「コロナ禍の今読みたい」投資の神様 ウォーレン・バフェットを知るための5冊【書籍】

「ビットコインは無価値」と言い放つなど仮想通貨・暗号資産には批判的なウォーレン・バフェット氏。あるジャンルで独占的な地位を築いている企業の株に長期投資する姿勢で、自身が会長を務めるバークシャー・ハサウェイを世界最大級の持ち株会社に育て上げた“投資の神様”だ。

そのバフェット氏は2月下旬に米デルタ株を買い増しするなど、投資姿勢はコロナウイルス感染拡大の影響で株価が大きく下落する中でも変わっていないと思われた。だがバークシャーは4月3日、デルタ航空の株を一部売却したと発表。長期投資を原則とするバフェット氏、バークシャーとしては異例の売りと言える。

投資の神様さえ惑わせるコロナ禍の中、多くの投資家はいつにも増して先行きへの不安を覚えているのではないだろうか。そこで、改めてバフェット氏の姿勢や哲学に触れられる書籍をひもといてみてはいかがだろうか。国内で入手できる書籍を5冊紹介する。

唯一の本人公認伝記『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』

『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』(日本経済新聞出版、アリス・シュローダー著)はバフェット氏の半生を描いた著作で、バフェット氏が唯一公認している伝記として知られている。2008年に発刊され、全米でベストセラーとなった。日本語版はその翌年の2009年に出版されている。

バフェット氏への300時間以上のインタビューやバフェット氏の家族や知人などへの取材を通じて得た内容で構成されており、バフェット氏自身の協力なしには出版されなかった一冊だ。著者の取材期間は実に5年に及んだという。

バフェット氏がどのような人生を送ってきたのか、そしてお金に対する価値観や投資戦略は一体どのようなものなのか……。知られざるバフェット氏の人生や考え方に迫った名著と言える。

株主にあてたレターから哲学に触れられる『バフェットからの手紙』

バフェットからの手紙』(パンローリング、ローレンス・A・カニンガム著)は、会長を務めるバークシャー・ハサウェイ社の年次報告書に掲載されている、株主へのレターからまとめられた一冊だ。そのレターはまさに「バフェットからの手紙」として、同社の株主以外からも注目される存在だ。レターは毎年2月下旬に年次報告書とともに発表され、2020年も例年通り公表されている。

現在は第4版で、過去36年分のレターの中で語られているバフェット氏の企業哲学や投資哲学を体系的に知ることができる。

ちなみに毎年発表されているレターは、英文ならバークシャー・ハサウェイ社の公式サイトで読める。

親族が明かす銘柄選びとは──『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』

本著『億万長者をめざすバフェットの銘柄選択術』(日本経済新聞出版社、メアリー・バフェット、デビッド・クラーク共著) の著者の一人であるメアリー・バフェット氏は、バフェット氏の息子の元夫人だ。バフェット一族の投資術を親族の一人として身近にみてきた経験から、バフェット氏がどのように投資銘柄を選択していたのかを本著の中で解説している。

2002年に発刊された後すでに随分と時間が経っているが、いまも売れ続けているロングセラー本だ。バフェット氏流の優良銘柄の選び方や、安値で株式を購入することの重要性、バフェット氏が高ROE(自己資本利益率)企業を好む理由などが説明されている。

投資はスタートした初期段階こそ重要と説く『史上最強の投資家バフェットの教訓―逆風の時でもお金を増やす125の知恵』 

『史上最強の投資家バフェットの教訓―逆風の時でもお金を増やす125の知恵』(徳間書店、メアリー・バフェット、デビッド・クラーク共著)もメアリー・バフェット氏の著作だ。実際に資産を膨らませていくための手法を、具体例を挙げながら紹介しており、その手法がなぜ有効であるのかをバフェット氏の投資哲学などを根拠に解説している。

例えば本著の冒頭では「ルール」として「その一、絶対に金を損しないこと」「その二、絶対にルールその一を忘れないこと」と掲げられており、投資をスタートした初期段階で損をすればするほど将来的な利益獲得能力に悪影響を及ぼすことなどを指摘している。

「時代遅れになる原則は原則ではない」──『ウォーレン・バフェット 成功の名語録 世界が尊敬する実業家、103の言葉』

『ウォーレン・バフェット 成功の名語録 世界が尊敬する実業家、103の言葉』(PHP、桑原晃弥著)はバフェット氏がこれまでに放った名言をまとめた一冊だ。PHP研究所から2012年に発刊され、いまなお投資家たちの中にはバイブルとして崇めている人も少なくない。

全部で103の名言が紹介されており、例えば「時代遅れになるような原則は、原則じゃありません(第2章:成功への道筋を語る)」、「手当たりしだい、読むことです」(第4章:情報の読み方を語る)などの言葉が紹介されている。

外出自粛の今、投資の神様から学ぼう

冒頭でも触れたが、投資の神様でさえ判断を迷っているのではないかと思えるほどの事態がまさに今、起こっている。しかしこれまでにも市場は何度も有事を乗り越えてきている。ブラックマンデー、資産バブル、ITバブル、9.11、リーマンショック……挙げればきりがないほどだ。こうした事態を乗り越えて今の地位を確立したバフェット氏には、今後も注目が集まるだろう。今回紹介した書籍の中に未読のものがあるという投資家は、外出を自粛している今こそ手にとってみてはいかがだろうか。

文:CoinDesk Japan編集部、濱田 優
編集:濱田 優
画像:日本経済新聞出版社、徳間書店、PHP各社Webサイトなどより