパーティー)によるアプリ開発を期待するとも述べている。
またテレグラムは、現状、グラムはローンチされておらず、売買できないとも述べている。さらに将来的にも、グラムの売買や保有で利益を得ることは期待できないとし、「投資商品ではない」と強調。(3)にも当てはまらないと主張した。
フェイスブック「リブラ」も「有価証券に該当するかどうか」には配慮
新たに発行される仮想通貨、トークンが有価証券に該当するかどうかは特に米国では注目の話題となっている。
テレグラムも当初、グラムのローンチを2019年10月末と計画していたが、SECがTONブロックチェーンとグラムに対して差し止め命令を出し、証券法違反で提訴したことで、ローンチを2020年4月末に延期している。
フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」も、2019年6月のホワイトペーパーではリブラの出資企業に付与されるトークンや、リブラ・リザーブの配当金の分配に関する記述があったが、同年10月に発表した改訂版では、該当部分が削除・変更されたことが分かっているが、これは証券該当性に関する指摘を避ける狙いがあったと見られている。
文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:Shutterstock