最近のビットコイン市場のボラリティは業界のベテランには馴染みがあるかもしれないが、現在の状況は、2017年後半にビットコインが2万ドル近くに急騰した頃とは大きく異なっている。
3年間での洗練
つまり、今はフィデリティ・インベストメンツ(Fidelity Investments)からバックト(Bakkt)まで、ビットコイン取引と保有を目的としたウォール街の洗練されたインフラがある。
別の例としては、仮想通貨仲介スタートアップのタゴミ(Tagomi)は2018年にユニオンスクエアベンチャーズ(Union Square Ventures)出身のジェニファー・キャンベル(Jennifer Campbell)氏が共同創業し、ピーター・ティール(Peter Thiel)氏のファンドから支援を受け、機関投資家向けに価格変動のないプラットフォーム間での取引を行う選択肢を提供している。
「前回の強気相場では、きれいなウェブサイトを備えたトレーディングデスクが数多く存在したが、裏側では作業は手作業で行われていた」と個人アカウントで運営されていたファンドもあったことをキャンベル氏は語った。
最近、サンフランシスコではビットコインに特化したスタートアップ企業リバー・ファイナンシャル(River Financial)のような、敢えて保守的なスタンスを取る取引所が大手金融機関UBS(Union Bank of Switzerland)出身のゼヴ・ミンツ(Zev Mintz)氏といった才能を引き付けている。
ミンツ氏は、強固な貸付市場と信用取引の組み合わせが2020年の流動性の「巨大な牽引役」となり、同時に「決済システム」のユースケースを拡大させるだろうと述べた。
実際、Coinbase(コインベース)によると、商業への導入は控えめだが継続している。一方、オーケーエックス(OKEx)の金融市場ディレクター、レニックス・ライ(Lennix Lai)氏は、現在、デリバティブはプラットフォームの日次グローバル取引高の66%近くを占め、オプション取引のみで20億ドル以上にのぼると述べた。
西部開拓時代のような選択肢も存在
だが、現在の予想される強気相場を差別化しているのは取引プラットフォームの数の多さではない。ビットメックス(BitMEX)やバイナンス(Binance)などは、オーケーエックスの取引高が小さく見えるほどの取引高を生み出し続けている。
「どうすればいい、ビットコインは買えるのか? という質問が常に来ている」とミンツ氏は以前所属したUBSの顧客について語った。
「(リバー・ファイナンシャルで)来年私が行うことはたくさんある。(ドル・コスト平均法の)ツール類を構築し、ユーザーが自分の保有資産についての見通しと分析ができるようにし、可能な限りの透明性を提供する」
最近では、さまざまな取引プラットフォームからの正確な価格情報を提供することは容易になり、加えて「人々がショートや貸付から利益をあげる良い方法」もあるとキャンベル氏は語った。
「相対取引市場は大きく変わった。(中略)実際、以前は本当に数人が裏で『買い』のボタンを押していた」と2017年を2020年と比べて語った。
「ディーラー主導の市場から、アルゴリズムや他の戦略を使い、大手ブローカーを通じて取引の方法を知る市場になった」
西部開拓時代のような選択肢と規制に準拠した選択肢が並立していることが、2020年を特徴づけている。
くじらの存在感
大量のビットコインを市場で取引することは、今までにないほど安価になっている。
取引を複数の取引所に分散させることで、機関投資家バイヤーはスプレッドが制限されたプラットフォームで取引が制限されることを防ぐ。
「以前はコストがかかりすぎた多くのトレーディング戦略が、今は可能だ」とタゴミのキャンベル氏は述べた。
「以前の戦略の多くは、単に取引所間の価格差から利益をあげることだった。だが急速に消えていった」
同氏は、40以上のヘッジファンド、ファミリーオフィス、その他の機関投資家を顧客に持つスタートアップについてのコメントは拒否した。
だが、フェイスブックやバックトなどの企業と、タゴミの間の良好な関係は、ビットコイン支持派が数年前からビットコイン価格を「月に届くまで」押し上げると主張していた機関投資家の出現が、すでに大々的ではないが、静かに始まっているかもしれないことを示している。
例えば2020年、オーケーエックスの顧客の1%は機関投資家で、プラットフォームの取引高の70%近くを動かしているとライ氏は推定した。
2017年のビットコイン市場は個人投資家が動かした。仮想通貨市場は概ね、まだ大部分は個人投資家が占めているかもしれないが、ビットコイン市場では以前よりはるかに少なくなっている。
機関投資家と個人投資家
オーケーエックスのライ氏は、ビットコインデリバティブの魅力は、ビットコインをそのまま保管することにまだ不安を感じている買い手をひきつけていると説明した。
これはインドのような新興市場で特に当てはまる。インドでは最近、最高裁が銀行は仮想通貨ビジネスを行うことができるとの判断を下し、デリバティブ需要が急増している。
「理由は、ビットコインのボラリティは通常の資産よりも特に高いため。トレーダーはその方が安全と感じ、多くの資金を預けている」とライ氏は述べた。
仮にビットコインがマスマーケット向けのプロダクトにならない場合、投資家の興味は最終的に弱まる可能性がある(ちなみに、リバー・ファイナンシャルのミンツ氏は、ライトニングネットワークによってビットコインは「日常の決済手段」になると考えている)。
それでも、今、世界中の機関投資家は毎日、数百万ドル相当のビットコインを取引しているようだ。これはもはや珍しいことではなく、現状だ。
「この2つの要素が本当に重要」とミンツ氏は、投機的な動きを超えて需要を喚起するために、機関投資家の興味と個人投資家の利用をいかにして一致させるべきかについて語った。
機関投資家は今、ビットコインそのものを取引するか、オプションで取引するかを選択できる。いずれも大規模な取引が可能だ。
「我々のプラットフォームでショートポジションを取るとき、あなたは実際に誰かからビットコインを借りている」とタゴミのキャンベル氏は付け加えた。
「現物のビットコインが交換されている。(中略)すべて現物の資産が裏付けており、(2017年の)先物取引とは大きく異なっている」
翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:How the Bitcoin Market Changed Since 2017’s Bull Run