「デジタルドル」米下院で削除後、上院で再登場──”FedAccounts”ウォレットの提案も

2020年3月24日(現地時間)に米上院の銀行・住宅・都市委員会へ提出された法案は、「デジタルドル」を定義し、その運営・維持方法につき詳細に述べている。この上院における法案では、下院でコロナウイルス流行の最中にある経済を刺激する目的の2法案と同じ文言が採用されている。

委員会の有力メンバーである民主党のシェロッド・ブラウン(Sherrod Brown)上院議員(オハイオ州)が提出した同法案は、仮想通貨ドルではなく、既存のドルのデジタル化されたバージョンを提案しており、これは米商品先物取引委員会(CFTC)のJ・クリストファー・ジャンカルロ(J.Christopher Giancarlo)元委員長などの推進派がアメリカの金融覇権を維持するために呼びかけた文脈上に位置づけられる。

同法案によれば、デジタルドルは「連邦準備銀行の口座に負債として記録されたデジタル台帳への記入からなるドルの残高」となる。

そして、そのためのウォレットは「FedAccounts」と名付けるべきとまで記されている。

米下院の2つの法案と同様に、提案されたデジタルドルはアメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)によって、運営・維持される。FRBが個人に代わって、資金をサポートするためのデジタルウォレットの管理の責任を負うことになる。

ここでは、連邦準備制度の加盟銀行が、プールされた準備金残高における個人の分け前を保有する「パススルー・デジタルドルウォレット」を作ることができるとされる。

「パススルー・デジタルウォレットに関するすべての資産の保有とすべての負債の維持という唯一の目的のために、各加盟銀行は別の法的実体を設立、維持するものとする」と法案には記されている。

そのようなウォレットの提供のために、各州が加盟銀行ではない銀行を指名することもできるとする。

下院の法案では、進行中のコロナウイルスの流行の最中に米国民に救済資金を分配する方法の可能性としてデジタルドルに言及していた。自粛や「屋内避難」勧告が小売業界の収益を大幅に落ち込ませる中、失業者数は急増している。

しかし、上院の法案はそのような救済対策とは異なる文脈にあるようだ。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:US Senate Floats ‘Digital Dollar’ Bill After House Scrubs Term From Coronavirus Relief Plan