新しく設立されたフィンテック企業は、実世界の資産への投資を促進するためにトークンセールモデルを活用したいと考えている。だが、これまでの多くのプロジェクトとは異なるアプローチを取っている。
CTO(コンティニュアス・トークン・オファリング)とは?
オープンソース界のベテラン、マーク・フルーリー(Marc Fluery)氏が新たに設立した、香港に拠点を置くトゥー・プライム(Two Prime)は、大半のトークンが早期に販売されるICO(新規コイン公開)に対して、このセールモデルをコンティニュアス・トークン・オファリング(Continuous Token Offering:CTO)と呼んでいる。目的は、調達した資金を使って、仮想通貨を金融業界にとってより魅力的で、適切な新しい資産クラスにすることにある。
同社は最初の500万トークン(トータルで作成される1億トークンのわずか5%)を流通市場にリリースし、残りはこの先10年間にわたってリリースする。これはリップル(Ripple)社がリップル(XRP)のセールスで用いたアプローチに似ており、同社はこのプロセスは株式による資金調達に似ていると述べた。
同社によると、トゥー・プライムのFFアクレティブ・トークン(FF Accretive Token:FF1)はまず、2020年2月下旬に日本に拠点を置く仮想通貨取引所リキッド(Liquid)で1トークン3ドルから取引が開始される。
「仮想通貨の最も大きな成功の1つは、ICOブームが示したように、急速な資金の形成にある」と同社CEOのアレクサンダー・ブラム(Alxander Blum)氏は語った。
ブラムCEOによると、取引所でのトークン公開によるスタートアップ向けのシードファンディングは2017年、プライベートエクイティを追い越した。「ベンチャーキャピタルは一般的にシードステージを回避するため、(ICOは)伝統的な金融プレイヤーが対処しなかった隙間を埋めた」とブラム氏は述べた。
トークンは「クローズドエンド型ファンド、資産に裏付けられたトークン、そして安全な価値の保存という特徴を組み合わせた」購入の選択肢を提供するとトゥー・プライムは述べた。
フルーリーCEOは、個人資産200万ドル(約2億2000万円)をファンドに供出した。同社はまた、このトークンの最初の外部投資家は香港に拠点を置くプライベートエクイティ企業、SIBインベストメントLtd(SIB Investment Ltd.)であることをCoinDeskに明かした。
フルーリーCEOは1999年、Javaベースのオープンソースアプリケーションサーバー、ジェイボス(Jboss)を立ち上げた。同社は2006年、レッド・ハットに4億2000万ドル(約460億円)で買収された。レッド・ハットは現在、IBM傘下にある。
規制上のリスク
トークン公開を行った他のスタートアップと同様に、トゥー・プライムも投資家や規制当局に疎まれることは避けなければならない。
XRPのセールスと資金調達ラウンドで数十億ドルを調達したリップル社は、未登録の証券販売で同社を非難する投資家からの集団訴訟に苦しめられている。
そしてICOを行った多くの企業はその後、トークンを証券として登録することを怠ったとして、SEC(米証券取引委員会)から訴えられている。
トゥー・プライムは、さまざまな法域の法律事務所からコンサルティングを受け、金融規制当局から問題を指摘される可能性を軽減するアプローチを作り上げたと考えていると述べた。
同社はまず、アジアの取引所にトークンを上場し、投資家の反応を見極める。フルーリーCEOによると、その後にトークンを証券として提供するために、特別目的事業体(SPV)をアメリカで設立することを検討する。
多くのICOとは異なり、同ファンドのトークンは実世界の資産によって裏付けらる。同社は、それらの資産は専門のポートフォリオマネージャーによって管理されると述べた。原資産は、債権、仮想通貨、株式商品からなるポートフォリオとなる。
ブラムCEOによると、最初の投資はブロックチェーン分野に特化したものになるが、同社は将来的にはグリーンテクノロジーやスマートシティマネジメントなど他の業界にも手を広げる可能性がある。
「我々の狙いは、伝統的な投資モデルと理論を仮想通貨に応用し、業界に信頼とプロフェッショナリズムを持ち込むことで、新しい資産クラスを生み出すことにある」
翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Buddy Hield image courtesy of ConsenSys
原文:Fintech Startup Aims to Create New Asset Class With ‘Continuous’ ICO Model