2019年はフィンテック界でもさまざまなニュースが生まれた。中でも「○○Pay」の浸透はめざましく、キャッシュレスが進んだ1年だった。PayPayを持つZホールディングスと、LINE Payを持つLINEが経営統合に合意したことも記憶に新しい。
2020年もキャッシュレスがフィンテックの主なトピックになるのは間違いないだろうが、ほかにはどんなテーマが注目なのだろうか。フィンテック企業のインフキュリオン・グループが「2020年フィンテックを見通すキーワード」をまとめ、今年の展望を示したので、ポイントを紹介しよう。
2020年を見通す10のキーワード
同社がWebメディア「インフキュリオン・インサイト」で示した10のキーワードがこれだ。
1 現金の不便化
2 スーパーアプリとBaaS
3 コード決済の合従連衡
4 「賢い支出」のサポート
5 マイナポイント
6 上がる手数料、下がる手数料
7 中銀デジタル通貨
8 ペイロール
9 オリンピック
10 ネオバンク法制度
記事では、10項目について詳しく解説しているが、ここからいくつか要旨を紹介しよう。まず1の「現金の不便化」とは、既存のATM網が維持できなくなることからくる問題だ。ATMの維持は金融機関にとって負担で、「年間1,000万円」かかると言われる。記事では、今後はATMが統廃合し他行ATMの利用手数料も上がると指摘している。
2の「スーパーアプリとBaaS」は、一つのアプリ内でさまざまなサービスを使えるスーパーアプリ。中国のアリペイやWeChatペイなどが有名だ。日本でも、LINEがスマホ金融事業にも力を入れるなど、スーパーアプリ化が進む流れにある。こうした中で、決済や送金、融資などの金融サービスを事業者のサービスに組み込むBaaS(Banking as a Service)が、今後重要になると記事は指摘している。
また5「マイナポイント」は2020年9月から始まる制度。マイナンバーカードと、それにひもづいたマイキーIDを保有している人が、プリペイド型サービスを利用した場合に25%相当(上限5000ポイント)のマイナポイントが付与されるサービスだ。消費増税と同時に始まった、キャッシュレス決済をすれば最大5%還元される「キャッシュレス・消費者還元事業」が2020年6月に終わった後に始まる。
前述したとおり、記事ではこれ以外の項目についても解説している。たとえば給与の振り込みが銀行口座だけではなくキャッシュレス決済サービスの口座も認める動きが加速化しそうだなどと述べている。
CBDC、DCEPは2020年とても大切なテーマ
10のテーマは重要だが、中でも編集部が注目したいのが、7「中銀デジタル通貨」(CBDC)だ。フェイスブックのリブラ構想や、中国人民銀行がデジタル人民元(DCEP)の実証実験を始めると発表してから世界的に注目が高まっている。
たとえばスウェーデン国立銀行は2020年にeクローナの実証実験をするし、カンボジア中銀は、日本のソラミツとともに2020年から正式にCBDC「バコン」を導入する。世界経済フォーラム(WEF)も1月、中央銀行がCBDCを設計、発行することを支援するフレームワークを作成したばかりだ。
世界各国でこうした動きが広がるなか、日本銀行も5ヵ国の中銀とともに、国際決済銀行とともにワーキンググループを設けた。中銀だけでなく与党の動きも出てきており、自民党もデジタル通貨について提言をまとめ、政府に対応を促すという(日経報道)。世界に遅れをとらぬよう、日本でも研究が進む年になるだろう。
文:小西雄志
編集:濱田 優
写真:Shutterstock